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時代をつくった業界イノベーション物語

気象観測による観測データと、スーパーコンピューターを用いた数値予報によって導き出されている天気予報。最大の役割は国民の生命と財産を守ることだ。
気象観測と予報はどう進化し、精度を上げてきたのだろうか。

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  • 2017.12.01

[Vol.7] 天気予報

ビッグデータと組み合わせ新たな価値ある情報へ

1993年には気象業務法が改正、気象庁以外の民間事業者でも広く予報業務を行えるようになった。これに伴い気象予報士制度が導入され、気象庁発表の観測データや数値予報を基に、気象予報士自ら天気を予測し、メディアへ提供することが可能に。さらに一般家庭にインターネットが浸透すると、天気予報の多様化も進む。SNSを通して情報共有できる現代では、一般の人も地域の天気予報を語り合うようになった。

2001年には数値予報の精度を上げる「4次元変分法」が開発された。現在運用中のひまわり8号、9号は10分ごとのフルディスク観測が可能になり、来年は新たなコンピューターも導入される予定だ。このように日進月歩で向上する天気予報と共に期待されるのが、気象情報を活用したソリューションだ。ビッグデータと組み合わせれば、あらゆる分野での展開が見込める。

画像:天気予報を利用したソリューション例

出典:日本気象協会「数値予報と気象ビジネス」(2017年)

例えば、各地の気象レーダー解析や降雨予測などから河川の水位の変化を割り出し、ダムや堰(せき)の洪水調節に一役買えば、一歩進んだ防災になる。また、降雪予測とプローブデータ(GPSを搭載した自動車から得られる移動軌跡情報)を融合させて交通障害が起きそうな場所を特定し、迂回できるルートをドライバーに告知すれば、安全確保や社会インフラ維持にも貢献できる。

物流分野では、気象予測と生産者、消費者それぞれの需給情報を統合・活用することで、より高度な食品の需要予測も可能になる。食品ロスや返品が減少し、大幅な省エネにもつながるはずだ(上図)。

防災目的で始まった天気予報は、予報精度が上がるとともに、新たな価値ある情報として人々の生活に活用されていく。

  • 写真:地域気象観測システム(アメダス)

    1974年
    地域気象観測システム(アメダス)

    雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく監視する。現在は降水量を観測する観測所が全国に約1300カ所。そのうち約840カ所では、降水量、風向・風速、気温、日照時間の四要素を観測。加えて積雪を観測している所もある。
  • 写真: 静止気象衛星(ひまわり)

    1978年
    静止気象衛星(ひまわり)

    赤道上空約3万5800㎞で、地球の自転周期と同速度で周回する。1978年に運用を開始した初号機は円筒型をしたGMSと呼ばれるシリーズ。可視光線と赤外線を観測するためのセンサーをそれぞれ1種類ずつ搭載。3時間ごと、1日14回のフルディスク観測を実施した。
  • 写真:ひまわり8号、9号

    2015年
    ひまわり8号、9号

    2015年に観測を開始したひまわり8号、2017年に待機運用が始まったひまわり9号は、飛躍的に観測機能が向上。波長帯数は16に増え、高解像度のカラー画像も取得できるようになった。また、フルディスクの観測間隔を10分ごとに短縮した。

※1974年のイメージ:気象庁提供

取材協力 : 気象庁

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