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  • CINEMA EOS 商品情報

VOICE CINEMA EOS SYSTEMを体験した、プロフェッショナルたちの活用事例。

CINEMA EOS SYSTEM

「花筐/HANAGATAMI」 映画
EOS C300 Mark II

大林宣彦監督が檀一雄の小説をもとに1975年に脚本を書き上げ、長編映画デビュー作である『HOUSE/ハウス』以前に撮影を望んでいたという映画『花筐/HANAGATAMI』が2017年12月に公開。『この空の花 - 長岡花火物語』『野のなななのか』に続く、大林監督の「戦争三部作」の締めを飾る集大成である。本作ではメインカメラにキヤノンのEOS C300 Mark IIが採用され、大林監督が生み出す圧倒的な映像力の一役を担っている。大林組には欠かせないメンバーである撮影監督/編集を担当した三本木久城氏に、本作の見どころやEOS C300 Mark IIを採用した経緯、効果を発揮した機能や性能などについてお話を伺った。

EOS C300 Mark IIによって使えるレンズの自由度が広がった


撮影監督/編集 三本木 久城

─ 大林組と今回の映画に携わった経緯をお聞かせいただけますか。

撮影B班/編集で参加した『この空の花 - 長岡花火物語』の以前から、監督とはミュージックビデオの撮影や劇映画やCMのメイキングなどでご一緒していたのがそもそもの始まりです。その取り組みの中で大林監督にとってデジタルで出来ることがだんだん形になっていき、監督は元々フィルムの人でしたが『この空の花 - 長岡花火物語』からフルデジタルに挑戦することになりました。長岡の準備中には次の話が決まっていて「北海道の芦別でやるから、よろしくね」と言われ参加したのが『野のなななのか』。その流れを受けて参加した今回の『花筐/HANAGATAMI』では、ほぼ全カットで合成を行っています。現場では作品の世界観を監督と話しながら進めていきました。合成シーンを普通に合成すると、監督は「面白くない。ちょっと合成がずれてるくらいがいい」とおっしゃっていたのが印象的です。近年の作品で多用されている、人物の深度が浅く遠近感があるように見えるのになぜか背景がパキッとしているグリーンバック合成のカットは、すべて監督の狙いです。距離感が不思議なカットもありますが、そこが面白いですし、その映像を自在に操れるというのがすごいですよね。

─ EOS C300 Mark IIを採用したきっかけを教えてください。

前二作ではコンパクトなカメラと単玉レンズを使ったりしていましたが、今回は純文学が原作なので、どっしり構えて大きなカメラと大きなレンズで撮ろうという話になり、メインカメラにEOS C300 Mark IIを採用しました。やはりレンズの自由度が広がるというのが理由の1つです。EF24-105mm F4L IS II USMを多用しましたが、他にも超広角ズームレンズなどいろいろ使っています。

─ その他に決め手となった機能はありますか?


©撮影:大林千茱萸/PSC

大林監督はこの映画をほとんどすべて22コマで撮ると決めていたので、EOS C300 Mark IIのフレームレートを自由に細かく設定できる機能が活かされています。24コマベースで、22コマで撮ると少しだけアンダークランクのクイックモーションになります。ただし、音楽を現場でプレイバックして、歌ったり、ダンスしたり、笛を吹いたりするシーンは24コマで撮っています。主演で新人の矢作穂香が出るカットも24コマで撮っていますね。画的な動きの違いはほとんどの方は気づかないかもしれませんが、24コマの方がしっとりとした印象に感じると思います。その他にも馬が走っているカットは18コマで撮影しました。ジョン・フォード監督の西部劇で馬が走るシーンは18コマだという話があって、監督から「馬の走りは18コマか16コマくらいでやってみよう」と指定がありました。22コマ以外のコマ数は監督による現場判断でしたが、急な変更でも設定しやすいカメラでした。ちなみに、コマ数が変われば当然音がずれるのでポスプロで合わせています。録音部が録った音をトーンを変えずにピッチだけ変えるという処理をしてもらい、変換したスピードの音を編集の時にごっそりもらってカチンコの音で合わせました。

ちょっと飛んでいる背景も叩けば出てくるラチチュードの広さ

─ カメラの感度に関してはいかがでしたか?

ISO800ベースで撮影し、光量が足りない時にたまにISO1600も使いました。『この空の花 - 長岡花火物語』のときに使ったカメラはベース感度が400だったのですが、B4マウント変換して放送用レンズを付けてイメージサークルを広げるためにエクステンダーも入れると光量が2段分低下するので、メーターの感度はISO100に設定する必要がありました。その状況でオープンのナイターをやっていたので、カメラの機材コストが抑えられた代わりに照明機材や照明助手の人数がものすごく増えてしまってアンバランスになってしまったんです。その反省があって、次の『野のなななのか』では明るい単玉レンズを多用し、ズームレンズの使用は控えていました。そんな変遷がありましたが、今回のEOS C300 Mark IIではISO800をベースにして明るいズームレンズも使える、とてもバランスの良い機材構成にできたと思っています。


©撮影:大林千茱萸/PSC

─ ガンマや色域の規格はどれを選択しましたか?

