山岳写真家 杉村 航×天狗岳/長野 悪天候に耐える山道具とともに

山岳写真家 杉村航

山岳写真家 杉村航

1974年兵庫県生まれ、長野県在住。夏はバリエーションルートや沢登り、冬はスキーでの山岳滑走。シーンの撮影を得意とする。景色だけではなく、人物と絡めての動感あふれる瞬間を追いかける。山岳雑誌やアウトドアブランドのカタログなどに作品を発表している。

「わずかなチャンスに期待して」

カメラ操作に慣れるために山行前に南八ヶ岳でテスト撮影。足を踏み入れられない場所ではレンジの広いズームレンズは非常に重宝する。色転びしやすい「クリンソウ」の赤紫色を忠実に再現してくれた。


天狗岳の登山当日。梅雨のまっただ中、この日の予報では昼前後に数時間晴れるようだ。天気の一瞬の変わり目、ドラマチックな光景に期待して歩き出した。モデルのいない山行取材では、自分撮りをすることが多い。登山者の姿を写真に入れ込むことによって、山のスケール感や臨場感も増す。今時はスマホをWifi接続して撮ることも可能なのだが、僕は山行中は基本的に携帯の電源をオフにしているので、古典的なセルフタイマーやリモコンを使用しての撮影となる。

美しの森にある「クリンソウ」の群落。立体感を損なわないよう気をつけながら、いちばん華やかな部分を切り取った。
【1/50sec F5.0 ISO800 露出補正-0.3 焦点距離約100mm】

この日は八ヶ岳の天狗岳。唐沢鉱泉から西尾根を登り、西天狗、東天狗へと抜けて天狗の奥庭を経由してループ型に唐沢鉱泉へと戻るルートとした。
【1/640sec F5.6 ISO400 露出補正0 焦点距離約60mm】

G3 Xでは、チルト液晶モニターで画面を確認しながら、フレームのどこに自分を配置するかバランスを考えられた。AFのフォーカスポイントをタッチパネルで簡単に移動できるのがすこぶる快適だった。露出やその他のモードもストレスなく設定できるのは病みつきになりそうだ。

2秒後、10秒後の通常のセルフタイマーに加えて、秒数と枚数をカスタム設定できるインターバルタイマーが搭載されているのが嬉しかった。ゆとりをもって移動できるし、写真のバリエーションも増える。
さらに便利だったのが、チルト液晶モニターを180°上に跳ね上げ、モニタリングしながら自分を撮ることができたこと。しかも上下も変換してくれるので至れり尽せりだ。手頃な岩の上にカメラを置いて撮影した。

樹林帯を行く。八ヶ岳らしい「シラビソ」の森、足元は苔の絨毯が美しい。
【1/200sec F6.3 ISO800 露出補正0 焦点距離約55mm】

天狗の奥庭方面を望む。西から怪しい雲が迫ってきている。
【1/320sec F8.0 ISO200 露出補正0 焦点距離24mm】

「シラビソの樹林帯。足元をクローズアップしながら」

マクロ撮影も得意なG3 X。高倍率ズームとは思えない素直なボケ味も魅力。可動式の電子ビューファインダー(EVF)が、ローアングルでは大活躍してくれた。

森の中は肉眼で感じる以上に暗いものだが、高感度に強く、手ブレ補正がしっかり効いているので手持ち撮影で登山のペースを乱すことなく撮れる。
広角側での近接性能は特に素晴らしい。うっかりしているとレンズの先端が被写体にぶつかってしまいそうなほど被写体に寄れてしまう。

可憐なピンクの彩り。「コイワカガミ」を、周辺環境を見せながら接写。
【1/125sec F6.3 ISO400 露出補正0 焦点距離24mm】

優しい朝日は景色のすべてを輝かせる。先を急ぎたいが、ついつい撮影に夢中になってしまう。
【1/640sec F5.6 ISO400 露出補正0 焦点距離約240mm】

小さなキノコが2つ。仲良く並んだ姿を見て、ふとファンタジーの世界へ引き込まれる。
【1/80sec F5.6 ISO800 露出補正0 焦点距離約127mm】

「山の表情を捉える」

スタートしてしばらくは樹林帯の中を登って行く。小鳥のさえずり、樹々を揺らす風の音が心地いい。稜線での絶景を期待しながらも、はやる心を抑えて登山道沿いのシーンを撮っていく。
山での撮影は実は非常にあわただしいことが多い。山岳エリアの空模様は変化の連続。めまぐるしく移ろう一瞬の表情を切り取る。カメラの操作の慣れと反応の良さが決め手となる。

