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稲越功一この一本

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鍛え抜いてきた、標準レンズの感覚でものを見る目


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EF50mm F1.4 USMは、ここ数年、作品づくりの中心として使っているレンズです。作品づくりのうち、7割ぐらいは標準レンズで撮影していますね。

私のデビュー作は、1971年に出版した作品集「Maybe, maybe」です。当時キヤノンのフラッグシップモデルだったF-1に、50mmの標準レンズを使って撮りました。振り返ると30年以上にわたって、キヤノンの標準レンズを使い続けています。

50mmには写真家としての強いこだわりがあるんですよ。武士道にたとえると、抜いた刀を真正面から打ち込む、そんな切れ味にも似ているかもしれません。いっさいごまかしの利かない、正攻法のレンズです。標準レンズでものを見る目を、デビュー当時からずっと積み重ね、鍛え上げてきました。それはまるで「写経」するような感じでね。
でもその経験は、自分のなかに深く刻まれた力になっていると思います。その訓練の時間が、私の写真を深くしてくれている。そんなふうに思うことがあります。扱うのは簡単ではないけれど、写真の基本がそこにあると言っていい。しかも、じつに奥が深いレンズなんです。



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