津田 直のふるさと Vol.04 「海上の道を辿って」奄美大島・沖永良部島

12年間暮らした関東から九州に居を移して1年が過ぎようとしている。
ここはかつて僕の祖先が暮らしていた地域ということもあり、いつか暮らしてみたいと思っていた場所のひとつだった。
思いきった引越しがきっかけとなり、僕の中では今までになく南方の地図は広がりを見せはじめている。

そして今春、「ふるさと」への撮影を機に、150年も遡ることになるが、
祖先がひととき暮らしていたという奄美大島と沖永良部島を訪ねることにした。
日本の基層文化を今に受け継ぎ、古から「海上の道」と呼称された琉球弧の島々へ。
誰かが僕の名を呼んでいる気がして、旅立った。

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Vol.04 津田 直

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奄美大島は学生の頃(15年程前)に来て以来となる。その時の思い出と言えば、マングローブ原生林で迷ったことや、帰りのバスに乗り遅れたことだろう。だが、お陰で島の人々に道を教えてもらうことができた。もうすっかり今では忘れてしまったけれど。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/1600
Av(絞り数値):
4.5
ISO感度:
160
GPS:
緯度: 28° 27‘ 49.77“ N
経度: 129° 43' 17.672" E

はじめに先祖ゆかりの地を訪ねた。龍郷という集落の中で探していた墓地へ。島に来る前から僕の中にはずっと墓参したかったひとりの女性があったが、見つけた時には思わずひざの力が抜けてしまった。その人こそ、僕の先祖の爺さんが島に渡り、妻としてめとった人だった。手を合わせ、その名を宙で読むと母の名と同じだと気がついた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/1250
Av(絞り数値):
4.0
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 27' 5.5" N
経度: 129° 36' 16.56" E

先祖が暮らしたという家。歳月を経て、建て替わってはいたが、今も変わらず残っている踏石や礎石、手洗い場、井戸、使い込まれた柱の窪みに在りし日々を想う。庭に緑が茂り、風を良く通す奄美の家に玄関はなかったが、縁側はさぞ賑やかだったことだろう。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/200
Av(絞り数値):
6.3
ISO感度:
800
GPS:
緯度: 28° 27‘ 3.73“ N
経度: 129° 36' 14.74" E

それ以前に祖先が暮らし、家が建っていた土地にも行ってみた。当時築かれた珊瑚の石垣だけが面影を残し、その向こうは畑になっていて、パパイヤの木が揺れていた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/400
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 26' 42.18" N
経度: 129° 36' 16.28" E

島をうろうろと歩き回った後、お茶を飲みにお店へ立ち寄った。すると地元の食材を生かし、お菓子などを作り販売しているという「グループあいかな」の女性達と出会った。そこには何と、遠い親戚にあたる人がいて驚いた。翌日、職場の工房にお邪魔して撮影させてもらった。机の上には奄美特産のたんかんをふんだんに使った焼き立ての「たんかんケーキ」が並んでいた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/80
Av(絞り数値):
4.0
ISO感度:
640
GPS:
緯度: 28° 24' 13.58" N
経度: 129° 35' 10.58" E

島を訪れた3月はちょうどサトウキビの収穫の時期。今年は台風の影響があり、真っ直ぐ育たなくてねと吉田さん。尋ねると、今ではこうして手刈りで作業する人も島では珍しく、効率の良い機械刈りが主流なのだとか。けれど自分は退職して時間もあり、牛の餌のためにもなるからこうして昔ながらの手法で刈っているんだよと教えてくれた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/100
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 24' 29.4" N
経度: 129° 37' 26.48" E

サトウキビを刈り取ってゆく吉田さんの手もとを見ていると、時々地面へぽとりぽとりと何かが落っこちる。拾って見せてもらうと、それは次世代へと受け継ぐ、サトウキビの芽だった。ここから新たなる命が芽生える。一見、手際よく進んでゆく農作業。けれど、その手が大地にこぼしたものは、愛情の欠片だった。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/125
Av(絞り数値):
8.0
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 24' 29.56" N
経度: 129° 37' 26.26” E

