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CINEMA EOS SYSTEM

PFFスカラシップ作品 「過ぐる日のやまねこ」映画

PFFスカラシップ作品 「過ぐる日のやまねこ」映画
EOS C300/EOS C300 PL

CP+併設セミナーCINEMA EOS SYSTEM SPECIAL SEMINARを実施 EOS C300が用いられたPFFスカラシップ作品『過ぐる日のやまねこ』

2015年2月12日~15日の4日間、横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜でカメラと写真の総合展示会CP+が開催されました。このCP+開催に合わせて、ブリリア ショートショートシアターでCINEMA EOS SYSTEM SPECIAL SEMINARが行なわれました。スペシャルセミナーは2部構成。第1部は「PFF映画製作特別セミナーvol.1」として、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の第23回 PFFスカラシップ作品『過ぐる日のやまねこ』(2014年、鶴岡慧子監督)を上映しました。上映後は、鶴岡監督のほか、小川努カメラマン、柳島克己撮影監督の3人が登壇、EOS C300を使用した撮影についてトークセッションを行いました。第2部は「CINEMA EOS SYSTEMで拡がる映像表現の世界」と題し、4月25日公開予定の映画『王妃の館』(2015年、橋本一監督)で撮影監督を務めた会田正裕氏が、フランスで行われた撮影について語りました。ここでは、第1部の様子をレポートしましょう。『過ぐる日のやまねこ』の監督を務めた鶴岡氏は、2014年に東京藝術大学大学院を修了。鶴岡氏は、「今回撮影を行った小川カメラマンとは大学院時代の同期で、在学中にも2本制作していました」と話す。「小川君が、どこにカメラを据えるのかという部分に期待しているところが大きい」と撮影時の位置取りを評価しました。柳島撮影監督は同大学院教授を務めており、小川カメラマンの在学中は撮影を指導していた立場。北野武監督の作品のほとんどを手がけた経験をもとに、『過ぐる日のやまねこ』を見た感想や疑問を鶴岡氏と小川氏に投げかける形でトークが進められました。

「EOS C300は幅広い階調表現を素直に書き出してくれる」

セミナーの最初に、『過ぐる日のやまねこ』の製作全体について3人が話しました。柳島氏は、「稀に見るフラットな画作りで、上映環境によって全く変わってしまう可能性もある」と、チャレンジングな取り組みだったと話しました。

写真:(左)小川努カメラマン×(右)鶴岡慧子監督

鶴岡 「スカラシップの脚本開発が2012年冬に始まった段階から、私の中で故郷の長野県上田市で撮影したいと思っていました。これまでも上田市で撮ったことはありましたが、今回は『上田』という土地の名前を前に出して、私が生まれ育った土地の周りで撮ろうと腹をくくって取り組みました。故郷で撮るということは、故郷にいる人たちを描くことになります。個人的ではありますが、映画を撮るために東京に出てきたけれども、私にとって節目となる作品を故郷で作品を作ることで向き合うということが、自分と故郷の関わり合いの中で重要と考えました」
小川 「鶴岡監督は画作りに対しては放任主義的で、勝手に好きなように撮らせてくれました。撮影中は好き勝手に撮ったつもりなんですが、出来上がってみると『これは鶴岡慧子の作品だな』と分かる作品に仕上がってしまい、掌で踊らされているような感覚になりました。学校が横浜にあるので(編注:横浜市中区本町)、在学中は都市部で撮ることが多く、地方で撮る機会はありませんでした。今回は撮影の基盤を上田に移して撮ったので、映画に地元の人にしか分からないことが少しでも出せたらいいなと思っていました。映画前半に東京撮影の部分があり、その部分との違いを際立たせられれば、より良くなるのではないかと考えながら撮影に臨みました」
柳島 「この映画の画作りは、最近稀に見るフラットな感じの画調ですね。最近のカメラは性能が上がり見た目に近いものが撮れるのですが、あえて昼間でも黒が浮いているような感じにしています。この画調にしたことで、作品に与える印象の部分にかなり関わってきます。上映環境によっては、全く変わってしまう可能性があるので、諸刃の剣のような作品であるとも感じました。ロングショットを長回ししていますが、これも度胸がないとできないですね。こうした取り組みから出来上がってきた映画ですね」
小川 「デジタルの発展の一般的な方向性として、最近のデジタルカメラはフィルムの感じをどう再現するかが1つの大きなテーマ。EOS C300は、幅広い階調表現をデータに素直に書き出してくれるカメラだと感じました。得られたデータからフィルム調に作り込むというよりも、むしろ光の幅広い階調を生かして作れればと思いました。経験の少ない私がいくらフィルム調に再現したとしても、昔の名カメラマンがフィルムで撮っていた映画には勝てないだろうなとも思い、今ある状況の中で独特な画を模索していく中で、フラットな画はデジタルならではの撮り方なのかなと思いながら取り組みました」
鶴岡 「フォグフィルターを付けつつ、さらに室内でスモークを焚いてるんですよね。この演出は、私、発注してないです(笑)。『小屋の中に光がすうっと入ってくる感じを、スモーク焚いて表現したい』と提案されて、じゃあやってみようと──」
柳島 「小川くんが大学院に入学する時に、それまでは先端芸術を志していて、まったく映画を作ったことがないという情報が入っていました。しかし、写真で審査をする2次試験の時に、彼の写真がすごく良くて。実地試験をした時にも、やったことがないことに対してもすごく落ち着いていたんです。やる機会がなかったのに、よく入ってきたなと思いました」
鶴岡 「従来の映画のルールなどに縛られていないのが、すごく良い」
小川 「映画製作の世界に誰もがさっと入れるようになったのは、デジタル技術があったから。なかったら入らなかったです。フィルム時代だったら、勝負できる領域が狭く、イロハを学んでからしか参加できないような業界だったと思うんです」
柳島 「それでもスカラシップの2年間で、ここまで自分の世界観を出せる。出す方法を考えれば実現できるのが、今の映画の作り方でもあると思いますね」

