EF85mm F1.4L IS USM 特長紹介

85/IS 高い表現力と強力な手ブレ補正。かつてない85mm、誕生。2017年11月30日発売予定 EF85mm F1.4L IS USM
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開発者インタビュー

最新の技術を惜しみなく投入した自信作、EF85mm F1.4L IS USMの開発に至った経緯とは。
商品企画、光学設計、メカ設計。それぞれの立場から開発担当者が語ります。

焦点距離85mmの4機種目として
「L」にふさわしいIS搭載レンズ

山口(商品企画担当):85mmレンズはポートレート撮影に人気の焦点距離ですが、従来のラインアップについてEF85mm F1.2L II USM だと価格的にも手が出しにくいユーザーが多い一方で、EF85mm F1.8 USMだともっと大きいボケが欲しいというユーザーの声を多く頂いておりました。
また、企画するにあたって本レンズを使用する機会が多そうなウェディングフォトグラファーを含めたプロのフォトグラファーへのヒアリングをさせて頂き、ご意見を集めました。EF85mm F1.2L II USMは、大口径ならではの表現やボケ味について良い評価を頂いている一方で、レンズが重いため長時間の使用で疲れやすいこと、AF速度に不満があること、大口径単焦点レンズでもISが入ると安心して撮影出来ることが分かりました。
これらを踏まえ、F1.4という大口径と、手持ち撮影に有用な手ブレ補正機能、またLレンズにふさわしいポートレートに満足のいく高画質を兼ね備えた、手持ち撮影のユーザーにとってバランスの取れた仕様のEF85mm F1.4L IS USMへの期待に手ごたえを感じラインアップへの追加を決定しました。

長時間の手持ち撮影でも気兼ねなく撮影でき、なおかつ取り回しがしやすいように「レンズ質量1kg切り」「製品外径の小径化」の実現も合わせて商品化の目標としました。
ウェディングをはじめとしたポートレートは人生において非常に大事な瞬間を切り取るものであり、一生手元に残るものです。ウェディングフォトグラファーはもちろんのこと、様々なユーザーに製品の使い勝手の良さを実感して頂きながら、大事な瞬間、思い出を安心して美しく残せる商品づくりを目指しました。

※ EF85mm F1.2L USM、EF85mm F1.8 USM、EF85mm F1.2L II USMに続き4本目

「L」にふさわしい開放からの高解像と、
周辺の美しいボケ味の両立

岩本(光学設計担当):すでにキヤノンには85mmのフラッグシップとして06年に発売されたEF85mm F1.2L II USMがあります。ふんわりとしたボケ味のあるレンズとして定評がありますが、今回のEF85mm F1.4L IS USMの光学設計上の狙いとしては、感覚的な表現となりますが今どきのレンズらしいスッキリとした描写を意識しました。画面中心については、大口径単焦点Lレンズにふさわしいヌケの良い優れた解像力、画面周辺部については被写体を中心に構図することが多いことを想定した美しいボケ味を意識してバランスを取りました。
そのような描写性能を、現実的なサイズや大きさ、コストを考慮しながら実現すべく開発を進めていきました。

キヤノン初、85mm F1.4
IS搭載レンズ開発への挑戦

奥田(メカ設計担当):商品企画部門からの開発要望として本商品が上がったとき、我々開発部門は設計上の高い難易度に戸惑いました。大口径レンズでIS搭載となるレンズでは、大きさ、質量を決める重要な要素はフォーカス、IS群の配置です。Fナンバーの明るいレンズはガラス径が大きくなる特長があります。ISを搭載するには当然光学系の一部であるIS群を動かし手ブレを補正しなければなりませんが、そのIS群がどうしても重くなってしまいます。そうなるとその部分を駆動させる推力が必要になり大きく重くなってしまうため、商品企画部門の要望に沿って実用的な大きさと商品力のある価格でIS付の85mm F1.4レンズを開発することは難しいというのが開発部門としての最初の印象でした。
ですが、光学担当者と検討をすすめるうちに光学配置の工夫や新硝材の採用、メカ部品の0.1ミリ単位での小型化の積み重ねなど、先端技術を結集することで実現できる可能性がうっすら見えましたので、より細かなところまで詰めていくことに決めました。

大きさ、重さの制限の中で
豊富な硝材の選択肢を十分に活用した収差補正

図1 光学構成図

岩本:はじめにお話ししたように、大口径中望遠レンズを構成するレンズユニットはすべて一定以上の径が必要になります。大きく、重いレンズを制御するISユニットの径が大きくなり、製品外径が大きくなるため、大口径レンズにISを搭載する上で補正光学系の径の小型化と軽量化が設計の最も重要なポイントとなります。一般的に前玉側のレンズ径が後玉側のレンズ径より大きくなる傾向にあり、また、絞り近傍でレンズの径が最も小さくなります。
本レンズも補正光学系の小型化と軽量化のために補正光学系を含むISユニットを絞り近傍のマウント側に配置しました。(図1)

