loading

四季がFIVEを呼んでいる。

EOS 5D Mark IVが描く、日本の四季。米美知子氏が撮り下ろした季節の作品を撮影に対する思いとともにご紹介します。

  • 春
  • NEW 07.20 夏
  • 秋
  • 冬

米 美知子

素敵な光景に出会って 撮らずに帰ったら自然に失礼。

  吐く息さえ凍てつきそうな、厳寒の海岸。湿気をはらんだ北西の風が、まつげに霜をもたらす。暁暗の空は、新しい朝を迎えようとしていた。
 太陽が昇るのをじっと待つ、というのは米美知子のスタイルではない。同じ位置に留まり続けないのだ。「太陽が昇りきるまでに数を撮りたいから、積極的に動いて位置を変えるんです。同じ位置で同じ被写体を狙っていたら、ぜんぶ類似になってしまうから。わたしの動きって早いでしょう? いい条件ほど、すぐに情景が変わるから、どんどん動かないと。頭の中で、どう撮ればいちばん良くなるか。どうしたら、あのまま写せるだろうって考えています。光の変化も早いから、あっち行ったりこっち行ったり、また戻ったり。一期一会って言葉でいうのは簡単ですが、その瞬間の光景にはもう出会えませんからね」。

 冬の魅力は、凜とした空気感だという。「雪が積もって雪原になれば、余計なものを覆い被してくれる。そして他の季節に比べて朝陽や夕陽の色がきれい。凜と澄んだ空気のおかげです」。寒いからこそ撮れる情景が好き、と白い息を吐く。そんな風景を見てしまったら、どんなに寒くつらくても、険しい場所でも、また来たくなる。その思いは、彼女の撮影姿勢を見れば、なるほど、理解できる。
 別の日の早朝、目的の撮影地に向かう途中で、車を止めた。樹枝に付着する霧氷が視界に入ったのだ。川霧が霧氷を作り、昇りたての陽光が光芒となり、それらを輝かせていた。「ただ霧氷がついているだけでは、面白くない。霧が出ていてもまだ足りない。ここには、光芒が出ていました。白い雪、樹枝や草の霧氷、川霧、光芒。ベストな条件だと直感しました。川のそばまで行ってみると、やっぱり。もうファンタジーの世界。ボルテージが上がりましたね。ここの撮影は、すっごく楽しかった」。移動中もその興奮は冷めることはなかった。

 相手は自然。思い通りにはいかない。だから、自然が見せてくれるままを写真にすればいいと、米美知子はいう。どんよりした天気だったら、どんよりを撮る。雪が降れば雪。晴れていれば、晴れた光景。そのときの情景を、そのまま撮って帰る。「晴天は気持ちよく撮影できるけど、雪が降ってるときは心が落ち着きます。晴れも雪もどっちも好きですね」。
 次の動作が早い撮影スタイルは、レンズワークにも現れているように思えた。何よりレンズ交換の頻度が高い。瞬時に構図が浮かぶのか、次に使うレンズのセレクトにも迷いはない。「一眼レフの楽しみって、レンズ交換だと思います。だからいつも何本かレンズを持って、今は広角だな、ここは望遠だなって考えながら使い分けるんです。自分のイメージにドンピシャはまったときはうれしい」。
 風景写真といえば、広角レンズをイメージする人も多いかもしれない。しかし米美知子が携行するレンズは、超広角から望遠、時には超望遠にまで及ぶ。「望遠レンズって、目で見えている一部だけを切りとれるから、いいところだけ画にできるんです。あとは圧縮効果を利用して、背景の色を意識した画づくりもできます」。もちろん広角レンズも重要だ。「基本はワイドが好きですよ。いちばん好きな焦点距離は、16ミリから35ミリ。でも自然の中でもワイドが使えるシーンって実は限られているんです。わたしがワイドを使っているときは、ものすごくいい条件に巡り会えたということ。そこで上手に撮ってあげると、すごく奥行きが出るし、物語性が出ます。風が吹けば風の音。川があれば、せせらぐ音まで撮りたい。音が聞こえる写真をいつも意識しているから。そういう写真を撮れるのは、やっぱりワイドレンズですよね」。  逆光で撮るときは、ゴーストやフレアが出ないよう工夫する。太陽を木で隠したり、霧が濃くなって光が弱まったときを狙ったり、できるだけ自然の要素を使う。またシルエットは好まない。雪はレフ板の代わりにもなってくれるから、逆光でもシルエットになりづらいという。当然白トビには細心の注意を払う。白トビするとわかっているところは、構図に入れない。もしくは葉や木で隠す。それらすべてのことを考えながら構図を探す。それが早い。

 米美知子の撮影現場を見ていると、風景撮影は、一瞬を争う真剣勝負であることに気づかされる。そして、何よりも自然が好きなのだ。「素敵な光景に出会って撮らずに帰ったら、自然に失礼ですよ。だって、わたしのために自然が用意してくれた奇跡のステージだから。わたしには撮る責任があると思うんです。そして、この自然の素晴らしさを、多くの人に伝えたい。それはきっと、わたしの仕事じゃないかなって」。
 自然をこよなく愛しているからこそ、自然からも愛される。米美知子は、そういう写真家だ。

米 美知子

独学で写真をはじめ、アマチュア時代には全国規模コンテストで数々の賞を受賞。
日本の素晴らしい自然と色彩美を独創的な視点で表現。中でも表情豊かな森に魅せられ、
北海道から西表島まで日本の森を撮り歩く。
「夢のある表情豊かな作品」をテーマに精力的に撮り続けている。

PAGE TOP