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時代をつくった業界イノベーション物語

業界や市場に革新をもたらした製品などを取り上げ、世の中に受け入れられた背景などを紹介します。そこには、新たなイノベーションにつながるヒントがあるかもしれません。
初回は小学生の間で話題となった文房具に注目しました。

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  • 2016.03.01

[Vol.1] 小学生の文房具

最近、子どもたちの間で“シャープペンシルブーム”が起きている。発端は2008年に発売された「クルトガ」(三菱鉛筆)。芯が回転し、芯先が円すい形に摩耗することで、先端の細さを一定に保てる新機能に注目が集まった。その後、「極細の芯」や「芯が折れない設計」をうたった高機能シャープペンシルが続々と誕生。子どもたちが自ら買い集めたシャープペンシルをネット上で自慢するなどしている。

日本初のシャープペンシルは、本体の端の部分を回して芯を出す“繰り出し式”で、1915年の発売当時は高級筆記具だった。現在の“ノック式”が生まれたのは1960年。価格も次第に手頃になり、各社がデザインや機能を競い合ってきた。

小学生の代表的筆記具である“鉛筆”は、日本で製造が始まった明治初頭以来、ほぼ同じ姿を保っている。超ロングセラー鉛筆は、1945年発売のトンボ鉛筆「8900」。その後1958年に三菱鉛筆が高級鉛筆と称して「ユニ」を発売すると、1963年にトンボ鉛筆が「モノ」で対抗。トンボ鉛筆と三菱鉛筆の二強体制は今も変わらない。

鉛筆に欠かせないのは消しゴムだが、こちらは二度ほど大きな転換期があった。一度目は、消しゴムの素材が天然ゴムからプラスチックに変わったこと。それまで研究に研究を重ねてきたシードが、1956年に世界に先駆けて「プラスチック消しゴム」を生産。1968年に現行ブランド「レーダー」が誕生すると、実名をあげて商品を評価する商品テスト誌「暮しの手帖」で「よく消える消しゴム」として取り上げられ、瞬く間に広がった。ちなみにトンボ鉛筆の「モノ」は「レーダー」と並ぶ消しゴムブランドだが、当初は同社の高級鉛筆「モノ」1ダースのおまけとして製造されたもの。あまりにも求める声が多く、商品化に至ったのだという。長らく天然ゴム製の“消えない消しゴム”に悩まされてきた子どもたちは、プラスチック消しゴムの誕生に大喜びしたことだろう。

消しゴムの二度目の転換期は、2003年の「カドケシ」(コクヨ)のヒットにより、各社の動きが活発になったこと。角だらけの「カドケシ」は、「角は消しやすい」といった消費者の思いを形にしたもの。プラスチック消しゴムの誕生以降、消すことより、パッケージデザインに関心を向けてきた各社は、「カドケシ」をきっかけに、再び「消すための工夫」に注力している。

  • 写真:天然ゴム製の消しゴム

    1886年 天然ゴム製の消しゴム

    明治期に消しゴムは子どもたちの必需品に。日本で初めて作られたのは1886年頃で、主な素材は天然ゴムだった。東京にある小さな町工場が製造をスタートさせ、その後シードほか数社が追従。性能は決していいとはいえなかった。写真はシードの復刻版。
  • 写真:トンボ鉛筆「8900」

    1945年 トンボ鉛筆「8900」

    明治文明開化後に大量の鉛筆が輸入され、その後、日本でも製造がスタート。現在ある鉛筆銘柄のなかでも超ロングセラーとなっているのが、1945年に発売された8900だ。
  • 写真:三菱鉛筆「ユニ」

    1958年 三菱鉛筆「ユニ」

    三菱鉛筆のユニは高級鉛筆として発売された。六角形の形は当時も今も変わらない。
  • 写真:サンスター文具「アーム筆入」

    1965年 サンスター文具「アーム筆入」

    “ポリカーボネート”という強度の高い素材を使い、筆箱の一大ブームを築いた筆箱。実際にCMでアーム筆入を象に踏ませ、「象が踏んでも壊れない」と強度をアピール。2段重ねると鉛筆が8本入り、価格は300円。当時は持っていない人を探す方が大変だった。
  • 写真:シード「レーダー」

    1968年 シード「レーダー」

    天然ゴム製の消しゴム製造もしていたシードは、1950年代に塩化ビニールを用いた消しゴムの開発に成功。商品開発を重ね、世界に先駆けてプラスチック消しゴムの生産を開始した。その主力ブランドがこのレーダー。以降、プラスチック消しゴムが主流になる。
  • 写真:マグネット式・多機能筆箱

    1975年 マグネット式・多機能筆箱

    子どもたちがわれ先に、と新しいものを買い求めたのが、収納スペースが次々と出現する多面式に代表される多機能筆箱。片開きや両開きのマグネット式から始まり、次第にエスカレートしていった。数個のボタンが付き、タッチすると開閉する作りは、まるでロボット。

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