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センサー・エンジン 光学性能を引き出すインテリジェンスの連携

センサー イメージコミュニケーション事業本部 ICP 第三開発センター 根岸 典央

エンジン イメージコミュニケーション事業本部 ICP 第三開発センター 室長 高橋 賢司

画像:センサー・エンジン 光学性能を引き出すインテリジェンスの連携

PowerShot G1 X MarkIIに搭載されたセンサーと映像エンジンの特長は?

高橋: 前機種PowerShot G1 Xの映像エンジンはDIGIC 5でしたが、PowerShot G1 X Mark IIでは新たにDIGIC 6を搭載しました。これにより、画質面では解像感やノイズリダクション性能の向上を実現しています。静止画撮影におけるノイズリダクション性能は処理を見直すことにより、DIGIC 5に比べて約2.4倍の高速化を実現しています。また動画撮影におけるノイズリダクション性能においては、DIGIC 5に比べて約9倍の情報量を処理することでテクスチャーとノイズを的確に切り分け、ISO1600でDIGIC 5のISO400に相当するノイズ量まで低減することが可能になりました。また、フルハイビジョンでの30p対応やMP4記録が可能になっています。

根岸: センサーの基本的な土台は前機種PowerShot G1 Xの1.5型大型センサー*を踏襲しています。しかし、より明るくなったレンズや新エンジンに対応するために新規にチューニングを行ったり、AFをより高速化するためにAF用のセンサー駆動モードをスピードアップさせたりするなど、PowerShot G1 X Mark IIに合わせた改良を施しています。また、一番の特長は、一眼レフユーザーのニーズに応えて3:2画角でも4:3画角でも同じ焦点距離で記録できるマルチアスペクトを採用できたことですね。

* 有効画素数:約1280万画素(3:2)、総画素数:約1500万画素

新レンズと1.5型センサー*、DIGIC6はどのように連携しているのか?

高橋: レンズにより集められた光の情報がセンサーに写し込まれ、センサーによりデジタル情報に変換された後に映像エンジンで画像処理されるというのがデジタルカメラの大まかな仕組みです。そのため、どれだけ映像エンジンの画像処理が優れたものであっても、光学系とセンサーを経た「素材」が良いものでなければ、美しい画質を生み出すことはできません。レンズ、センサー、映像エンジンが三位一体となった画づくりが非常に重要です。そういう意味で、今回のレンズはかなり高スペックなものであり、センサーも一眼レフとほぼ同様のセルピッチを実現したものですから、非常に質の良い情報が映像エンジン「DIGIC」まで届きます。DIGIC 6では、レンズとセンサーの高い性能を存分に引き出すような設定に調整していきました。

根岸: 開発時における連携という面から見ると、センサーもDIGICも自社で内製していることによる利点は大きいですね。密な情報共有やコミュニケーションが図れるということはもちろんですが、技術的な情報も含めてシェアできるのは社内ならではですし、レンズに合わせたベストなセンサーを設計して提供することができます。今回のセンサーでも、レンズとDIGIC 6に最適化したチューニングを行いました。

高橋: ノイズリダクションについても同じことが言えます。ノイズリダクションは、ノイズと被写体のテクスチャーを正確に見分けること、そしてノイズをどのように取り除くかがポイントになります。テクスチャーがなくなってしまうようなノイズリダクションは画質の低下になるため、可能な限り被写体のテクスチャーを残しながらノイズを除去することを思想としています。そこで重要となるのはやはり、レンズ、センサー、映像エンジンが一体となった働きです。レンズが被写体のテクスチャーをテクスチャーとしてきちんと写し込むこと、センサー近辺で発生するノイズは、センサー側で可能な限り取り除くことによって、より効果的にDIGICのノイズリダクション処理でノイズを除去することができます。テクスチャーかノイズか信号的に区別がつかないレベルでDIGICに情報が入ってきても、映像エンジンだけで対応することはできないからです。PowerShot G1 X Mark IIのレンズ、センサーはともに高性能であり、DIGICに入力される情報は非常に高いクオリティーをもっています。そのため、ノイズだけを消すための設定を妥協なく追求することができました。

根岸: PowerShot G1 X Mark IIでは、ノイズリダクションについて非常に細かい設定をしています。ノイズリダクションにあたっては、撮影条件に応じて細かく設定を変えてチューニングを施すのですが、今回のカメラでは、この条件数が他機種とは比べものにならないほど多く設定されています。この性能は、複雑な設定なしで三脚さえあれば簡単に美しい星空を撮影できる「星空モード」にも生かされていて、非常にクリアな写真を撮れるようになっています。

* 有効画素数:約1280万画素(3:2)、総画素数:約1500万画素

一眼レフやミラーレスと比べて開発に違いはあるのか?