ただそれでもある程度の重さは避けられず、本レンズの補正光学系は超望遠レンズEF400mm F2.8L IS II USMに搭載されているものに近い大きさ・質量があります。(図2)

図2 ISユニットおよび補正光学系の比較 (左からEF35mm F2 IS USM, EF100mm F2.8L マクロ IS USM,EF85mm F1.4L IS USM, EF400mm F2.8L IS II USM)

EF85mm F1.4L IS USMで最も重要となってくるのは、軸上色収差および球面収差の補正です。また、非常に深度が浅いため、像面湾曲の補正も高画質の実現のために必要な要素となります。これらの収差補正には高屈折率ガラスや異常分散特性のガラスが有効となります。
EF85mm F1.2L II USM開発時(発売は06年3月)には存在しなかった硝材を、本レンズの硝材の半数以上に採用することで、IS機能を搭載しつつ、小型化と高画質化を両立させることができました。軸上色収差の補正にはUDレンズのように異常分散性を持つガラスを絞りの前方や絞り近傍に配置することが効果的です。また、像面特性の改善のためには正レンズに屈折率の高いガラスを使用することが欠かせません。本レンズではEF85mm F1.2 L II USM開発時には無かった高屈折率と異常分散性を両立する特性を持ったガラスを適切に配置することで軸上色収差や像面特性を良好に補正しています。
蛍石レンズ、UDレンズのような特殊ガラスだけではなく、当時存在しない新硝材と非球面レンズを効果的に配置することで、レンズの小型化を図りつつ各収差の補正を実現しました。後発のレンズほど光学系に使用している硝材の選択肢が広くなり、効果的に配置させることで高画質化や小型化を実現しています。

EFマウントの大きさを最大限活かした光学配置

岩本:光学設計の特性上、絞り(EMDユニット)が光学系の後端(マウント側)から離れた配置にするほど、後端のレンズ径を大きくしなければなりません。一方で前述の通りISユニットもマウント側に配置するため

(前玉側) 絞り-ISユニット-後玉群 (カメラ側)

の並びとなります。絞りがマウント側から比較的離れた配置となるため、後端のレンズ径が大きくなります。元々、大口径レンズのレンズ径は大きい上に、IS搭載でもレンズ径が大きくなる傾向となるため、いかに絞りを後方に配置するかがポイントとなります。光学性能を維持しながら補正光学系、後玉群をできるだけ少ないレンズ枚数で構成することに苦労しました。
結果的にはEFマウントで実現できるぎりぎりのレンズ径になっています。実際の製品を手に取って頂き、マウント側から見るとレンズ径の大きさがわかると思います。EFマウントが大口径であるからこそレイアウトが可能となり、IS搭載を実現できました。

図3 EF85mm F1.4L IS USM光学構成図

図4 EF85mm F1.2L II USM光学構成図

ISユニットの配置が決まると、最適なフォーカス群の配置も決まり、レンズ全体の配置が決まっていきます。レンズ全体の小型化のためには、フォーカス群はフォーカス移動量を小さくかつ軽量に、補正光学系も同様に補正移動量を小さくかつ軽量にする必要があります。本レンズでは前玉側から前群、フォーカス群、絞り、補正光学系、後群を配置する新しい光学タイプを採用しました。特にフォーカス群と補正光学系に関しては凸レンズ群とするか凹レンズ群とするかでその光学系の特長が大きく変わります。結果、フォーカス群を凸レンズ群、補正光学系を凹レンズ群とし隣接配置させ、互いに打ち消し合うことで各々の屈折力を適切に設定でき、レンズ全体の小型化と補正光学系の小型化を両立させています。
また、フォーカス群を凸レンズ、凹レンズ、凸レンズの構成とすることで軽量化と高画質化を両立させています。さらに後群に非球面レンズを配置することで、球面収差を補正しながら後群のレンズ枚数を少なくし、絞りをできるだけ後ろに配置できるようにしています。このようにレンズ全体の基本構成や各レンズ群のレンズ構成を工夫することで、何とか目標を達成することができました。
また、IS群を追加したことによりレンズ枚数が増加するため、ゴーストの抑制が技術的な課題となります。本レンズでは後玉側に3枚接合のレンズを採用しています。3枚接合のレンズは、3枚のレンズそれぞれの軸をしっかりと合わせて接合するのが難しいですが、特に後玉側のレンズ面はゴーストが発生し易いことから、空気接触面を減らすために採用を決めました。IS搭載でレンズ枚数は増えていますが、さらに第8レンズにはASCを採用することでゴーストを抑制しました。

