カテゴリーを選択

トップ > 特集 キーワードで読み解く2018年 > P2

キーワードで読み解く2018年

AIやIoTの活用が進む一方、人口減による人手不足などの社会課題がいよいよ顕在化してきたのが2017年の日本だった。
そして今年、日本社会はどう変化し、そこにどのようなビジネスチャンスが生まれるのだろうか。
海外事情にも詳しい経営学者の石倉洋子さんに、2018年の社会やビジネスを読み解く視点について語っていただいた。

  • Twitter
  • Facebook
  • 特集
  • 2018.03.01

キーワードで読み解く2018年

「中央管理」から「分散自律」へ

イラスト:ブロックチェーン

2018年は、ブロックチェーンに関する議論がさらに活発になっていくと考えられます。ブロックチェーンとは、銀行のような特権的な管理者を必要とせずに、さまざまな取引を行うための仕組みで、お金や資産の取引記録をインターネットにつながった数万台のコンピューター全体で管理することによって取引記録の改ざんや二重取引を防ぐことができます。ビットコインなどの仮想通貨は、この仕組みによって運営されています。

ブロックチェーンの画期性は、「中央管理型」ではなく「分散自律型」という新しいシステムを実現させた点にあります。これによってシステム管理コストが大幅に下がるだけでなく、サイバー攻撃などに対するシステムのセキュリティーレベルも向上することになります。

ブロックチェーンの仕組みは、金融の分野だけでなく、IoTのデータ管理、シェアリングサービス、人材採用、コンテンツのライセンス管理など、さまざまな領域に応用することが可能です。経済学者の野口悠紀雄さんは、ブロックチェーンを「インターネット登場以来の革命」であり、「IT革命は、ブロックチェーンによって完成する」と言っています。ブロックチェーンに関連するさまざまなビジネスが、2018年以降、次々に生まれていくことになるでしょう。

キーワード 4

ブロックチェーン

「分散型台帳技術」とも呼ばれる。「ブロック」とは一定期間の取引記録(台帳)のまとまりのこと。それをインターネットで「チェーン化」された膨大なPCによって分散管理する。チェーン内のPCの管理者は「マイナー(採掘者)」と呼ばれる。数千から数万台のPCによって情報のやりとりが常に監視されているので、データの改ざんなどの不正は不可能とされる。

VRの「時間的活用法」

イラスト:VR

新しいテクノロジーの中で、私が特に注目しているのがVR(仮想現実)です。超高齢化社会を迎えるに当たって、VRによる人生のシミュレーションができるのではないかと考えているからです。

体力的に外出が難しくなった高齢者が、VRを使って家に居ながらいろいろな体験をするというVRの「空間的活用法」はすぐにでも実現可能です。一方、将来的に高齢者となっていく人たちが、VRによって未来の自分の生活を疑似体験する、いわばVRの「時間的活用法」もあり得るはずです。自分が高齢者となったときにどのような不具合が出て、生活はどう変わるのか。それをVRでシミュレーションすることによって、老後への備えや心構えができるようになります。こういったVRの活用法は、保険や介護サービスなどの分野で新しいビジネスを生み出す可能性があります。

イノベーションを活用する力

私が最近話をした海外のある識者は、介護、医療、物流、ものづくりなど、社会的な課題が顕著な領域にテクノロジーを活用するという点で日本にはかなりポテンシャルがある、と言っていました。その見立てが正しいかどうかはともかく、世界に先駆けて超高齢化社会に突入する日本が「課題先進国」であり、その課題をどう解決していくかが世界から注目されているのは確かです。

イノベーションを生み出す努力ももちろん必要ですが、イノベーションを社会システムにうまく組み込んで課題を解決する、いわば「イノベーションの社会化」を目指す方向において力を発揮していくのが、今後日本が取るべき道の一つではないか。そう私は考えています。

  • 前のページ

    抜本的な働き方改革とは
    誰が、何に困っているのか
  • 次のページ

    「分からないこと」に立ち向かう姿勢を

C-magazine サイト トップページに戻る

PDFで閲覧する場合は、デジタルアーカイブスへ

このページのトップへ