「設置場所が限られても小型・高感度なEOS C300に助けられました」

ここからは撮影したシーンを見ながら、トークが展開していきます。最初は、映画の冒頭シーンと山小屋のシーンについて。

鶴岡 「映画の冒頭の部分は、お父さんの顔をあまり映さないでと指示を出しましたね」
柳島 「そうだったんだ。この映画はファーストシーンだけだと、展開を想像しにくいんですね。ファーストシーンはすごく難しいと思うんだけど、その辺はどういう風に考えていたの?例えば、子供が寝ている方向と、大人になった時の方向を揃えて印象づけるようなことは考えなかったの?」
鶴岡 「今となっては不親切なシーンだなと思います。撮影当時は、映画の最後になって同じ方向を向いているシーンがあるので、そこで分かってもらえばいいかなと思っていました。山小屋は、持ち主も10年くらい訪れていないという別荘で、リアルに人の手が入っていない状況でした。演出ではなく、ほんとうに打ち捨てられた感じの小屋でした。ロケハンの後、制作のみなさんが、持ち主が東京にいることをつきとめてくださり、撮影許可をとってくださいました。床も抜けそうな状態だったので小型のドリーに変更して撮影をしましたが、EOS C300のコンパクトさに助けられました」
小川 「映画撮影の現場は撮影部と照明部を明確に分けていることが一般的ですが、今回はスタッフ全員が同級生のようなものですので、両方合わせて5人で分担して臨機応変に撮影しました。EOS C300を操作したのは私を含めて2人です。撮影現場の山小屋はとても狭いところでした。部屋の広がりを出そうとすると、カメラを設置できる場所は壁際に4カ所くらいしかない状況でした。後のシーンで使いたい構図は残しておかねばならないと思いながらも、構図が単調にならないように工夫する必要もありました。EOS C300の小型ボディーにはずいぶん助けられました」
柳島 「電源はどうしたの?」
小川 「山小屋に電源はなかったので、地元企業の協力を得ながら、音に影響しないところまで電源車を持ち込み、そこから照明やカメラの電源を小屋まで引いていきました」
柳島 「電源車を離さなければいけないとなると、それだけ太いコードを延々と這わせる必要が出てきますね」
鶴岡 「雨も降ったり、準備が大変でしたね。電源車を使っても照明に余裕があるような状態ではなかったので、高感度なEOS C300は有効でした」
小川 「スモークは舞台用のスモークマシンを使用しました。スモークシーンは映画の中で独立したシーンであれば多めに焚いて印象的な仕上がりにしても良いのですが、部屋のシーンを撮影してすぐに、屋外に移って芝居を続けたりもするので、かすかに光線が映えるくらいに抑えるようにしました。レンズ前に付けるフォグフィルターの強さを、光の効果を確認しながら変えました。EOS C300は味付けのないフラットな画が出るので、フィルターワークを活用する素材撮りの場合にも高品質な画が出てきます。CGなどで演出を使わずに、スモークやフィルターなど昔ながらの撮影技法を試しやすいカメラでした」

「広がりを持った風景には50mmを使いました」

印象的なシーンとして、鶴岡氏と小川氏が異口同音に「反省も多いシーンだった」と振り返るのは山中での撮影についてでした。

写真:小川努カメラマン

鶴岡 「人が登っていかないようなところに分け入って撮影をしました。でも、あまり高いところというイメージが出せなかったんです。映画で見栄えのする崖のシーンは、木もあまり生えていなくて岸壁のような感じのはずなんですが」
柳島 「厳しい感じではなく、いい感じの山に見えますよね。斜度や高さを見せるのは非常に難しい。実際に役者と一緒にそこに行っても、映像ではそれを表現しきれないんですよ。だからドキュメンタリーなどでは、横位置に入って撮ったり、対斜面と言うんだけど、反対側の山に行って、そこからいかに急峻な峰であるかという説明のカットを入れるんです。最近のドキュメンタリーは、登っている人の横でカメラマンもザイルを付けて登っていったりします」
鶴岡 「ロケハンをして選んだのは、崖下に滝があって、その横にあった登るのも大変な急斜面の上です。ロープを張りながら、みんなで機材を背負って上げました。撮影シーンの写真ではあまり伝わらないんですが、崖を落ちる設定の骨壺を受け取るために斜面で構えていたスタッフに、『足を滑らせたら危ないよ、落ちないでね』と声をかけていました」
小川 「崖の急斜面感を出すために、美術さんが骨壷かついで苦労して山に登ったんですけど、そのぶん撮影環境が厳しくなり、カメラ位置が制限され、役者にも無理をさせるわけにもいかず、かえって山の感じがスポイルされちゃいましたね。実際に大変なところに行けば、大変なことが伝わるものが撮れるだろうと思ったら、そうではなかったという大きな反省です」
柳島 「本当に急斜面のところだと、覗き込むくらいまでカメラを差し出して撮らないと高さが伝わりにくかったりするんですよね。ロープでカメラも身体もしばって、何もしなければ落ちるというところまで身を乗り出して映した経験は何度もありますが、それでも高さの感じが出ないこともありました。使うサイズにもよりますし」