徹底した小型化への挑戦

図5 リングUSM (右がEF85mm F1.4L IS USMに採用したUSM)

奥田:AF駆動を行うモーターであるUSMには径の大きさによっていくつか選択肢があるのですが、長時間の手持ち撮影に耐えうる程度まで外径を小さく抑えるため、EF35mm F2 IS USMやEF85mm F1.8 USMをはじめとした多くのEFレンズに使われている比較的小型のUSMの採用を決定しました。光学系をはじめとした各部品を限られたUSMの径の中に収まるように光学担当者と設計検討を開始しました。
なお、EF85mm F1.2L II USMはEF400mm F2.8L IS II USMなどに使われている径の大きなUSMを採用しています。
前述の通り超望遠レンズ並の大きさと質量をもつ本製品のIS群ですが、
駆動系までを含めたISユニットとして実用的なサイズに設計する必要があります。そのために、手ブレ補正機構には複数のセラミックボールで可動部を支持する極めて摩擦の小さい駆動機構を用いて駆動負荷を低減させました。これにより駆動推力が小さく済むため、ISユニットの小型軽量設計に寄与しています。

図6 ISユニット比較(右図 左からEF35mm F2 IS USM, EF100mm F2.8L マクロ IS USM,EF85mm F1.4L IS USM, EF400mm F2.8L IS II USM)

ISユニットより前玉側にあるフォーカス駆動機構(図7)にも工夫を施しています。大口径レンズですから被写界深度も非常に浅くなり、AFも極めて高い精度が要求されます。フォーカスレンズ群もやはり重く、それを駆動させるモーターや停止させるブレーキ制御など駆動機構全体の耐久性を他のLレンズにも増して向上させる必要があります。本レンズでは耐久性に優れるボールベアリングを駆動機構に採用し負荷を軽減させることで、精度向上を図りつつ描写性能を向上させています。また、ボールベアリングの採用は高速AFにも寄与しています。限られたモーターの力で重いフォーカスレンズ群を動かす必要があるのですが、負荷軽減により動かす力を小さくできるためフォーカスレンズを速く動かすことができます。
リングUSMユニットを構成する機構部品の形状をガラスの外径に沿わせることでスペース効率を最大化し、小型軽量に寄与しています。
一般的な設計で考えれば難易度の高い手ブレ補正機構付き85mm F1.4を商品力のある大きさ・重量で実現するため、メカと光学を合わせ込む検討に多くの時間を費やしてきました。メカ部品の0.1ミリ単位での小型化を積み重ね、実用的な形にまとめてきました。
本レンズは4.0段分の手ブレ補正効果(焦点距離85mm, EOS-1D X Mark II使用時。CIPA規格に準拠)を実現しています。F1.4の大口径でIS搭載を実現したのはキヤノンとして初になります。ぜひとも実用的なサイズでIS搭載を実現したことによる快適な使用感を試して頂きたいです。

信頼性へのこだわり

奥田:軽量設計に向けて工夫を重ねてきましたが、それでも1kg近くあるレンズなので落下などの衝撃が大きくなります。信頼性を高めるために、ダンパー構造を採用しています。実際に製品を触ってもらうとわかりますが、フィルター枠を押し込むと中に引っ込む形状となっています。ダンパー構造はレンズ先端に何かぶつかったとき衝撃を分散させる効果があります。全長固定のレンズは衝撃が分散されにくい特長があります。本レンズは全長固定のレンズであること、大口径であることからダンパー構造の採用を決定しました。すべてのEFレンズに採用しているわけではなく、レンズの構造やシミュレーションを踏まえたうえで必要な製品に採用しています。本レンズの他にはEF24-70mm F4L IS USM、EF11-24mm F4L USM、EF35mm F1.4L II USM、EF24-105mm F4L IS II USMに採用しています。ズームレンズだと若干わかりにくいですが、単焦点レンズだとフィルター枠を押さえてもらうとわかると思います。

最後に

山口:これからの時代、高画素へのニーズが高まっていますが、安心感を持って手持ちで撮影できる非常に使い勝手の良いレンズです。本レンズはポートレートレンズとして、描写性能、手ブレ補正機能、重量とサイズという面においてバランスの取れた優れたレンズに仕上がっており、自信を持ってお勧めします。
ぜひとも今まで感度を上げて撮影せざるを得なかった屋内や夕方の撮影、手持ち撮影の機会の多い屋外撮影、さまざまな環境で長時間撮影しても疲れにくい本レンズをご使用頂いて、今まで出来なかった表現の拡がりを実感頂きたいと思います。

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