EF70-200mm F4L IS II USM /
EF70-200mm F2.8L IS III USM 特長紹介

EF70-200mm F2.8L III IS USM / F4L II USM

F4LとF2.8L。それぞれの進化と展望。

待望のリニューアルとなった
EF70-200mm F4L IS II USMと、EF70-200mm F2.8L IS III USM。
開発に至るまでの経緯や裏話、そしてF4LとF2.8Lの
各シリーズに対する思いを6人の担当者が語ります。

F4L IS II F4Lシリーズ独自のスペックを追求し、機動力を大幅に高めたEF70-200mm F4L IS II USM。

●F4Lシリーズ誕生に込めた思い

家塚(商品企画):F2.8Lズームシリーズがプロから非常に高く受け入れられ、この画質を維持したまま今度はもっとコンパクトなF4のLズームシリーズをつくりたいと考えたのが、開発のきっかけです。位置づけはプロのセカンドレンズ。一言で言えば機動力の高いシステムをつくりたかったのです。径が小さくなることで価格を抑えることもでき、より幅広いハイエンドユーザーに向けた商品展開ができました。

遠藤(光学設計):F2.8Lズームシリーズの弟分ですが、光学性能はまったく妥協していません。実際、開放同士の比較ではほぼ同じ高画質を実現しています。

家塚:F2.8の明るさは魅力的で人気なのですが、プロの中にはあえてF4を選ばれる方もいらっしゃいます。それはやはり持ち運びしやすくいつでもすばやく取り出し撮影できる機動力にあります。また最近ではカメラの高感度化によりF4ズームレンズの使いやすさもさらに向上しました。F4Lズームの登場により、撮影目的や好みにあわせて機材が選べる、厚みのあるレンズシステムを構築できました。

F4L シリーズの歩み
  • 1985 高画質・小型軽量ズームNew FD80-200mm F4L高性能レンズとして高い評価を得ているLレンズシリーズの一環として開発。高性能かつ小型軽量を実現した。EFレンズのF4Lズーム誕生のヒントとなった。
  • 2003 EOS 10Dと同時期にリリースされたEF17-40mm F4L USMAPS-Cサイズカメラの標準ズームレンズとしての使い勝手を考え、あえて望遠側に焦点距離をのばし、F2.8Lズームシリーズにはないズーム域を提供。
  • 2005 EOS 5Dと同時期に発売されたEF24-105mm F4L IS USM広角24mmからの高倍率ズームを実現。さらにF2.8LズームシリーズにはないISを搭載し、より幅広い撮影シーンに対応した万能ズーム。

●機動力を追求し続け、ISはついに5.0段へ

佐藤(メカ設計):F4Lは、F2.8Lズームに比べF値が大きいため、小径に構成でき、ISを搭載しても大型化することなく構成できました。F2.8Lの高画質を維持するため鏡筒構成とISユニットをどのように配置して成り立たせるかが腕の見せ所でした。

岡田(電気設計):ISは日々進化を続けていて最新のEF70-200mm F4L IS II USMではCIPA基準5.0段のIS性能を達成しました。IS性能が上がるとシャッター速度を遅くすることができますが、その場合低周波の揺れを補正する必要が出てきます。低周波の揺れとはカラダ全体の大きな揺れで、これを補正するためジャイロセンサーから送られてくる低周波の信号をできるだけカットしないよう制御し実現しました。

家塚:F4Lズームには広角から望遠まで4本のISレンズがあります。撮影目的に合わせ機動性の高いシステムを組むことができるのが魅力です。

IS ONIS OFF

●知られざる進化、専用マイコンチップの開発と効果

岡田:2007年ごろから、EFレンズ専用のマイコンチップの搭載をはじめました。それまでは汎用マイコンを使い、外付け部品で専用回路を組んでUSMやISなどを制御していましたが、汎用のものは我々がほしい機能がすべて入っているわけではなく、実装面積や性能面で課題がありました。そこでEFレンズに最適化した専用マイコンの開発に着手したのです。EF70-200mm F4L IS II USMには最新のマイコンチップが搭載され高度な演算処理を実現しています。
専用マイコンにしたことによるメリットは高性能化と集積化です。より高精度な制御を実現するとともに実装面積の縮小によりレンズの小型化に貢献しています。現在ではさらに進化を重ね、より高性能、高機能なものへと進化。2007年以降に発売されたEFレンズにはほぼすべてこれら専用のマイコンチップを搭載し電気性能を進化させています。
たとえば動画撮影時のUSM低速駆動や電磁絞りのなめらかな動作が可能になりました。静止画撮影ではいかに速く被写体にピントを合わせるかが求められていました。絞りの動作も同様です。しかし動画の世界はまったく逆で、フォーカスも絞りもゆっくりなめらかに制御する必要がありました。

佐藤:動画撮影を考慮しフォーカスを低速で動かし続けるという動作はUSMにとって難しく今までの延長線上ではない新たな制御手法が必要でした。USMの外観は同じですが動かし方は当初よりかなり進化しています。

岡田 【電気設計】

F2.8L IS III F2.8Lのスペックは、カタログにはうたわれないレベルで日々進化してきた。

● プロの現場に必要な、高い耐久性・堅牢性のために

家塚:デジタル時代になり、大きく変化したことの一つは撮影枚数です。特に新聞、報道関係の方の撮影枚数は飛躍的に伸び、一段と厳しいレベルの耐久性や堅牢性が求められるようになったのです。通常の使い方では不具合はほとんど発生しないのですが、報道写真の分野では、激しい衝突も避けられない、カメラやレンズにとっては非常に苛酷な環境で使われています。我々はプロの世界でのNo.1システムを目指してきましたので、メカ構造を一から見直し、耐久性、堅牢性の向上に取り組みました。

