森の生活者/アーティストインキュベーター 四角 大輔×マウント・マンガヌイ/ニュージーランド 新しい相棒とマウント・マンガヌイ

森の生活者/アーティストインキュベーター 四角 大輔

森の生活者/アーティストインキュベーター 四角 大輔

ヒット音楽プロデューサーの職を捨て、オルタナティブな生き方を求めてニュージーランドの湖で自給自足生活を送る。アウトドア、NPO、ITの分野でも活動。『ソトコト』(木楽舎)、『PEAKS』(エイ出版社)など連載多数。著書に『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)他。公式HP:4dsk.co

「創造性を引き上げるカメラに触れる」

最初にG3 Xを手にしたとき、見るからに“多機能”が凝縮されているコンパクトなボディにぼくは興奮した。レンズには24-600mmという破格の望遠機能が搭載されていることを知る。このレンジのレンズ搭載カメラとしては驚くほど軽い。
ぼくは、人間のクリエイティビティを引き上げるイノベーティブなプロダクトに出会うと無性に興奮してしまう。ニュージーランドに持ち帰り、ぼくが暮らす湖畔の森や、現地では日常的に行う登山やハイキングに連れ出したいという衝動に駆られた。
成田から直行便ニュージーランド航空で10時間半、オークランド国際空港に到着。国内線に乗り換えて小さな空港に降り立つ。そこから車で、さらに20kmほど山奥に入ったところにある、原生林に囲まれたある湖を目指す。

東京からニュージーランドの自宅へ帰るいつもの行程。年に何度もこの2つの国を往復する移動生活者であるぼくにとって、この移動自体がライフスタイルそのものになってはいるが、忘れがたい場面や息を呑むような景色に遭遇できる貴重な“旅”には変わりない。
そんな場面を切り取るのに、普段は気軽に写真を撮れるスマートフォンを使うのだが、今回は無意識のうちに夢中でG3 Xでシャッターを切っていた。G3 Xには、驚くほど細かい機能があるにも関わらず、軽くてかさばらない。
“多機能×軽量”を誇るG3 Xが手元にあることで、ぼくの創造性は引き上げられたようだ。

「日常の目線の変化」

コバルトブルーに輝く湖の畔の、森の中に我が家はある。
そこでぼくは半自給自足の“湖畔の森の生活”を営んでいる。庭の無農薬の野菜畑と小さな果樹園からの収穫、周りの森からの季節ごとのハーブやキノコ、自宅前の湖で釣り上げるサーモンのようなニジマス、そしてすぐ近くの海から釣ってくる多種多様な野生魚たち。これら大自然からの“いただきもの=命”によって、ぼくの身体はできている。
ちなみに、電線と電話線は細々と届いているが水道が通っていないため、電気式ポンプを使って家まで汲み上げた湖水が、飲料水であり生活用水だ。湧き水がベースの湖水は圧倒的な透明度を誇る。もちろん不純物ナシの100%ミネラルウォーター。ここにいると身体の純化が進み、ぼくの肉体は“健康”という概念を超えたレベルまで達する。その結果、集中力は高まり、仕事におけるクリエイティビティが驚くほどアップグレードするのだ。

ニュージーランドは“虹の国”と言われることがあるくらい、頻繁に虹に出会える。特にこの日の虹は豪快だった。
【1/640sec F5 ISO125 露出補正0 焦点距離約132mm】

帰宅してすぐに、湖を一望できる自宅テラスに出る。いつもの行動パターンだ。でも違うのは、片手にG3 Xを握りしめている点。そうすると、なんと目の前の湖の真ん中に、太く見事な虹が刺さっているではないか。急いで電子ビューファインダー(EVF-DC1)をカバンから取り出してG3 Xへ装着。まずはズームは使わず、広角で撮影。そのあと、徐々にズームさせて何枚かのシャッターを切った。ファインダー越しに、一気に24mmから600mmまで、ズームで虹に迫るときのゾクゾク感は未だに忘れられない。

