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キーワードで読み解く2018年

AIやIoTの活用が進む一方、人口減による人手不足などの社会課題がいよいよ顕在化してきたのが2017年の日本だった。
そして今年、日本社会はどう変化し、そこにどのようなビジネスチャンスが生まれるのだろうか。
海外事情にも詳しい経営学者の石倉洋子さんに、2018年の社会やビジネスを読み解く視点について語っていただいた。

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  • 2018.03.01

キーワードで読み解く2018年

「分からないこと」に立ち向かう姿勢を

イラスト:ソサエティー5.0、エクスポネンシャルな発展

日本は諸外国と比べて、政治も経済も安定した恵まれた環境にあります。しかし、世界における存在感は減退しているのが現実です。テクノロジーやエネルギー分野など、過去に日本が強いといわれていた領域でも、残念ながら、もはや海外諸国から先進市場であるとは見なされなくなっています。

そのような中にあって、政府が掲げている「ソサエティー5.0」は、未来に向けた見通しを示す重要なビジョンです。このビジョンはひと言でいえば、「テクノロジーを使ってインクルーシブな社会をつくることを目指す」ものです。日本国内よりも、むしろ海外でよく知られているこのビジョンの内実をいかに充実させていくかが、今後試されることになるでしょう。

技術の発展は、リニア(直線)ではなくエクスポネンシャル(指数関数的)に進んでいます。過去300年間に起きた変化よりも大きな変化がこれからの20年で起こるという人もいます。それがどのような変化なのかは、現在からは想像がつきません。

しかし、今までの社会、組織、業界などの枠組みが大きく変わり、過去の常識が通用しなくなることは間違いないでしょう。そのような変化を拒否するという選択肢はありません。

変化に対応するためには、常に新しい知識やスキルを学ぼうとする姿勢、「分からないこと」に立ち向かっていく姿勢が必要です。不確定な時代には分からないことが増えるのが当然であり、分からないことがあるということは、そこにビジネスチャンスがあるということです。

これから私たちは「人生100年時代」を生きていくことになります。人生の時間が長くなればなるほど、失敗からのリカバリーもしやすくなります。失敗を恐れず、分からないことに挑み続ける──。そんなマインドが日本のこれからの成長を支えるのだと思います。

キーワード 5

ソサエティー5.0

2016年からの5年間の科学技術政策を策定した「第5期科学技術基本計画」に政府が盛り込んだコンセプト。「インターネット空間と現実空間を高度に融合させ、経済の発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」を意味する。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会がそれぞれソサエティー1.0から4.0に該当するという考え方がベースになっている。ドイツで提唱された「インダストリー4.0」よりも幅広い概念として世界的に注目されている。

キーワード 6

インクルーシブな社会

「インクルーシブ」とは「包摂(ほうせつ)的な」といった意味で、「エクスクルーシブ(排他的)」の対義語に当たる。「社会を構成するあらゆる人が共に助け合っていこう」という考え方である「ソーシャルインクルージョン」から生まれた表現。もともと「インクルーシブ」は、国内社会を対象として使われることが多い言葉だが、「全ての国がメリットを享受できるインクルーシブな仕組みを」など、国際社会の文脈で使われる場合もある。

キーワード 7

エクスポネンシャル

シリコンバレーで未来を表す最も重要なキーワードの一つと捉えられているのが「エクスポネンシャル」だ。リニアな発展が「1、2、3、4……」と徐々に進んでいくのに対し、エクスポネンシャルな発展は「2、4、8、16……」と飛躍的に進行していく。結果、発展を表すグラフは急激なカーブを描くことになる。AI、ロボティクス、量子コンピューターなどの進化のスピードを表す場合にしばしば用いられる。

写真:石倉洋子さん

石倉洋子(いしくら ようこ)
専門は経営戦略、競争力、グローバル人材。バージニア大学大学院経営学修士(MBA)、ハーバード大学大学院経営学博士(DBA)修了。これまで、青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、一橋大学名誉教授などを歴任。資生堂、日清食品ホールディングス、双日などの社外取締役も務める。

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