連続Webドラマ(全10話)連続Webドラマ「遠まわりしようよ、と少年が言った。」忘れていた。人生にとって大切な何かを。

MOVIE

  • - 第1話 - | 思い出の地へ
  • - 第2話 - | 少年
  • - 第3話 - | 旧友
  • - 第4話 - | 真剣勝負
  • - 第5話 - | ホームランボール
  • - 第6話 - | 初デート
  • - 第7話 - | アドレスは聞かない
  • - 第8話 - | 誰?
  • - 第9話 - | 恩師の想い
  • - 最終話 - | 再生

- ドラマ解説 -

※本文中に、ドラマの結末に関する記載がありますので、まだ最終話までご覧になっていない方はご注意ください。

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アラフィフと呼ばれる50歳前後の人たちは、会社や組織の中での自分のポテンシャルがわかってしまい、新たにチャレンジする意欲を失いがちな年代である。残りの会社人生はリアルに見えてきている一方で、定年後の人生は見えていない。自分に「定年」が来ることに実感はなく、まだまだ現役だと思っている。「何か」できる、と思っているが、その「何か」が見つからない。差し迫る「定年」に対し、抗うことはできず、かといって転職して新たなキャリアをつくることも難しい。そうした漠然とした不安感、そして組織から離れての自由への期待感が、彼らの心に同時に入り乱れている。

『遠まわりしようよ、と少年が言った。』の主人公は、そんな「アラフィフ」と呼ばれる50歳の男性だ。浩介は、中間管理職として、上からのプレッシャーと、下からの突き上げで疲れ果てていた。そんな中、偶然見かけた瀬戸内のガイドブック。彼が中学生の頃に住んだことのある小豆島の文字に目が留まる。そして駆り立てられるように浩介は小豆島へと向かった。浩介には妻がいる。共働きで、二人とも帰宅は遅く、洗濯機を夜にまわし、帰宅後に干すのは彼の役割となっていた。ドラマでは描かれていないが、浩介は衝動的に休みを取ったため、妻は急に休みを合わせられず、小豆島へ一人旅をすることになった。

小豆島で浩介は不思議な少年と出会う。彼に導かれるままに島を巡り、懐かしい人々と再会し元気をもらって帰る、というのがこのドラマのストーリーだ。このドラマを見終わった人はきっとお気づきだろうが、「少年=カメラ」である。もちろん、カメラが人に化けるわけではない。浩介に見えていた少年は、カメラを通して見ていた自分自身を表している。つまり、「少年=カメラ=浩介」なのだ。「あっち行ってみようか、いい景色があるかも」「おなかすいたな、そういえば、あの蕎麦屋はまだあるかな」といった少年のセリフは、実は浩介自身のつぶやきである。また、少年が意図的に旧友の大沢や、初恋の人・さとみに引き合わせているように見せているが、少年は彼自身を反映させたものなのだから、これも浩介自身がかつての旧友たちを訪ねて行ったことになる。

浩介は中学のときに過ごした小豆島での出来事を、今も心のどこかで引きずっていた。野球部のチームメイトでライバルだった大沢との「エースで4番」のポジション争い、初恋の人・さとみが急に自分を避けるようになったこと、恩師との確執……。決着をつけずに島に置き去りにしてきた出来事をずっと心のどこかで気にしていた浩介は、もう一度、それらと向き合うために島に来たのだった。 大沢がよく通っていた蕎麦屋、さとみの実家への山道、それらは浩介しか知らないことであり、このことからも少年が彼自身だったことがわかる。少年が浩介を連れまわした、ということはつまり、浩介自身が、彼らを訪ねるために島をまわったことに他ならない。 再会した大沢やさとみとの会話の中で、恩師である須藤先生の話が必ず出てくる。今も島に住んでいる彼らから、須藤先生が亡くなったことを、浩介は実は聞いていたはずである。なぜなら、そこに触れない方が不自然だからだ。須藤先生の訃報を今さらながらに聞いて、いてもたってもいられなくなった浩介は、須藤先生が眠るお寺に赴き、墓前で須藤先生の奥さんと再会。須藤先生の当時の想いを理解するのだった。こうして浩介は、心に引きずっていた気持ちを晴らし、新たなる気持ちで島を後にする。これが物語の真意である。

「カメラ」という機械は不思議なもので、「愛機」といって愛でたり、常に持っていたりする人もいる。また機械でありながら、自らの相棒のように擬人化したり、想いをこめたりする人がいる。カメラを持っていると、出かけたくなったり、いつもとは違う景色が見えたり、見つけたりする。カメラを持つことで、自分の中で別の自分のスイッチが入る感覚。そのカメラが持っている力が、「アラフィフ」と呼ばれる人たちの人生を少しでも前に進めることができれば、という思いがこのドラマには込められている。

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