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レンズ・鏡筒 キヤノンコンパクト初の挑戦で、新たな次元へ。

レンズ イメージコミュニケーション事業本部 ICP 第一開発センター 主幹研究員 難波 則廣

レンズ イメージコミュニケーション事業本部 ICP 第一開発センター 茂木 修一

鏡筒 イメージコミュニケーション事業本部 ICP 第三開発センター 主任研究員 工藤 智幸

画像:レンズ・鏡筒 キヤノンコンパクト初の挑戦で、新たな次元へ。

広角化、ズーム倍率、F値……。光学スペックが全方位にわたって向上しているが、コンパクトなボディーサイズを保ちながら、これを実現できた理由は何か?

茂木: PowerShot G1 X Mark IIでは、キヤノンのコンパクトカメラ史上最多となる6群構成を採用しています。PowerShot G1 Xのときは4群構成でしたから、そのぶんレンズ配置の自由度は増え、設計のバリエーションは大幅に広がりました。14枚におよぶレンズ1枚1枚の形状やガラス材料、配置、コーティングに至るまで最適なものを導きだしたことで、全方位でのスペックアップを実現しました。

難波: 一方で、群は1つ増えるだけで、レンズの位置制御に求められる精度や製造上の難易度が格段に上がります。6群構成をこれまで採用していなかったという事情には、こうした背景がありました。しかし、6群である方が設計の自由度が高く、限られたスペースの中でも変倍比が上げられるというメリットがあります。そこで、まずコンピューター上でのシミュレーションにこれまで以上の時間をかけて検証し、6群構成での設計の現実性を追求していきました。前例のない構成の採用は大きなチャレンジでしたが、フラッグシップとしての性能を実現するために、その後も試作と検証を何度も重ねて、ようやく現在の構成にたどり着くことができました。

各レンズに最適な多層膜コーディングを施してゴーストや収差を抑制

難易度が高く、初めての挑戦となった6群構成を実現できた理由は何か?

難波: まず、高い精度でのレンズ制御が求められる敏感度の高い構成でしたので、鏡筒設計部門とは十分な議論を重ねました。また、それだけでなく、量産を実現するために、工場との連携も密にして開発を進めていきました。こうした連携が、難しい目標を達成できた大きな理由であると思います。

茂木: GシリーズやSシリーズといったプレミアムモデルのコンパクトカメラは長崎キヤノン株式会社で生産していますので、何度も足を運んでコミュニケーションを重ねられることは大きな利点です。同じ目標に向かって熱意ある協議を繰り返し、PowerShot G1 X Mark IIのレンズ量産体制を築き上げていきました。

工藤: 鏡筒の面から見ると、敏感度の高い構成を確実に制御できるようにメカの部分でしっかり抑えこんでいます。従来のやり方では求められる精度が実現できなかったため、今回の調整はかなりシビアな作業でした。アルゴリズムの開発部門とも連動しながら、独自の方法を採り入れてレンズの制御を実現しています。また、工場での製造にあたっても新しい方法が必要でした。高い精度を出すために、PowerShot G1 X Mark IIの鏡筒生産は通常よりもはるかに多い工程が必要となっていますが、新規に導入した装置などによって、ミクロンオーダーでの精度を保った量産を実現しています。

PowerShot G1 XMarkIIでは大口径レンズが搭載されているが、EF レンズのノウハウは生かされているのか?

難波: キヤノンでは、多くの光学部門が宇都宮に集結しています。一眼レフ部門だけではなく、半導体の露光装置、放送用機器などのさまざまな光学設計者が集まっているので、シナジー効果が生まれやすい環境にあります。定期的に情報交換をする場がありますし、自分とは違う部門ではどんな設計をしているのか、お互い常に情報交換して取り込めるところは取り込んでいます。特にEFレンズ部門とは「カメラ」という同じ分野で仕事をしていますので、情報を密にやり取りしているのは強みですね。

茂木: 実際に、EFレンズやEOS M用の交換レンズの技術は、今回の開発において大きなヒントになっています。また、私は以前にコンシューマー向けのビデオカメラの光学設計を担当していたことがあります。家庭用ビデオカメラというのは、F1.8などの明るい大口径レンズを扱うことがほとんどです。そこでの経験や知識は、今回の大口径レンズの設計に役立ちました。

PowerShot G1 Xには搭載されなかった、レンズバリアも搭載している。

工藤: PowerShot G1 Xのユーザーの方々からの強い要望のあったポイントでもあるので、レンズバリアについては、開発の初期段階から可能性を探っていました。しかし、大口径の前玉レンズをカバーするバリアをすべて収納しようとすると、必然的に鏡筒外径が大きくなってしまうという問題があります。ここで生かされたのが、PowerShot G15で開発された技術です。バリアの開口を小さくする構成をとることで、羽根の収納スペース削減が可能になり、外径の小型化も達成することができます。PowerShot G1 X Mark IIではこれに加え、より開口が小さくできるようにバリアの羽根を増やした独自の8枚羽根バリアを開発し、コンパクトなサイズ感を保ちながらレンズバリアを搭載することに成功しました。

PowerShot G1 X同様、NDフィルターは搭載されているか?

