小林 紀晴のふるさと Vol.11 「「過去は、未来」下諏訪 八島ヶ原湿原 霧ヶ峰

私は長野県の諏訪盆地で生まれ、高校を卒業する18歳までをそこですごしました。
盆地内には諏訪大社の社が四つあり、そのひとつ、下諏訪町の秋宮社には特別な思いがあります。
今回、まずそこを訪ねました。

高校三年間、その鳥居をくぐり山の中腹にある高校に通っていました。
社には七年に一度行われる御柱祭の際、荒々しく木落坂をくだっていった御柱が四本直立しています。
それを久しぶりに見上げました。すると突然、あの頃と何も変わっていないという思いが胸を突き上げました。

私は十七歳に戻ったような気持のまま、盆地を囲む山々の一辺である八島ヶ原湿原、霧ヶ峰方向へと車を走らせました。
知っているはずの地なのに、知らない地を訪れたような錯覚を憶えました。

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Vol.11 小林 紀晴

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諏訪大社・秋宮社。高校三年間、この社を見て過ごした。あの頃、いったい自分は何を考えていたのだろうか。三年生の冬、社に同級生の女の子の姿があった。進学の合格祈願のためだった。彼女の白い息と赤いマフラーのことを急に思い出す。

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EF50mm F1.2L USM
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1/4000
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2.8
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 36° 4' 30.6" N
経度: 138° 5' 27.7" E

秋宮の境内。高校時代と何も変わっていない。下諏訪は温泉の町として知られていて、町内ごとに共同温泉がある。だから、家に風呂がない家も珍しくない。これも温泉。久しぶりに触れてみた。 「アチアチ」あの頃と同じ声を、思わず上げてしまった。冬の冷え込んだ日、もうもうと白い湯煙が上がる。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/180
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10
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 36° 4' 29.5" N
経度: 138° 5' 26.6" E

万治の石仏。高校生の頃、「芸術家・岡村太郎が絶賛したんだよ」と友人の一人がよく口にしていた。半信半疑だった。そのことより岡村太郎がこんな田舎まで来たことに驚いた。かつては、一度も見たことがなかった。いまでは近くに土産物店ができ、遠くから観光客が来ていることに驚く。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/1000
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6.3
ISO感度:
200
GPS:
緯度: 36° 4' 58.9" N
経度: 138° 4' 55.0" E

下諏訪の市街地から八島ヶ原湿原を目指す。天気は快晴から、曇り、雨、そして雪に変わった。眼下を見ると、光るものがあった。諏訪湖だと気がつくまで、少し時間がかかった。

レンズ:
EF35mm F2 IS USM
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1/1250
Av(絞り数値):
6.3
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 36° 7' 42.1" N
経度: 138° 8' 59.4" E

旧御射山社の近く。唐松林に雪が舞う。初雪だと知ったのは、夜、宿についてからのことだった。凍えながら、しばらく枯れ草のあいだを歩く。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/4000
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2.0
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 36° 6' 45.3" N
経度: 138° 10' 19.8" E

歩いていると、突然の巨石に出会った。昼間眼にした、万治の石仏のことを思い出す。あれもまた自然石を石仏にしているからだ。この石も、特別に意味のあるものに見え出す。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/3200
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2.8
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 36° 6' 46.6" N
経度: 138° 10' 20.1" E

初雪が笹の上に積もる。突然、目の前に生まれたコントラストに慌てつつ、シャッターを切る。長い冬の先っぽに、いま自分がいるのだと自覚する。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
Tv(シャッター速度):
1/400
Av(絞り数値):
9.0
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 36° 6' 36.0" N
経度: 138° 10' 38.2" E

宿に着き、窓を開けると視界が開けた。よく見ると街の明かりが見えた。諏訪の街だ。天気は刻々と変わる。雪はやがてやんだ。

レンズ:
EF85mm F1.2L II USM
Tv(シャッター速度):
1/60
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2.5
ISO感度:
400
GPS:
緯度: 36° 6' 7.3" N
経度: 138° 9' 20.3" E

雪がやむと、月が現れた。すでに気温はマイナス。吐く息が白い。それを一瞬止めて、カメラをかまえる。

レンズ:
EF35mm F2 IS USM
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1/30
Av(絞り数値):
3.2
ISO感度:
3200
GPS:
緯度: 36° 7' 9.2" N
経度: 138° 9' 31.4" E

月が街の真上まで来た。その光が街を照らす。果たして、あそこに暮らす人のどれほどが、たったいま月明かりに気がついているのだろうか。ぼんやりと考える。

レンズ:
EF35mm F2 IS USM
Tv(シャッター速度):
1/8
Av(絞り数値):
2.0
ISO感度:
6400
GPS:
緯度: 36° 7' 8.9" N
経度: 138° 8' 48.2" E