森に差し込む光が演出を加えてくれる。陰影のバランスを見ながらシャッターを切った。
【1/320sec F6.3 ISO800 露出補正0 焦点距離24mm】

東天狗岳を後にし、天狗の奥庭方面へと急ぐ。一瞬ではあったがこの日一番の光が山肌に差し込んだ。
【1/1000sec F9.0 ISO320 露出補正0 焦点距離約260mm】

「雨の中、ガスが抜けた瞬間を狙う」

雨の中、岩場を登り、西天狗岳の山頂へ到着。しばらく待機することにした。待つこと一時間、ガスが晴れた瞬間に東天狗岳方面にカメラを向けた。24mmは肉眼で感じた広がりを程よく再現してくれる。
同じ位置から600mmで東天狗岳の山頂の様子を捉えた。雨の中、一瞬しかないチャンスにレンズ交換するのは至難の業。G3 Xの高倍率ズームは悪天候でも強い味方となる。

山頂に着く頃には雨脚が強まり、すっかりガスに覆われていた。ツェルトを出し、チャンスを窺う。
【1/640sec F9.0 ISO400 露出補正0 焦点距離24mm】

肉眼ではかろうじて判別できる山頂の登山者の様子もレンズを通してくっきり見せてくれる。
【1/640sec F9.0 ISO400 露出補正0 焦点距離600mm】

「カモシカとの遭遇」

立派な体躯の「カモシカ」は、焦る僕を気にすることなく悠然とダケカンバの若葉を食み、ゆっくりとハイマツの茂みへと姿を消した。
【1/400sec F8.0 ISO1600 露出補正0 焦点距離約320mm】

再び雨が降り出しそうな空。とにかく一刻も早く下って樹林帯に逃げ込めるよう、ペースをあげて歩いていた。むくっと伸び上がった黒い影。この山の主のような大きな「カモシカ」だった。とっさにG3 Xの電源を入れ、望遠側にズームする。かなり暗く、非常にコントラストの低い状況だったがオートフォーカスがピッタリと合焦してくれた。素早く感度を上げてシャッターを切った。

今回のような悪天候に見舞われることの多い山岳エリアでの撮影は、人にもカメラにも過酷な環境が通常だ。何と言っても、多少のことでは壊れない信頼関係が大事。幾度もカメラを濡らし、雷雨に慌てて濡れた状態で湿気たっぷりのザックへ収納していたが、下山後もG3 Xは問題なく動作してくれた。

下山間際、唐沢鉱泉の源泉を撮る。この後はもちろん鉱泉の湯へ。
【1/100sec F5.6 ISO200 露出補正0 焦点距離24mm】

「北アルプスの美しい被写体、立山へ」

数日後、手軽なアプローチでアルぺンムード満点の山岳写真を撮れる立山へ行った。

雨の中に入山して2日目、太陽が立山の稜線を抜けるころにようやくガスが抜けてきた。振り返ると奥大日岳方面が見えている。歩きながらカメラを準備して素早く撮影した。かなり距離はあったのだが、稜線にたなびくガスのディテールを損なわずに表現することができた。
途中、高山植物に出会った。かなり低いアングルで構えているのだが、チルト液晶モニターをチルトアップすることで、楽に撮れるのはありがたい。ブレに気をつけて、速いシャッタースピードで風に揺れる花を捉えた。

結局、この後すぐに辺りは再びガスに覆われていった。わずかな時間しか撮影のチャンスはなかったが、G3 Xを用いることでかなり効率のいい撮影山行ができた。一瞬のシャッターチャンスを逃さない速写性と、信頼の防滴性能。これらの性能を有するG3 Xは、登山で活躍する山道具だと実感した。

雪渓が溶けた後には早くも「ハクサンイチゲ」が元気に花を咲かせていた。
【1/800sec F6.3 ISO125 露出補正0 焦点距離約180mm】

室堂平から見る奥大日岳はフォトジェニック。来るたびにさまざまな表情を見せてくれる。
【1/400sec F11 ISO125 露出補正0 焦点距離約190mm】

※焦点距離は35mmフィルム換算の数値です。

No.03 No.05