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トップ > Cのキセキ Episode.15 「フォトブック作成サービス」 > P4
この十数年で写真を巡る環境は大きく変化した。その変化を巻き起こしたのは、デジタルカメラ、スマートフォン、そしてSNSだ。写真がより手軽に、大量に撮られるようになる一方で、プリントされる写真の数は減少している。しかし、紙に印刷して手元に残しておけるプリントの“価値”は決して変わらない。キヤノンのフォトブック作成サービスは、そこに新たな光を当てようとしている。
本サービスは2021年12月15日をもって終了しました
「PhotoJewel S」の商品企画を担当したキヤノンの髙橋智子は、フォトブックをより多くの人に楽しんでもらうためには、デジタルカメラのユーザーだけでなく、スマートフォンで写真撮影を楽しんでいる層にもアピールする必要があると考えたという。
「そのためには、まず写真選びを簡単にする必要があります。スマートフォンユーザーの特徴は、たくさんの写真を気軽に撮ることです。しかし、その結果、写真がたくさんあり過ぎて1枚の“いい写真”が選べない。ですから、まずは“いい写真”を簡単に選び出す方法を提供しなければと考えました。それに加え、レイアウト作業にかかる手間と時間も大幅に減らす。そこまでの機能が提供できて、初めて使ってもらえるサービスになると考えました」
そこで出てきたのが“自動”というキーワードだ。大量の写真の中から“いい写真”を自動で選び出し、自動でレイアウトしてくれるサービス。そんなアイデアに光を当てたのは、「PhotoJewel S」のプロジェクトチーフを務めるキヤノンの安部孝一だ。安部は髙橋のアイデアを聞いて、キヤノンの研究所で開発されていたある技術を思い出したという。
「キヤノンは写真や画像に関するさまざまな技術の研究・開発をしていますが、その中に画像に写っている特徴を解析して分類する要素技術がありました。その要素技術を応用して“いい写真”かどうかを得点化できれば、『PhotoJewel S』で求めている大量の写真の中から“いい写真”を選び出し、適切にレイアウトするサービスが作れるかもしれないと考えました」
こうして「写真選びとレイアウトを自動で行うシステムを作り上げる」というプロジェクトの方向性は定まった。しかし、それを実現するためにはまだまだ試行錯誤が必要だった。
「プロジェクトがスタートすると同時にゴールであるサービスの開始時期も決めました。その時点で手元にあったのは、基礎部分の画像解析エンジンの要素技術のみでしたが、ネットサービスの世界は流れが速い。時間をかけて開発しても世に出すタイミングを逃したら意味がありませんから、短期間で開発することも至上命題でした。しかも、パソコン版のWindows用、Mac用、スマートフォン/タブレット版のiOS用、Android用の合計四つのアプリを同時にリリースすることも目標にしました」
時間が限られる中、プロジェクト・チームの前には大きな壁があった。
「“いい写真”とは何だろうというサービスの“基礎の基礎”になる部分です。そこがしっかり定義できなければ、思い出や感動を伝えるフォトブックを自動で作ることなどできるはずがありません」
髙橋はこれこそがこのプロジェクトの成否を分けるポイントになると考え、腰を据えて考えることにしたという。
「1枚だけプリントして飾る場合と、何枚もの写真をフォトブックにまとめる場合の“いい写真”は評価の仕方が違うはずです。フォトブックは組み写真のようなもので、ストーリーや主人公が大切な要素になります。例えば、旅行の記念であれば、カメラの方を向いていない写真や、食事が大きく写っている写真、人物は小さくても風景が分かる写真も所々入っていてほしい。そうしたフォトブックを作る人の意図をくんだ“いい写真”を選別して、ストーリーを感じるようなレイアウトにするにはどうしたらいいのか。とても難しい課題でした」
後に「EAGiAL(イージアル)」と名付けられる自動画像解析・レイアウトエンジンの開発は、こうして始まった。
パソコン版のアプリも操作手順に関してはほぼスマートフォン版と同様だが、スマートフォン版より多くの判型を選択できる。A4サイズや30センチスクエアのアルバムを作りたい場合はパソコン版で作業を行う。またSDカードやUSBメモリーなどを使ってデジタルカメラで掲載した写真を取り込むことも可能。