工藤: はい、PowerShot G1 XやGシリーズ同様、NDフィルターが「内蔵」されているのもこのカメラ大きなポイントです。光量が多い晴天時に開放F値を活かしたマクロ撮影を行いたいときや川の流れなどをスローシャッターでやわらかく表現したいときなどに活躍します。いちいちフィルターを取り付ける手間なく気軽に撮影ができるので、ぜひ多くの方に活用していただきたいですね。

マクロでの最短撮影距離も大幅に向上している。

茂木: 最短撮影距離についてもユーザーの方々から多くの要望があった点ですので、どこまでのスペックを目指していけるかという点は徹底的に話し合いました。最短撮影距離を短くするためには、フォーカス群の移動量を減らす必要があります。そこでたどりついたのが、従来のリアフォーカス方式からインナーフォーカス方式への切り替えでした。

難波: センサーが大きくなるにしたがって、そのサイズに見合った光を採り入れるために、最も後ろに配置されるレンズも大きくなります。したがって、一番後方のレンズ群をフォーカス群として移動させるリアフォーカス方式は、センサーが小さい場合には有効ですが、センサーが大きい場合に効果的であるとは限りません。レンズが大きく、重くなるほど、フォーカス群の駆動や制御が難しくなるからです。そうした意味で、大型センサーを搭載するPowerShot G1 X Mark IIでは、より小さいレンズ群を移動させることができるインナーフォーカス方式の採用が非常に有効でした。

工藤: 各焦点距離での性能のバラつきを抑えるために、鏡筒部ではしっかりとレンズ群の動きを制御して、遠景から至近までキレイに撮影することができるように調整しています。また、インナーフォーカスの実現によってフォーカス群の移動量を抑えることができたため、AFについても大幅なスピードアップを果たすことができました

EVFについても、ファインダーからの見え方を追求したと?

茂木: 外付けのEVFはキヤノンのコンパクト用としては初めての試みです。初期設計段階から試行錯誤を重ね、キヤノンが持つすべての技術を注ぎ込んで開発しました。つくるからには、世界ナンバーワンを狙うという意気込みで設計したEVFです。

難波: 特に、EOSの光学ファインダーの技術は大いに参考にしながら設計しました。視野角と見えの良さには非常にこだわって開発しています。レンズ枚数や構成、視度調整するための機構など、何度も調整を重ねました。

一眼レフのような美しいボケ味は、期待できるか?

茂木: 大型センサーならではの美しいボケ味は、開発にあたって一番こだわった部分でもあります。これについては、開発の前段階からさまざまな実験を重ねて、大口径化について議論を重ねてきました。その結果、PowerShot G1 X Mark IIでは1.5型という大型センサー*を可能な限り生かせるF2.0 (W) – 3.9 (T)というF値を実現しています。

工藤: 美しいボケ味を実現するために、9枚羽根絞りを搭載しています。これにより、玉ボケも円形に近い美しい表現が可能になりました。また、9枚にしたことで、羽根一枚一枚が小さくなるため、鏡筒外径のサイズを抑えることにも成功しました。

絞り:F2.8/F5.6/F11

PowerShot G1 X MarkIIは、ユーザーにとってどんなメリットのあるカメラでしょうか?

茂木: PowerShot G1 X Mark IIは、1.5型という大型センサー*に関わらず、焦点距離やF値、最短撮影距離に至るまで、非常に欲張ったスペックを実現したカメラです。撮影領域も広いので、たとえば絞りを開放したときには背景を大きくぼかしたポートレート撮影が可能ですし、絞り込んだときには風景写真のように手前から奥までピントを合わせたいような場面でも非常にクリアな写真を撮ることができます。至近から遠景まで素晴らしい写真が撮れるので、ぜひさまざまなバリエーションで撮って、自分なりのワンショットを見つけて楽しんでいただきたいです。

工藤: PowerShot G1 Xでは、マクロ撮影距離に関して市場からの要望もあったので、今回のPowerShot G1 X Mark IIで最短撮影距離5cmを実現できたということは大きいと思っています。食べ物や花のマクロ撮影など、撮影できるシーンが大きく広がったので、ぜひさまざまなシーンで撮影を楽しんでほしいですね。

難波: PowerShot G1 X Mark IIは単にスペックを追い求めるのではなく、高い表現力のカメラを日常的に楽しんでいただくことを目指して開発しました。そうした意味で、大きさと性能の最善のバランスを実現できたと思っています。幅広いシーンで、さまざまな作風の写真を撮影できるカメラですので、たとえばフォトコンテストに応募されるような写真を撮っていただけるとうれしいですね。

* 有効画素数:約1280万画素(3:2)、総画素数:約1500万画素

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