結わえられたサトウキビが美しく並ぶ。まるで奥へと続く、道のようであり、太陽への供物にさえ見えた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/125
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 24' 29.24" N
経度: 129° 37' 26.54" E

吉田さんが牛舎へ案内してくれた。その手には刈ったばかりのサトウキビの青い葉が握られていた。フレッシュな葉っぱのおやつに喜ぶ牛たち。だが、あっという間に平らげてしまった。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/60
Av(絞り数値):
4.0
ISO感度:
1000
GPS:
緯度: 28° 24' 36.71" N
経度: 129° 37' 37.14" E

安木屋場(あんぎゃば)集落の高台から海を臨む。ここはかつて先祖が狩りをしていた山の一角。宿の主人は、今の季節は一日眺めていたらザトウ鯨が見えるよと教えてくれた。沖永良部島は鹿児島から南へ約540km、南西諸島のほぼ中央に位置するため、動植物は南限種と北限種がせめぎあい、多様な自然環境が築かれているようだ。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/320
Av(絞り数値):
8.0
ISO感度:
500
GPS:
緯度: 28° 28' 30.4" N
経度: 129° 36' 54.29" E

安木屋場から山肌一面のソテツ群生地を抜け、尾根へと向かうと今井権現神社が見えてくる。参拝路は急な石階段となっていて、途中に足元だけを残した石像が立っていた。それでもなお、その踏ん張りだけで神域を守ろうとしている気配があった。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/80
Av(絞り数値):
7.1
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 28' 30.81" N
経度: 129° 36' 58.25" E

奄美諸島にはユタ神様と呼ばれている先祖供養や儀礼などの祭祀を司る巫女がいる。今井権現神社にもユタ神様が執り行う祭が継承されており、旧暦の9月9日には豊作、無病息災を祈り盛大に祭が行われる。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/40
Av(絞り数値):
4.0
ISO感度:
800
GPS:
緯度: 28° 28' 29.74" N
経度: 129° 36' 58.25" E

島には沖縄と似て、大自然の神々を崇拝する古き信仰や習俗が数多く残されている。それは普段から旧暦のカレンダーを愛用する人々が多いことにも相通ずるものがあり、時を遡れば人々には太陽や月の満ち欠け、潮の満ち引きと調和しながら暮らしてきた歴史がある。そこには未来への知恵が隠されているかもしない。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/50
Av(絞り数値):
5.6
ISO感度:
800
GPS:
緯度: 28° 28' 30.6" N
経度: 129° 36' 59.24" E

たくさんのガジュマルの樹と出会った。中でも忘れられない樹となったのは海の波が届きそうな場所に生えていたこのガジュマル。そばで働く人と樹の話をしていたら、「いつもこの樹のお陰でみんなの人生が上手くゆくのよ」と不思議な話を聞いた。「そしてね、人が自然と集まってくるの」と。その根はどこまで繋がって生きているのだろう。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/40
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 24' 2.31" N
経度: 129° 39' 16.14" E

奄美で過ごした最後の日、砂浜を歩いた。足元の小石が島に見えてしまった。だったらこの辺りに暮らしたいなと思える場所にフォーカスしてみた。世界は足で歩める場所が無限に広がっているけれど、目で歩める場所もまた果てしなく連なっている。EOS 6Dはボディーがコンパクトだからこそ、すっと世界を覗くことを可能にしてくれた。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/250
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 28° 24' 11.75" N
経度: 129° 38' 46.42" E

沖永良部島へ向かうフェリーで奄美を発ったのは早朝5時過ぎだった。まだ薄明の時間だったが、甲板に上がってみた。離れゆく島影を見つめながら、手持ちでシャッターが切れたのは、新たなる経験となった。僕の目に映ったままを取り留めてくれたのだから。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/400
Av(絞り数値):
5.0
ISO感度:
20000
GPS:
緯度: 28° 25' 54.53" N
経度: 129° 28' 12.56" E