暗部ノイズが少ないCanon Log 3を採用し、色域はCinema Gamutを使っています。ダイナミックレンジが広くて扱いやすかったですね。夜のシーンに限らずラチチュードが広いということは後の仕上げのこと考えるととってもありがたい。ちょっと飛んでいる背景も叩けば出てくることがありますし、グリーンバックでも優秀でした。例えば高い階に窓があって、ちょっと軒が出ているだけのスペースに無理やりグリーンを垂らしてライティングをしなきゃいけないシーンでは、ムラが出たりするんですよ。そんな状況でも何とか助かるかなという見込みで撮っておくと、グリーンが持ち上げられたり微調整が効くんですよね。

─ 近年の大林監督作品では移動ショットが多い印象がありますが、カメラの取り回しはいかがでしたか?

もちろん軽快に動けることも重要課題でしたので、EFレンズはそのまま取り付けるだけのシンプルなセットで撮影に臨みました。カメラの重さも取り回しがしやすかったですね。ボディーのボタンが光るから暗いところでもよくわかるし、メニューもすごくわかりやすい。画の印象も他社のカメラでは平面的な画に見えて物足りないものもありますが、キヤノンの映像はシネライクなところがあってとても扱いやすかったです。


©撮影:大林千茱萸/PSC

擬似夜景の美しいカットを生み出すEOS C300 Mark IIの画力

─ カット数が膨大だったと思いますが、撮影後のワークフローはどう進められたのでしょうか?

編集は結構すごいことになるんですよ。ノンリニア編集のビデオトラックは普通の映画だったら10トラックぐらいじゃないですか。それが大林組は40トラックくらいで九龍城のようになります。クランクアップしてから2K(HD)のProRes(HQ)コーデックにトランスコードし直して、Final Cut Pro 7で編集しています。トリミングが必要なカットだけは4Kから4K ProResを作って、合成カットの場合はProRes 4444のアルファ付きを作ります。合成はFinal Cut Pro 7でできるところはやってしまい、あとはAfter Effectsが得意な助っ人にお願いしました。大林監督が教鞭をとっている倉敷芸術科学大学の卒業生の力を借りています。緻密な合成は該当するカットを書き出して、こちらで作ったガイドと一緒にその方に託して作成してもらいました。監督は頭から順番にほとんど完璧に仕上げながら編集していきます。もちろん合成はちょっとあてるくらいのことしかできないですが、そうして監督立会いのもとカット編集をして、そのあとは成城の編集室でコツコツと7か月間、画や音を整理していく流れでした。

─ 最後に特に苦労したシーンや見どころのシーンなどを教えてください。

撮影は2カメ体制でしたが厳密なテストをする間もないまま撮影がスタートして、Bcamは他社製のカメラになってしまったため色味がなかなか合わなくて、その点は編集で苦労しましたね。撮影時には「できるできないは別にして、やりたいことは全部言うからね」と監督に言われ、本当にいろんなことをやりました。合成に関しては全編通して大変でしたが、唐津くんちのシーンが特に大変でしたね。監督は、曳山14台が虹の松原に並んでいる画を作りたいとおっしゃっていたのですが、神事にまつわる山車なので簡単には出していただけないわけです。それが交渉を重ねて撮影させていただけることになり、1台ずつ巨大なグリーンバックで撮って、並んで動いているように合成しました。


©撮影:大林千茱萸/PSC

またある美しい景観のシーンでは、ちょっと薄曇りの状況で「せっかく曇っているんだったら、背景をグリーンにして晴れた背景を合成したい」とおっしゃいまして……正直なところなぜここでグリーンバックなのだろうと思いましたが、本編を見ていただくと不思議な背景になっていて狙いがしっかり効いています。あとは、擬似ナイターも見所の1つだと思います。ブルーバックの背景に夜景をはめて、前面ではガツンとどぎつい明かりを当てて昼間の明かりで夜を作っています。普通に合成なしで撮ったカットで夜景になったカットもあります。伝統的な潰しの擬似夜景です。福岡の能古島という小さな島の森の中で、月夜の下を歩いていくというカットでは、晴れてないと太陽光で月明かりのシーンができないのですが、本番ではうまい具合に擬似夜景が作れてきれいな画に仕上がっていると思います。そういった美しいカットでも、EOS C300 Mark IIの画の力の恩恵を受けていますね。

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