ぼくは空が大好きだ。ぼくにとって空は、巨大なスクリーン。そして、湖があることで湖面というさらにもうひとつの巨大スクリーンが存在することになる。これら2大スクリーンが織りなす、一秒ごとに移り変わる大自然のアート。これが、ぼくが湖をこよなく愛する理由のひとつなのだ。
その日以降、ぼくの湖畔の生活での“目線”は完全に変わってしまった。
窓際にはいつもG3 Xが置かれ、これまで以上に湖へ意識と目線を向けるようになった。世界がもっとも美しい“一日のはじまり”の写真は何枚撮ったかわからない。そして、年に何度もないほどの無風の日、鏡のようになった湖面が空に浮かぶ雲を見事に写し出している一枚は、ここで暮らすようになってからもうすぐ7年目でこれまでテラスから何百枚と撮影してきたが、過去最高の仕上がりとなった。

海には常に波があるから、決してこういう状態にはならない。湖ならではの風景だ。ただ、ここまでの状態はとても珍しい。貴重な一枚。
【1/1250sec F9 ISO250 露出補正0 焦点距離24mm】

夜明け。ぼくはいつもテラスでヨガをやりながら、太陽が顔を出すこの聖なる瞬間を目撃する。至福の時だ。
【1/320sec F4 ISO125 露出補正0 焦点距離24mm】

陽が昇る寸前の朝焼けがプロジェクターのように空というスクリーンを照らす。テラスからの3枚はあえて、同じようなアングルで撮影してみた。
【1/400sec F2.8 ISO125 露出補正0 焦点距離24mm】

「移住を決意した山へ」

さあ、このカメラとどこに出かけるか。いくつかの縦走路が頭に浮かんでは消えた。過去に歩いた登山道、次に挑戦したかったロングトレイルなど。でも、虹の写真を撮れたとき、ぼくの心は決まっていた。ここから車で1時間ほど走らせた海辺にある、世界で2番目に好きな山「Mt. Maunganui(マウント・マンガヌイ)」しかないと。何十回も登ったあの山に、この新しい相棒を連れて行きたいと思ったのである。

その山は、細い岬の切り立った先端という、世界でも稀に見る特異な地形の場所にたたずんでいる。太古の火山活動によってできた、特殊な形をしているその小さな山は、標高わずか232m。先住民マオリ族の聖地でもある特別な場所。日本では北アルプスを中心に3000m峰を好んで歩いているが、山の優劣は高さではない、というのがぼくの意見。山の価値を決めるのはそこを登る人でしかないからだ。そこには、歩く者なりのストーリーや思い入れ、そして山頂からの景色の好みが大きく影響する。
移住前、人生を過ごすための場所を探すために15回繰り返したニュージーランドへの旅で、このエリアへの移住を決めるきっかけとなったのが、この山との出会いだった。そして“海際かつ岬の先端”という特殊な立地がもたらす、この山頂からの景色が大好きなのだ。これまで何十回と登ってきたが、何度その景色を目にしても、心が震えてしまう。

「野生動物たちにファインダー越しに近づく」

車を停めてまずビーチ沿いを歩き始める。しばらくすると断崖絶壁となってくる。ちなみに南半球のニュージーランドは、いまは冬の終わり。寒いけれど、この時期ならではの風物詩がいくつかある。そのひとつが、野生のアザラシだ。磯のところに、小さなアザラシがひなたぼっこをしている。慎重に崖を下り、アザラシにできる限り近付く。慎重に慎重に。向こうの警戒スイッチがオンになる前に立ち止まり、息を整え静かにG3 Xを構える。ここは最初から望遠を最大まで活用する。肉眼だとかなり向こうにいるアザラシの表情が、ファインダー越しに飛び込んでくる。600mmはさすが、圧巻だ。動物たちは当然、こちらの気持ちを汲んで動きを止めてはくれない。一瞬の表情を逃さないために連写モードだ。

