天候の豆知識 山に行く前や登山時に最も気になるのが、天候のこと。そもそも気圧とは何か、雲はどんな種類があるのかなど、天候の基礎知識について、天気予報士の森 朗さんに教えていただきます。 監修:森 朗 株式会社ウェザーマップ所属の天気予報士。TBSお天気キャスターとして活躍中。『海の気象がよくわかる本』(エイ出版社)など、天気にまつわる著書が多数ある。

1 気圧について

天気予報といえば、避けて通れないのが低気圧、高気圧といった気圧配置だ。気圧というのは空気の圧力、細かいことを気にしなければ、密度とイコールだと思ってもいい。空気分子がたくさん詰まっている所は高気圧、反対に空気分子の隙間が多い所は低気圧ということになる。
高気圧と低気圧が隣り合わせになっていると、密度が平均化されるために、高気圧から低気圧に向かって空気が動く。つまり気圧の差は空気を動かす原動力となり、さまざまな空気の衝突やすれ違い、ひいては上昇気流や下降気流を引き起こし、雲を作り、雨や雪を降らせる。そして、この天気の変化は新たな高気圧や低気圧を発生させる。こうして、天気は常に変化し続けるので、天気図で高気圧や低気圧の配置や程度、変化の状況を知ることは、天気を予測する上で最も重要なことだと言える。

ところで、山に登ると、空気は薄くなる。3,000mも登ると、地表の70%程度でしかない。ということは、気圧も低いということになる。ならば、山の上はすべて低気圧か、というと、そういうわけではない。いわゆる天気図は正確には地上天気図といって、標高の差は考慮していない。また、高気圧や低気圧には、天気図で描かれない局地的なサイズのものもある。山の斜面に風が吹きつけたときにできる高気圧や、低気圧なども天気に影響することがあるので注意が必要だ。

様々な要因で変化する高気圧と低気圧

気圧は様々な要因で変化して、高気圧や低気圧ができる。上昇気流や下降気流、温度の変化、風の吹き方、そして、山に風があたったときにできる地形性の高気圧や低気圧もある

2 雲について

雲は、実にさまざまな形をしている。形だけでなく、大きさや広がり方、色まで違う。その雲を雲のできかたや形から分類したものを十種雲形という。十種雲形では、雲の形から、鉛直方向に発達する積雲と、水平方向に広がる層雲に分け、さらに、その雲が発生する高度によって下層雲、中層雲、上層雲に分けられる。ここでは雨を降らす雲の種類について紹介しよう。

十種雲形

3 雨について

雨雲を伴った低気圧がやってくれば、広い範囲に雨が降る、というのは容易に予想できる。しかし、山ではちょっとした風の吹き方によって局地的に雨雲が発達して、激しい雨を降らせたり、低気圧がすっかり抜けた後なのに、いつまでもシトシト雨が降り続いたりする。ここでは雨の降る2つのパターンを紹介しよう。

水蒸気をたっぷり含んだ蒸し暑い風が、山肌を吹き上がることによって雨雲ができるパターン

夏になるとよくあるのが、水蒸気をたっぷり含んだ蒸し暑い風が、山肌を吹き上がることによって雨雲ができるパターン。この雲は、山の風上側で発達するので、山を越えて反対側にはやってこないか、あるいは切れ端が流れてくるだけのことが多い。だから、山の風上側は大雷雨なのに、風下側はうそみたいに晴れている、ということもある。

谷や盆地、山の斜面の風下側に非常に湿った空気が溜まっているときに、その上空を風が吹くと、その風が湿った空気を吸い上げて雲を発生させる

低気圧が通過しひとしきり雨が降った後、ほとんど雨が止んだのに、山ではしつこく雨が降ることがある。また、ふもとでも尾根でも雨が降っていないのに、谷筋だけシトシト弱い雨、まとわりつくような霧雨が降ることがある。これは、谷や盆地、山の斜面の風下側に非常に湿った空気が溜まっているときに、その上空を風が吹くと、その風が湿った空気を吸い上げて雲を発生させるためだ。

4 山の天候予測について

地形によって風向きが変わりやすく、また局地的な高気圧や低気圧、上昇気流や下降気流が発生しやすい山間部では、とても天気が変わりやすい。同じ場所でも天気が急変したり、少し移動しただけで状況が大きく違ったりすることも当たり前のようにあることだ。当然、天気図や天気予報を十分確認した上で、こうした変化を察知すべく、現場では周囲の状況に目を配らなければならないのだが、谷に下りたり、高い山の陰に入ってしまったりすると、空の変化に気を留めようにも、空がよく見えなかったりもする。

そんなときは、風の吹き方がヒントになる。谷間では、天気が良いときには、昼間はふもとから山頂に向かって風が吹き、夜になると反対に山の頂上からふもとにむかって風が吹く。昼間は、山の斜面が強い日差しで熱せられ、山頂付近で上昇気流が起きるために、ふもとからの谷風が吹き、夜になると山頂から冷えた空気が山風となって吹き降りてくる。この1日の間の変化を山谷風(やまたにかぜ)という。もしも、昼間なのに山風が吹いていたら、山頂に発達した雨雲がかかって、雨と一緒に雲の中の冷気が吹き降りているのかもしれない。やがてその雨雲がやってきたり、あるいは沢が急激に増水するおそれもある。夜になって谷風が吹くのは、山頂方向に低気圧があったり、強い上昇気流を伴った積乱雲があるのかもしれない。やはり状況の急変に注意が必要だ。もしも山谷風がわからないほど風がふいていたら、それはもう強風の中にいる証拠だ。

山の天候予測について
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