かつて先祖の爺さんもこの海を渡って沖永良部島へ向かった。生きる時代こそ違えども、海上の道で僕らは時空を超えて繋がっていることを願った。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/400
Av(絞り数値):
5.0
ISO感度:
2500
GPS:
緯度: 28° 25‘ 13.5“ N
経度: 129° 30' 5.27" E

隆起珊瑚から成る沖永良部島は、琉球石灰岩に覆われている。照りつける陽光が、一層と透明な海を透かしてゆく。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/250
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 27° 21' 22.94" N
経度: 128° 36' 59.9" E

海の見える畑が好きで、いつも足を止めてしまう。それは僕の遠い記憶と関係しているだろうか。沖永良部島ではちょうどジャガイモの収穫が盛んな頃で、乾いた土の上に赤や青や黄色のカゴが転がって、賑わせていた。太陽の下で働く人々の営みは、清く逞しい。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/125
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 27° 21' 17.67" N
経度: 128° 36' 55.01" E

島北西部には、高さ50メートル程の断崖絶壁となった田皆岬がある。海面に突きだした断崖に立つと、アイルランドやスコットランドを巡り旅していた2年前の光景を思い起こした。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/200
Av(絞り数値):
9.0
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 27° 24' 14.05" N
経度: 128° 32' 16.29" E

ここへはじめてやって来たとは思えなかった。それが「原風景」というものなのか分からないが、まるで育った土地であるかのように身体が馴染んだ。風に乗せるように、シャッターを切った。沈みかけてゆく太陽の光線が海面に反射して跳ね上がり、岩場をシルエットに変えていった。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/250
Av(絞り数値):
16
ISO感度:
160
GPS:
緯度: 27° 24' 31.44" N
経度: 128° 36' 47.65" E

近づくまで全く目に入らなかったが、足元の珊瑚の岩場では新しい草の芽が淡く茂みはじめていた。それは、遠い記憶が目を覚まし、岩陰から顔を覗かせる生き物のように僕には映った。この島をいつか長く旅してみたい。そんな想いが膨らんでいった。

レンズ:
EF24-70mm F4L IS USM
Tv(シャッター速度):
1/200
Av(絞り数値):
10
ISO感度:
640
GPS:
緯度: 27° 24' 29.84" N
経度: 128° 36' 47.06" E

ふるさとをEOS 6Dでとらえて。

「ふるさと」への旅がはじまろうとしていた時、僕は自分が生まれ育った土地を巡るのではなく、もっと記憶の中を辿れないだろうかと想像を膨らませた。つまり、マザーランドへと続く路を探していたのだ。見つかった場所は、琉球弧に浮かぶ島嶼だった。

これまでフイルムカメラに単焦点レンズというシンプルな装備で撮影に挑んできた僕が、多様な機能を備えたデジタルカメラを手に旅立つということ自体がすでに新鮮な空気を放っていた。

EOS 6Dはその後、見事に力を発揮していった。ボディーとのバランスの取れたEF24-70mm F4L IS USMレンズは、軽やかに僕の動きに対応してくれた。又、GPS機能はカメラという本来の役割を超えて、海上でもその移動を捉え続けてくれていた。それは地図上に線を引いてゆくような作業で、EOS 6Dはいつからか僕を運ぶ舟にもなっていった。フルサイズという優れた描写力に加え、限りなく暗い場所での撮影も果たす高感度機能は素晴らしく、夜行性の動物にでもなったような気持ちで写真と出会えた。

津田 直
津田 直
1976年神戸生まれ。大阪芸術大学写真学科研究課程修了。ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている写真家。2001年より国内外で多数の展覧会を中心に活動。2010年、芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)受賞。主な作品集に『漕』(主水書房)、『SMOKE LINE』(赤々舎)、『Storm Last Night』(赤々舎)がある。
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