撮影中は必死にシャッターを押していただけ。望遠レンズが見事に、アンニュイな表現を捉えてくれていた。
【1/400sec F5.6 ISO250 露出補正0 焦点距離600mm】

絶対に襲われないと確信しているからだろうか。この国のアザラシは、人間をそんなに恐れない。こんなポーズも見せてくれた。
【1/1250sec F5.6 ISO250 露出補正0 焦点距離約197mm】

牧場エリアまで登り振り返ると、さっきまでいたビーチがすぐ眼下に。この景色を味わいたくてしばらく立ち止まる。心が潤ってくるのがわかる。次に迎えてくれるのは、羊たち。のんびりしているようで彼らはとても警戒心が強い。ここでもズームレンズが活躍。これまで撮れなかった距離感の写真が撮れる。徐々に高度を上げていくと、この国の原種である「マヌカ(Manuka)」の季節外れの花が、恥ずかしそうに咲いていた。今日は大晴天でポカポカ暖かい。春の到来を静かに告げられたようで、嬉しい気持ちになる。

さあ、ここからはハイライトが続く。高度が上がるにつれ、地球が丸いことがわかるような水平線が現れるのだ。立ち止まっては、G3 Xのシャッターを押す。いつもよりペースが遅くなりがちで、なかなか前に進めない。心地のよいスローハイクだ。これまで何度もカメラを構えてきた場所だけど、G3 Xによってまた違う表情を切り取ることができる。海側を回ってきたトレイルは、最後は街側に抜ける。

山の麓の一部は牧場となっている。この時期は子羊が産まれる季節なのだが、今回はほとんど見かけなかった。
【1/1000sec F4 ISO125 露出補正0 焦点距離約49mm】

この環境だからか、羊たちが幸せそうに草をついばんでいた。健康な牧草が健康な羊を育む。
【1/500sec F5.6 ISO160 露出補正0 焦点距離600mm】

殺菌力にすぐれるため医療用にも用いられるほど世界的に有名なニュージーランドの高級ハチミツ「マヌカハニー」はこの花の蜜を吸った蜜蜂たちが作る。
【1/800sec F5 ISO200 露出補正0 焦点距離約132mm】

ビーチを抜けて山道に入って5分ほど歩くと牧場に入る。そして振り返ると、この壮大なランドスケープだ。
【1/1250sec F5 ISO125 露出補正0 焦点距離24mm】

「海面直下にクジラの気配」

その街の景色が飛び込んでくる直前、視界の左側、つまり海の方に何かが見えた。距離にしてどれくらいだろうか、目測だからかなり曖昧だがおそらく2〜3kmほど沖合いの、海面直下をゆっくりと移動する大きな生物がいる。わずかな白い気泡を水面に放ちながらゆっくりゆっくり泳いでいるようだ。
クジラだ。
この時期、山からクジラが見えると地元の友人に教えられていたが、遂に出会えたのだ。カメラは構えたままで、レンズをじっと見つめながら、テイルを出さないか、潮を吹かないか、はたまたジャンプはしないか。息を呑みながら、30分ほど海とにらめっこしていたが、結局はっきりとした姿を現してくれることはなく、クジラは静かに消えていった。

左側がサーフィンのメッカでもある外海で、右がスタンドアップパドルのメッカでもある内海だ。この岬の小さな街を見下ろす景色がぼくは大好きだ。
【1/1250sec F5.6 ISO125 露出補正0 焦点距離24mm】

太陽が無数のプリズムを創り出す。真ん中のラインは、海水温が違うことで生まれる潮目。ここに魚が付いている。そして、この海がぼくの食卓を支える“漁場”なのだ。
【1/1250sec F8 ISO125 露出補正0 焦点距離約132mm】

目の錯覚だろうか。何度もそう自分の目を疑った。水平線近くの白くなっている筋の手前あたり。ゆっくりと泳ぐ巨大生物の気配があった。
【1/1250sec F5 ISO125 露出補正0 焦点距離24mm】

※焦点距離は35mmフィルム換算の数値です。

No.08 No.10