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時代をつくった業界イノベーション物語

広告や情報を提供してきたアナログの看板や案内版が、モニターなどの電子的な表示機器を使ったデジタルサイネージへと置き換えられている。
販売促進、エンターテインメントなど、さらなる拡大が期待されるサイネージの変遷を追った。

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  • 時代をつくった業界“イノベーション”物語
  • 2017.09.01

[Vol.6] サイネージ

最もなじみのある屋外広告、看板は古くからあったとされるが、絵が主体の絵看板広告は1899年に登場。三越(当時の三井呉服店)が、新橋の名妓(めいぎ)小ふみをモデルにし日本画家の島崎柳塢(りゅうう)氏に描かせたもので、東京新橋駅待合室に掲げられた。

屋外広告の主流として1950年代からほうろう製の看板が普及していくものの、70年代を境に徐々に姿を消していく。それに代わる形でデジタル版の屋外広告が80年に誕生する。新宿の駅前ビルの壁面に設置された超大型映像モニター「アルタビジョン(当時、ビデオサイン)」である。モニターを使っての情報発信は、デジタルサイネージの先駆けといえるだろう。モノクロではあったが、迫力あるCMやテレビ番組が大画面に映し出され、観光名所にもなった。

90年代には交通機関の広告にもモニターが用いられるようになる。JR東日本がテレビ広告をスタートさせたのは91年のこと。山手線車両11両のうち1両に9インチの液晶テレビ24台を設置し、ニュースや天気予報、JR情報などを文字放送で伝えつつ、合間に30秒のCMを流した。

2000年に入ると、デジタルサイネージは本格的な広告媒体として始動する。起爆剤となったのが、02年にJR東日本が山手線の新型車両に導入した「トレインチャンネル」だ。車内ドア上部右側に運行情報を、左側に「トレインチャンネル」と名付けたCM・天気予報などを伝える画面を設置。CMが人の視界に自然に入り込むよう、乗客が最も知りたい運行情報の隣に並べたのだ。狙い通り2面モニターは大ヒットし、広告収入は右肩上がりに。今や首都圏各線が類似のシステムを導入している。

JR東日本のグループ会社であるジェイアール東日本企画は、駅構内でも液晶薄型モニターを使った新規広告媒体「ステーションチャンネル」を開発。45または65インチの大型モニターを天井からつるし、動画・静止画のコンテンツを高画質で表示した。その後も、混雑する駅構内で視認性を高めるための試行錯誤を続けた。

JR東日本では08年に駅ナカの広告媒体「J・ADビジョン」も開発。東京駅構内の柱に液晶モニターを埋め込んだ日本初の"縦型デジタルサイネージ"の採用だ。常に人が移動している駅構内では広告への接触時間が短い。ここでいかにサイネージ効果を生むか。こうした課題を、柱という複数面を活用して同時放映することで克服。この成功が、品川駅の44面、名古屋駅の100面と、多面化への動きにつながった。

  • 写真:絵看板 (所蔵:(株)三越伊勢丹)

    1899年
    絵看板

    日本初といわれる美人画絵看板広告は、三越(当時の三井呉服店)が制作。「呉服屋の看板には美人の正装した図案が必要」との発想から、新橋の名妓に自社の衣装を着せ、等身大サイズで日本画家の島崎柳塢氏に描かせた。
  • 写真:「アルタビジョン」

    1980年
    「アルタビジョン」

    大型街頭ビジョンの草分けとして新宿駅東口の前に設置、当初はモノクロ放送。リニューアルを重ね、2014年には高解像度フルハイビジョンスクリーンを採用した。テレビ番組やCM制作を行うスタジオアルタが運営。
  • 写真:JR車内テレビ

    1991年
    JR車内テレビ

    トレインチャンネルの前身がこの車内テレビ(テレビ広告)。1両のみの導入だったが、アナログでは伝えることができない最新の情報を文字放送で伝えつつ、合間にCMを流した。
  • 写真:「トレインチャンネル」

    2002年
    「トレインチャンネル」

    山手線の新型車両導入に合わせ、車内ドア上部に広告用の映像モニターを設置。右側に運行情報を置き、乗客の視線を自然にドア上部へと誘導、広告媒体としての価値を高めることに成功した(写真は2015年撮影)。
  • 写真:「ステーションチャンネル」

    2006年
    「ステーションチャンネル」

    新宿駅と渋谷駅に計20台導入された大型液晶モニター。駅の改札近くなど、目立つ場所に45または65インチのモニターを天井からつるし、動画・静止画などのコンテンツを高画質で表示した。
  • 写真:「J・ADビジョン」

    2008年
    「J・ADビジョン」

    大型液晶モニターを用いた駅構内の広告媒体。2008年に東京駅で試行が始まり、縦型デジタルサイネージに注目が集まった。70インチ大画面が44面連なる品川駅自由通路(写真は2014年撮影)は代表格。
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    新たなテクノロジーと共に
    進化を続けるデジタルサイネージ

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