『過ぐる日のやまねこ』は、作品全体にわたって長回しのシーンが活用されています。柳島氏は「覚悟」と表現しました。

写真:柳島克己撮影監督

柳島 「全体的にワンカットが長いのは、どう考えていたんですか?ショット的に好きなサイズなんですが、ルーズなショットに見えるので、普通なら寄ったアップのショットを撮りたくなる。それをしないで回し続けるのは、ある種の覚悟がないとできないですよね」
鶴岡 「自分はカットを割るのが好きなんですけど、1カメ撮影だったこともあり、カット数を細かく割ることはせずに、ミドルショットで撮っていくことが多かったです」
小川 「今回使用したレンズは、50mm、80mmの単焦点レンズと、人物撮影用にズームレンズを活用しました。広がりを持った風景には50mmを使っています。長野の家でのシーンでは、農家の家をお借りしたので空間を広く使えました。都内のマンションではできないことをやってみようと、少し広めに撮ったものを寄りのカットとして使うように意識していました。本当にアップで寄らなければいけないものは、後半のシーンに集中させようと思いました」

「EOS C300のCanon Log撮影で救われたシーンはいくつもあった」

短期間の撮影だったこともあり、天候の影響も大きかったと話しました。現場環境を生かした撮影にはCanon Log撮影は欠かせないものとなったようです。

写真:鶴岡慧子監督

鶴岡 「撮影当時は、梅雨も明けていない時期でした。山の天気で変わりやすく、おまけに台風が来て川が氾濫したりと、大変でした。撮影が遅れ気味になってしまって、朝のシーンも時間が割けなかったので、夜に撮影せざるを得ませんでした」
小川 「台風が来て、ロケハンでもともと予定していた場所が川の氾濫で流されてしまったり。自分の好みの画面サイズで撮るというより、持っている機材で昼っぽく撮れるところで撮るという感じでした」
鶴岡 「急遽、撮影場所を変更して、照明を作って撮ったんですよね」
柳島 「いい雰囲気に仕上がっていますね。人物に木漏れ日みたいなものがかかったりと、小さい小技も効いています。ライトはどういうものを使ったの?」
小川 「一番大きいものは夜のシーンで使用しているもので、2.5kWのシネバルーンを使っています。全体的に照らすライトなので、撮影規模の割に夜の撮影の自由度が上がりました」
柳島 「グレーディング部分はどうしたの」
小川 「ルックアップテーブルを自分で用意して現場確認するカメラマンもいますが、今回は撮影のテスト期間も少なかったので、EOS C300が書き出したCanon Logデータをベースに撮影を進めました。あとからフィルムルックにグレーディングをしているのですが、EOS C300の性能に頼って撮影したことで救われたシーンは、いくつもありましたね」
柳島 「最近のデジタルカメラは、暗部に強いじゃないですか。僕は黒をどのように表現していくかをテーマにしているんですけれど、今回の作品は真逆の方向に行っている印象があり、これは狙っていたんだろうなと感じました」
小川 「そうですね。コントラストも強くはしていないですが、単なる柔らかめの画ということにはしたくなかったので、グレーディングには時間をかけましたね」

セミナーの最後に、鶴岡氏と小川氏は、スカラシップ作品の製作を通じて感じたことを次のように話しました。

小川 「スカラシップ作品なので、半商業的な立ち位置の映画作品ではあると思います。制限が少なくて自由が利く自主映画に比べ、時間やロケ地、役者といった制限もあります。こうした制限を肯定的に受け入れ、自分の理想的なイメージではない何かという部分や、大人数で製作して自分の思い通りにいかない部分を愉しむということが大事。そうでないと作る側も面白くないし、作られた映画もたいしたものにはならないのではないかと気づかされました」
鶴岡 「自主映画の時から、自分でカメラを回した経験がほとんどないんです。常にカメラマンを立てて、一緒に映画を撮るということをしてきました。だから自分のイメージが固定されているわけではないんです。カメラマンに託して、その人がどこにカメラを据えるかによって、自分が考えていたことを超えることが起こるので、それが映画製作の醍醐味になっています。これは撮影だけでなく、製作のすべての領域において言えることだと思っています。全員が、私の予想を良い意味で裏切ってくれると、より素晴らしいものが生み出されますね」

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