快適なパッキングの基礎知識 テント、食料、クッカー、シュラフ……。テント泊登山では、たくさんの荷物が必要です。これをうまくバックパックに詰め込むための基本テクニックは「荷物の取捨選択」と「荷物のポジション」。よりスピーディで快適なパッキングを成功させるポイントを紹介します。

ウェアや食べ物などをバックパックに詰め込むことを「パッキング」という。ここではテント泊での登山を想定して、パッキングの基本テクニックを解説しよう。まず、このテクニックの基本になる大きなポイントはふたつある。ひとつめは、不要な物は持たないという「取捨選択」。

ふたつめは、「荷物のポジションを知る」ことだ。ひとつめの「取捨選択」とは、山で本当に必要になる物だけを持つように見極めること。 例えば、食品に付く外箱など、余分なパッケージは持たない。また、非常食(予備の食料)として必要以上に大量の食品を持つと、それが、パッキングの妨げになったり、余分な重量になったりして、逆に行動の妨げになることもある。さらに、同じ性能のギアであれば、できるだけ小型で軽量なものを選択しよう。
次に、「荷物のポジション」を知ること。このポジションにより、より多くの荷物をバックパックに収納できたり、バックパックの荷重バランスがよくなって歩きやすくもなる。これについては、この後の「A・B・C・Dゾーン」で詳しく解説する。

最後に、荷物を詰め込んだバックパックは、背中に正しくフィットさせることも大切。バックパックとの一体感が高いと、腰と肩にうまく荷重を分散できて登山の疲労感を軽くできるからだ。ただし、これには、まず自分の体型に合ったバックパックを選ぶのが前提になる。

Point1 4つのゾーンを使い分ける

Aゾーン 軽く、大きいもの Bゾーン 重く、かさばるもの Cゾーン やや重量のあるもの Dゾーン 登山中に使う可能性があるもの

パッキングには、なにをどこに入れるべきかというセオリーがある。これは、より多くの荷物をバランスよくパッキングするために必要な知識となるので、ぜひ覚えておきたい。しかし、実際の登山では、この通りにはいかないことも多い。例えば、テントを最後に撤収するときにはバックパックの上部にテントを収納しないといけない。あるいは休憩中にストーブを使う予定なら、ストーブやクッカーは上部に置いたほうがよい。だから、この知識をベースにして、実際の登山で経験を積むことが大切だ。
そうすれば、自分なりの荷物の定位置を発見できるし、よりスピーディでコンパクトなパッキングができるようになる。

Aゾーン 軽く、大きいもの

シュラフ 膨張式マット

シュラフや膨張式のマットなど、柔らかくて軽量な物はここに。上に重たい荷物を置くことで圧縮もできるから、バックパック内のスペースをより広く活用できる。パッキングのときは、上からギュウギュウと力強く押しつぶすように。

シュラフ 膨張式マット

Bゾーン 重く、かさばるも

食料 クッカー コンロ テント

バックパックの背面側、肩から下に重たい物を配置する。これによりバックパックの重心が身体の中央にくるため、バランスのよい歩行が可能となる。物と物の間にできる隙間にはウェア類を詰め込むなどして、わずかなスペースも活用するのがポイント。

食料 クッカー コンロ テント

Cゾーン やや重量のあるもの

着替え エマージェンシーキット

Bゾーンに入れた硬い物を包むようにして、着替えなどをパッキングする。また、このゾーンは比較的、取り出しやすい位置でもある。そのため、救急用の医薬品などを入れたエマージェンシーキットなどもこの位置にパッキングする人が多い。

着替え エマージェンシーキット

Dゾーン 登山中に使う可能性があるもの

ヘッドライト カメラ シェル 水筒

最もアクセスしやすい場所。そのため、シェルや防寒用のダウンジャケットなど、登山中にも使用する頻度が高い物をここに収納する。保温ポット、ヘッドライト、ペーパー類など、すぐに取り出すことができるよう、ここが定位置になる。

ヘッドライト カメラ シェル 水筒

column 重心の位置で歩きやすさは変化する

重たい物は身体の近くに寄せる

重たい物は体幹に近いほど、軽く感じられる。これはパッキングも同様で、重たいものは背中に近い場所に収納することで、より軽快にバランスよく歩ける。重たい物をストラップなどを使ってバックパックの外に取り付けると、バランスが悪くなり歩きづらくなってしまうので注意。