佐藤:頻繁に回されるズームリングは内部の機構とメカ的に連動しています。従ってデジタル時代になって快適な操作感と信頼性を両立させる必要があり、2000年代中頃からリンク機構部にベアリングを採用し、なめらかな動作になるように進化させてきました。また、内部が複雑な機構になれば、その分、快適な操作から離れていくので、光学設計段階から操作性を考慮した検討も行い、日々トライ&エラーの繰り返しでした。防塵防滴構造については、ただ密閉度を上げるだけでは操作感が重くなってしまうため、空気の通り道を考え、防滴性能との両立を図りつつ外観に影響させないようにすることが求められました。

家塚 【商品企画】

家塚:耐久性を大幅に向上させた結果、プロの満足度も向上しました。撮り直しのきかない現場で正常に作動する目に見えないスペックこそ、プロが求めている本当のスペックなのです。

佐藤:一例として70-200mmの望遠系はスポーツ撮影に使われることが多く、一瞬を切り取る撮影ができないというトラブルは絶対にあってはなりません。2010年にあわせて発売したEF70-200mm F2.8L IS II USM以降は、耐久性や堅牢性を大幅に向上させました。

佐藤 【メカ設計】

● 画質のニーズに応えたIII型と、光学系の日々の進化

遠藤:デジタルになってからは周辺画質の向上と倍率色収差をいかに補正するかも大きなテーマでした。中でも非球面レンズの技術は欠かすことはできません。キヤノンは研削非球面、レプリカ、ガラスモールド(GMo)など数々の非球面レンズ設計・製造技術があり、それぞれ適材適所で使い分けています。 EF16-35mm F2.8L III USMでは大口径レンズの両面非球面化に成功し、収差をさらに改善しました。

奥島(生産技術):キヤノンの強みは、特に高い精度が求められる大口径ガラスモールド非球面レンズを量産できる技術力です。EF16-35mm F2.8L III USMにはΦ62.5mmという極端に大きな非球面レンズを採用しています。これを量産するため、同じくキヤノンが手掛ける、カメラ用レンズよりもはるかに高精度が求められる半導体用露光装置の研磨技術や計測技術をコンシューマー向けに応用し、金型性能における形状の高精度化を進めています。研削非球面でもこの技術を応用し、従来比約2.5倍もの要求精度を達成しています。これにより点光源のボケもより美しくなりました。

家塚:望遠レンズでは特に色収差が問題となるので、UDレンズなど低分散ガラスを採用し収差を補正しています。EF70-200mm F2.8L IS II USMからは蛍石を採用し、ユーザーからも良い評価を頂いています。EF70-200mm F2.8L IS III USMにおいては、フレア改善のご要望に応え最新のコーティング技術ASCを採用し製品の完成度を高めました。

遠藤 【光学設計】 奥島 【生産技術】
<非球面レンズ><高精度GMo非球面金型>

仲光 【レンズ加工】遠藤:実はカタログには特にうたっていませんが、色収差や像面湾曲、周辺収差を抑えるハイインデックス(高屈折率)ガラスといった新硝材も採用しています。ここ数年はいろいろな種類のガラスが採用できるようになりました。望遠レンズは一見すると光学系に大きな変化は見られませんが、光学設計者からすれば当時は夢のガラスだと思っていたものも使用できるようになり、レンズ設計の幅はどんどん広がっています。

仲光(レンズ加工):UDレンズは扱いが非常に難しいデリケートなレンズです。キヤノンでは長い期間研究を重ねた結果、UDレンズを量産できる自動化技術を10年ほど前から確立し、安定した品質で供給することが可能になりました。また、高精度加工が可能になったため、前述のハイインデックスガラスを採用できるようになりました。

シリーズ 展望 F4Lシリーズと、F2.8Lシリーズ、今後の発展。

家塚:F2.8LズームシリーズとF4Lズームシリーズは、EOS-1シリーズやEOS 5シリーズなど、プロが使うカメラとともに進化してきました。私たちは常にプロにとって理想のレンズを追求してきました。それは今後も続きます。私たちは、描写性能、優れた操作性、耐久性、そして堅牢性について、プロの満足を得られるものだけを「L」の称号を持つズームとして開発してきました。そして常によりよいレンズを生み出すために、現在も設計技術と生産技術を向上させる挑戦は続いています。レンズ開発関係者が新しい挑戦を続ける原動力は「プロにとって最高のレンズをつくりたい」という気持ちにあります。その時代、これからのプロが満足するために、徹底的な性能と品質を追求しています。映像を取り巻く環境が変化しても、常に新しい映像表現や映像の価値を追求するプロがいる限り、私たちはその時代のEOSシステムの基幹となるプロ用のレンズシステムを進化させていきます。プロ用Lズームシステムの将来にご期待ください。

開発担当者プロフィール

  • 【商品企画】家塚賢吾 イメージコミュニケーション事業本部ICB光学事業部課長
  • 【光学設計】遠藤宏志 イメージコミュニケーション事業本部ICB光学開発センター主幹研究員
  • 【メカ設計】佐藤茂樹 イメージコミュニケーション事業本部ICB光学開発センター室長
  • 【電気設計】岡田浩司 イメージコミュニケーション事業本部ICB光学開発センター主任研究員
  • 【レンズ加工】仲光久和 イメージコミュニケーション 事業本部宇都宮工場主幹
  • 【生産技術】奥島賢一 イメージコミュニケーション 事業本部宇都宮工場課長代理
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