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四季がFIVEを呼んでいる。

EOS 5D Mark IVが描く、日本の四季。米美知子氏が撮り下ろした季節の作品を撮影に対する思いとともにご紹介します。

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米 美知子

その桜に、逢いに行きたかったんです。

 2月初頭、米美知子は沖縄にいた。春を撮るためだ。実はこの前日、青森県の八甲田山で樹氷を撮っていたという。
 「日本は狭いけど、南北に長いから同じ日でも、樹氷が見頃な場所と、桜が見頃な場所があります。同時期に真冬と春を撮れるんだから、日本って面白いですよね」。
 沖縄とはいえ、2月はまだ肌寒い。だが冬の寒さとは違う。冬の凜とした空気感が完全に抜けて、風も空気もやさしく感じる。春、一番撮りたいと思うのは桜。春をもっとも感じることができるからだという。

 「桜って、人間にすごく寄り添ってる木だと思います。桜があるところは人工物が多いし、人の気配もある。わたしはネイチャーを撮っているので、人工物を主体にすることはないけど、人の気配や歴史を感じられるようなものを構図に入れることはあります」。自然と調和していれば、人工物も要素の一つになる。米美知子の作品が多彩なのは、こういう考え方も取り入れているからなのだろう。
 では桜の魅力とは何か。「一言では語れませんが、特に散り際、その時の落ち着いた静かな色合い。とても好きです」。桜は品種にもよるが、多くが咲き始めは色が濃い。そして次第に色が抜けていく。だから満開の頃は、花びらが白い桜が多いという。「一本の桜でも、見る時期によって色がまったく変わるんです。そういうところも、魅力だと思います」。

 また、開花した一本の桜に逢いに行くため、車で何百キロも走ることも少なくない。日本中に咲く桜に対して、いろいろな思いがある。「たとえば、十年ぶりに逢いに行こうって思う桜もあります。遠距離恋愛じゃないけど、どんなに遠くても逢いたいって気持ちにさせてくれますよね」。“撮りに行く”ではなく、“逢いに行く”。これが米美知子の姿勢なのだろう。
 沖縄を離れ、次は奄美大島に上陸。意外にも初めて訪れるという。「逢いに行きたかったんです、ずーっと。奄美大島の桜に」。それが理由だ。事前に桜が咲く場所を調べておき、想像と期待を膨らませておいた。「どんな桜が、どんな風に咲いているんだろうって」。期待は裏切られなかった。桜と太陽と海が一緒に見える。キラキラと輝く海。潮風を受ける桜。「良い意味で、このミスマッチ感が素敵でした」。

 早朝、島の風は心地よかった。峠の沿道に咲き誇る寒緋桜は、まさに満開を迎えようとしている。しかし空は曇天。朝日は遮られている。カーブを昇った先に「桜」が見えるという光景がひたすら続く。そんな時、米美知子は“別”の方向を見ている。画にならないと瞬時に判断し、別の風景を探しているのだ。普通だったら気づかないようなところ。つまり写真になるなんて想像もできない。そんな光景を作品にできるからこそ、“米美知子”なのだろう。そして、自然に愛される写真家は、初めて訪れる土地でもその本領を発揮する。
 「ほんと、ワンチャンスでしたよね、あれは。雲が割れて、その隙間から太陽が差し込んだんです。花びらは、ぱーっと輝きだして、ビビッドな花の色が艶やかに浮かび上がった時は、今だ!って」。空も薄ピンク色に染まり、それはまさに自然がくれた、シャッターチャンスだった。「一瞬だったけど『ここにいるよ』って、この桜は、ちゃんと呼び止めてくれたんだと思います」。米美知子いわく、時々、振り向きたくなる瞬間があるという。文字通り、自然に呼ばれているのだろうか。

 三脚を立ててから、何枚かシャッターを切る。興味深いのは、その場所で上下左右、カメラを動かすことだ。わずかに、ずらしている。「1センチ角度や位置が違ったら、まるっきりフレーミングが変わります。この位置なら、どこが切れて、どこが入るのか。ファインダーを見ながらものすごく考えます。見てる人には、一瞬のことかも知れませんけど(笑)」。たしかに時間をかけているようには見えない。
 「桜の花は短命で、どこか儚い。でも、それが美しいんです。だから、限られた時間に合わせて、わたしが逢いに行く」。今年も、米美知子の春が始まった。

米 美知子

独学で写真をはじめ、アマチュア時代には全国規模コンテストで数々の賞を受賞。
日本の素晴らしい自然と色彩美を独創的な視点で表現。中でも表情豊かな森に魅せられ、
北海道から西表島まで日本の森を撮り歩く。
「夢のある表情豊かな作品」をテーマに精力的に撮り続けている。

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