根岸: PowerShot G1 X Mark IIはレンズ一体型のコンパクトデジタルカメラですから、レンズの情報が確定しているわけです。そのため、搭載されたレンズにあわせた最適な補正を施すことができます。ズームによってレンズの位置が変動すると、センサーもそれに合わせてシェーティングなどが変わったりしますが、レンズが一体化されているため、最適化しやすい。これは、レンズ交換型のカメラにはできないメリットですね。一眼レフのサイズで、F2.0(W)からF3.9(T)というレンズを想像してもらえれば分かると思うのですが、こんなサイズには到底おさまらないはずです。

高橋: DIGICについても同様です。レンズ一体型カメラはレンズの特性や、撮影時のレンズの状況を把握しやすく、それぞれの特性や状況に対して最適な処理をすることができます。レンズ一体型カメラだからこそ、細かい画質最適化設定が可能といえるわけです。

デュアルペースマルチアスペクト

RAWが3:2でも記録できるようになったが、これは一眼レフユーザーを意識した変更なのか?

根岸: はい。一眼レフを普段使用している方々のニーズを考えて開発しました。従来のマルチアスペクトでは、4:3で撮影した画像をトリミングして3:2の画像をつくっていましたが、今回は4:3と3:2のどちらのアスペクトでも35mmフィルム換算で焦点距離24mmという広角レンズを活かした撮影が可能となるよう1.5型センサー*を有効に活用しています。

高橋: これは技術的にも負荷的にもかなり困難な仕様でした。4:3と3:2で、カメラ二台分の設計をしているようなものだからです。通常の製品と比較して、設計負荷が非常に大きくなるため当初は開発者間にも戸惑いはありましたが、ユーザーの方々に対して大きなメリットがあると考えて、開発に踏み切りました。

* 有効画素数:約1280万画素(3:2)、総画素数:約1500万画素

画像:比較

処理速度が上がったことによって、AFスピードや連写性能も向上しているか?

根岸: AF用のデータを取り込むセンサーのフレームレートを上げて、読み込み速度を上げています。AFスピードはPowerShot G1 X時代の課題でしたので、高速化することは一つの大きな目標としていました。光学系で果たした改善とあわせた結果、PowerShot G1 X比でおよそ2倍近い高速化を果たしています。

高橋: 連写性能も向上しています。前機種のPowerShot G1 Xでは、ハイスピード連写HQで約4.5コマ/秒でしたが、今回は連写に関わるシークエンスを見直した結果、約5.2コマというスピードでメディアがフル容量になるまで撮り続けられるスペックになっています。処理速度の向上と連写シークエンスの見直しによって、PowerShot G1 X Mark IIではシャッターチャンスにより強くなりました。

フォーカス工程の合理化と効率化によって、撮影タイムラグを大幅に短縮

DIGIC6は動画に強い映像エンジンだが、PowerShot G1 X MarkIIの動画性能も向上しているか?

高橋: まず、先にも述べましたが、動画でもノイズリダクション性能は飛躍的にアップしていて、低照度のシーンでの撮影領域が拡大しています。DIGIC 5の約9倍の情報量をもとにして処理を行いテクスチャーとノイズを切り分ける精度、ノイズリダクション性能の両方の性能向上を図っています。また、F値もさらに明るくなったので、PowerShot G1 X時代に実現したボケ味を生かした表現や、より暗い領域での撮影が可能になるなど、表現の幅や撮影可能な領域が大きく広がっています。

クリエイティブショットや手持ちでのHDRなど、新たな表現機能も付加された。

高橋: PowerShot Nで初めて搭載されたクリエイティブショットは、1回のシャッターで3枚の写真を撮影して、撮影シーンを判別したうえでフレーミング、トリミング、カラーフィルターなどの適切な効果を自動で付加し、6枚の画像をつくりあげます。 HDRも複数の写真を撮影して、ダイナミックレンジの広い1枚の画像を合成して作成するため、非常に重い画像処理が必要とされる機能です。DIGIC 5でも同等の処理はできましたが、DIGIC 6による撮影時間の短縮、処理時間の高速化によって、よりユーザーフレンドリーな仕様になっています。EOS 5D Mark IIIと同等の5種類の効果を付けることができるようになったことも、一眼レフユーザーの方々にはうれしい価値を提供できたのではないでしょうか。 特に、クリエイティブショットは新たな気付きを得られるということで、PowerShot Nでハイアマチュアの方々にも好評をいただいた機能です。自分が今まで撮影していた写真とは違う世界に出会うきっかけとして、ぜひ楽しんでほしいですね。

ユーザーの方にメッセージを。

根岸: キヤノンでは「他社がこのスペックだから、ここまでを目指そう」というような相対的な基準にもとづいた開発は行いません。キヤノンが追い求める絶対的な基準に向かって、実現できるまで徹底的にやるのが特徴です。PowerShot G1 X Mark IIは、キヤノンが送り出すコンパクトデジタルカメラのフラッグシップモデルとして、センサーもエンジンも、もう改善できる余地がないというほど、限界まで突き詰めて開発しました。その結果、現在の技術のなかで弱点がほぼないと言っていいほどの、実にキヤノンらしいバランスの良いカメラになっていると思います。ぜひ、楽しんで使ってほしいです。

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