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正しい荷重位置で歩行バランスを保つ

重たい荷物の荷重のポイントは肩の付け根付近から下にあるのが理想。こうすることで、肩、腰、背面の3点でうまく荷重を分散できる。さらに、このときウエストハーネスへの荷重割合がやや高いのがポイントだ。また、登山の基本姿勢である、前傾姿勢となったときも、この位置に荷重があったときのほうが、バランスがよく歩きやすい。サイドポケットを使うときは、左右の荷重バランスが均等になるようにする。

  • 荷重ポイントがバックパックの底にあると、体が後ろに引かれるようになってしまい、歩きづらいうえ、余計な疲労感を生むことになる

    荷重ポイントがバックパックの底にあると、体が後ろに引かれるようになってしまい、歩きづらいうえ、余計な疲労感を生むことになる

  • もし荷重のポイントが上にあると、バックパックが左右にブレやすい。これは、歩きづらいだけでなく、転びやすくもなるため、危険だ

    もし荷重のポイントが上にあると、バックパックが左右にブレやすい。これは、歩きづらいだけでなく、転びやすくもなるため、危険だ

  • バックパックの重心が肩の高さにあるのが理想。荷重が身体の中心に近い位置あれば、後ろに引かれる感覚はなく、バランスよく歩くことができる

    バックパックの重心が肩の高さにあるのが理想。荷重が身体の中心に近い位置あれば、後ろに引かれる感覚はなく、バランスよく歩くことができる

point2 万全な防水対策

シュラフ、ウェア、ペーパーなどは絶対に濡らせない。これらの濡らしてはいけない物は個々にビニールや防水袋に入れる。さらに、バックパックの内側全体に大型のビニール袋(ゴミ袋なら二重)に入れて防水する。加えて、ザックカバーを使えば、パーフェクトな防水対策となる。

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point3 デッドスペースをなくす

クッカー内部の空間も、カトラリー、調味料、ストーブのヘッドなどを収納できる有効な収納スペースになる。また、クッカーとストーブなど、硬くて丸い物の間にできる隙間には、着替えなど形が変わりやすい物を詰め込んで、デッドスペースをなくそう。

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point4 シュラフのパッキングテクニック

シュラフは、コンプレッションバッグで圧縮すればコンパクトになる。このとき防水性と通気性を兼ね備えたコンプレッションバッグであればさらに便利だ。あるいは、シュラフをスタッフバッグに入れずに、バックパックに直接入れて、上からの荷物で圧縮する手もある。ただし、シュラフを濡らさないように注意を払うこと。

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point5 バックパックの機能を使いこなす

バックパックには、個性的な収納機能があるものも多い。サイドポケットやフロントパネルにポケットがあったり、ストックを収納しやすいアタッチメント、雪山で使うショベル用のコンパートメントがあるものもある。自分のスタイルに合った収納機能があるバックパックを選び、その機能を使いこなすのもテクニックのひとつ。

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point6 ギアはできる限り内部に収納

ポールなどかさばるものも可能な限りバックパックの中に収納する。バックパックの外に付けていると、木の枝に引っ掛かり歩きにくかったりするからだ。また、ストラップから抜け落ちるなどして紛失してしまう可能性もある。外に付けるなら、ストラップをしっかりと締めて確実に装着すること。

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point7 登山スタイルに合ったサイズを選ぶ

理想は荷物の量に合ったバックパックを選ぶこと。荷物がしっかりと詰まったバックパックは、歩行中に荷物が動くことなくバランスよく快適に歩くことができる。また、バックパックも登山スタイルに合わせて細分化されている。容量と合わせて、これらの機能性も考えて選ぶとよい。

バックパック選びの目安

point8 正しいポジショニングを完成させる

column 横から見た正しいポジショニング

バックパックの背面長が長すぎるため、ショルダーベルトが浮いてしまった例

写真はバックパックの背面長が長すぎるため、ショルダーベルトが浮いてしまった例。バランスがわるく、バックパックが傾いてしまう。一方、背面長が短すぎるとショルダーベルトがズレ落ちやすくなる。

ショルダーベルトの取り付け位置が、肩のやや下(肩甲骨)のあたりにある

ショルダーベルトの取り付け位置が、肩のやや下(肩甲骨)のあたりにある。背面パッド全体も背中にフィットしている。

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