翌朝、まだ日が昇らないうちに八島ヶ原湿原に向かった。朝日をじっと待つ。山そのものが発光しているかのように、空が染まる。

レンズ:
EF35mm F2 IS USM
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1/80
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3.5
ISO感度:
1000
GPS:
緯度: 36° 7' 11.1" N
経度: 138° 9' 40.1" E

日の出とともに霧ヶ峰へ移動する。空が広い。樹木がほとんどないからだ。空のグラデーションは下から上へと色を移す。

レンズ:
EF85mm F1.2L II USM
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1/400
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2.8
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 5' 42.3" N
経度: 138° 9' 58.5" E

正面は富士山、左は八ヶ岳。子供の頃、よく聞かされた地元に伝わる民話のことを思い出す。昔、昔、八ヶ岳は富士山より高かった。それに嫉妬した富士山に蹴飛ばされて、八つの山になってしまった、という。

レンズ:
EF85mm F1.2L II USM
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1/1250
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6.3
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 5' 41.2" N
経度: 138° 9' 50.4" E

南アルプスの眺め。十八歳まで暮らしていた場所を俯瞰する。不思議な気持ちになる。いま自分はどこにいるのだろう、と一瞬わからなくなるからだ。日本で二番目に高い北岳がひっそりと見える。

レンズ:
EF85mm F1.2L II USM
Tv(シャッター速度):
1/500
Av(絞り数値):
5.0
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 5' 41.5" N
経度: 138° 9' 49.9" E

旧御射山社。正面の斜面が曲線の階段状になっている。かつての祭儀、競技場の跡、つまりコロシアムだと考えられている。一説には推定収容人数は2、3万人ほど。いまは誰もいない。私は古代に思いをはせる。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/1000
Av(絞り数値):
3.5
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 6' 46.0" N
経度: 138° 10' 19.8" E

旧御射山社の四隅に立つ御柱のうちの一本。朝日を浴びて、輝く。この柱もまた7年に一度、立て替えられる。この地では、すべて7年ごとに、時間が流れている。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/2500
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2.2
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 6' 44.1" N
経度: 138° 10' 20.3" E

きっと梅の木だろう。すすき野にたたずむその姿を美しく感じた。冬を越す前から、すでに春を待っているように映ったからだろうか。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/1250
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2.0
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 6' 44.1" N
経度: 138° 10' 20.3" E

旧御射山社。ここだけがこんもりとした森。鎌倉時代、狩猟神事として御射山祭が盛大に行われた。遠方からも多くの武士がここに集ったという。つわものどもが夢のあと。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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1/2000
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1.8
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 6' 44.4" N
経度: 138° 10' 20.1" E

気温マイナス7度。昨日までなかった薄い氷を愛しく感じる。寒さから生み出されるものはそう多くないからだ。

レンズ:
EF50mm F1.2L USM
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2.5
ISO感度:
320
GPS:
緯度: 36° 6' 44.8" N
経度: 138° 10' 19.9" E

諏訪湖を眼下に望む。子供の頃、何度か乗った遊覧船が横切っていく。ここに立つと、盆地という言葉が自然と浮かぶ。まさにお盆のようだ。もうじき本当の冬が来ると、湖は全面結氷する。この冬も、神が渡った跡だと信じられている御神渡りはできるだろうか。

レンズ:
EF35mm F2 IS USM
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7.1
ISO感度:
100
GPS:
緯度: 36° 3' 12.1" N
経度: 138° 7' 21.8" E

ふるさとをEOS 6Dでとらえて。

駆け足で一泊二日の旅を終えた。高校生の頃、多くの時間を過ごした下諏訪町。
甲州街道と中山道が交わる宿場街でもある。

かつての自分の姿を追いかけるつもりだったのに、知らない場所に来ているような気持ちに何度もなった。風景が新鮮だったからだ。実は知っていることより、知らないことの多いことに気がついた。

さらに足を伸ばした八島ヶ原湿原、霧ヶ峰も同様だった。高校のマラソン大会で走ったはずの道。どこか外国のようにさえ感じられた。広い空をゆく色のうつろいを、あの頃はほとんど意識していなかったのだろう。その変化の大きさが何よりも心に残った。また再訪して写真を撮りたいと強く思った。

EOS 6Dを使ってみて感じたことは、撮りたい気持ちに応えるその軽さ、フットワークの良さである。そして晴れ、曇り、雨、雪という気象や気温が刻々と変化する中でもEOS 6Dは十分に対応してくれた。暗い場所でも使いやすく、今回の旅のようなフィールドで改めてカメラとしての実力を実感したのだ。

小林 紀晴
小林 紀晴
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期学部写真科卒業。
アジアを多く旅し作品を制作する。2000-2002年渡米(N.Y)。[DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞受賞。キヤノンギャラリーSで開催した『遠くから来た舟』で第22回林忠彦賞受賞。写真集、著書に『ASIAN JAPANESE『SUWA』『写真学生』『kemonomichi』『メモワール』など多数。
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