キヤノンギャラリー奈良原一高写真展:華麗なる闇 漆黒の時間(とき)

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本展は、写真家 奈良原一高氏による写真展です。
写真集「ヴェネツィアの夜」、「光の回廊―サンマルコ」、「ジャパネスク」から抜粋した作品約60点を展示します。
ヨーロッパと日本という二つの異なる題材を共通のモノクロームの世界で象徴的に表現し、東西それぞれの異質な「黒」に対する奈良原氏の美意識を具現化した写真展です。
作品は、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし、展示します。

開催日程 会場
2017年3月10日(金)~4月24日(月) キヤノンギャラリー S(品川)
キヤノンホール S(品川)にてギャラリートークを開催します。
  • 詳細は下の「トークイベント開催のご案内」をご確認ください。

トークイベント開催のご案内

島根県立美術館主席学芸員 蔦谷典子氏、グラフィックデザイナー 勝井三雄氏、奈良原一高アーカイブズ代表 奈良原恵子氏が、展示作品について話します。(事前予約制)

作家メッセージ

写真は未来から突然にやって来る。僕の場合は、いつもそうだった。僕は空中にひょいと手を伸ばしてつかみとる……すると写真がひとりでに僕の手の中で姿を現わす。

『華麗なる闇』――奈良原が初めてヴェネツィアを訪れたのは1965年の夜。
はじめに闇があった。そして、その闇の時間の彼方から、街は不意に立ち現われた。ヴェネツィアをはじめて訪れた夜のことである。
船のへさきにしつらえたヘッドライトに照らされて、黒い水の上に屹立する街並みの壁が次から次へと姿を現わしたときの衝撃は忘れることが出来ない。
「これがヴェネツィアなのか、水上の街というより、水の中から生まれた街ではないか、まるで東洋の魔術師が一夜にして闇の手の内から取り出してみせた都ではないか」。僕はこのときからヴェネツィアに恋をしてしまった。
その後ニューヨークに滞在中、そして東京に帰ってからもヴェネツィアは心から去らず、度々訪れることになる。
ヴェネツィアは美しい。しかし美しいだけならばこれほど僕をひきつけはしなかったであろう。その美しさは虚構のはかなさをたたえている。その優雅な美しさはいつかは終わりのあることを知っている人生のよろこびのせつなさに似ている。
次第に陽光あふれる、光のヴェネツィアから夜のヴェネツィアへと僕の好みは傾いていった。
昼でもなく夜でもない生き生きとした奇妙な明るさがその冥府のような闇の中にはあった。
そして、その輝く闇の中でヴェネツィアは秘かに生まれ変わっていた。
昼間の人影を追放したヴェネツィアは400年の時間を遡り、かつてアドリア海の花嫁と名付けられた栄光の姿をその闇の中に横たえていたのだった。

『漆黒の時間(とき)』――日本というものは僕にとって、容易に接近出来ないものであった。それはまるで鏡の中に映った自分の姿に決して触れることが出来ない理(ことわり)に似ている。
僕は「刀」というものが武家世界の不条理をいっさいのみ込んでしまうひとつの「存在」であることに気がついた。武器として生まれたものが、精神的「存在」と化していった。いずれにしても日本刀の美しさは決して陽気なものではなく、時としては陰湿でストイックなエロチシズムさえもたたえているのである。

「能は空間の引力のようなものですよ」と語る観世寿夫氏に、僕は「存在ですね」と答えた。確かに能の動きにはバレエや踊りなどにある運動のピークの瞬間などではなく、「ずれてゆく時間のすき間」のようなものがあるようだった。
僕は松浦老師に「禅という思想は、科学的手続きをふむ写真には写らないと思います。そこに残るのは形だけでしょう」とその間合いをはっきりと語った。
これら日本の伝統文化の内に秘そむ、自然への意識、間の感覚。その精神性こそ、昔から長い時代を経た伝統の根源的なすがたであり、その洗練されたかたちを漆黒の時間<とき>としてとらえた。

『華麗なる闇』と『漆黒の時間(とき)』。この異なる二つのサブジェクトを、共通のモノクロームの世界で象徴的に表現した稀有な試みを、勝井三雄氏の企画およびADにより構成し、展示致します。

奈良原恵子
奈良原一高アーカイブズ代表

出展:『ヴェネツィアの夜』(岩波書店 1985)、『光の回廊―サンマルコ』(ウナックTOKYO出版 1981)、『ジャパネスク』(毎日新聞社 1970)

作家プロフィール

奈良原 一高(ならはら いっこう)

1931年福岡生まれ。1959年早稲田大学大学院(芸術学専攻)修士課程修了。在学中の1956年に、初個展「人間の土地」が大きな反響を呼び、写真家としての活動をはじめる。
1959年、東松照明、細江英公、川田喜久治らとセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成(1961解散)。その後、パリ(1962-1964)、ニューヨーク(1970-1974)と拠点を移しながら活動。1974年帰国後も世界各地を取材し、多数の展覧会を開催。写真集も数多く出版し、国際的にも高い評価を受ける。
主な個展に、「Ikko Narahara」ヨーロッパ写真美術館、パリ(2002-2003)、「時空の鏡:シンクロニシティー」東京都写真美術館(2004)、「手の中の空―奈良原展1954-2004」島根県立美術館(2010)、「王国」東京国立近代美術館(2014-2015)など多数。写真集に、『静止した時間』(1967)、『ジャパネスク』(1970)、『消滅した時間』(1975)、『人間の土地』(1987)、『ヴェネツィアの夜』(1985)、『時空の鏡』(2004)、『太陽の肖像』(2016)なお。主な受賞に、日本写真批評家協会新人賞(1958)、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞(1968)、紫綬褒章(1996)など。

写真展企画:
奈良原一高アーカイブズ代表 奈良原恵子氏、新美虎夫氏、
グラフィックデザイナー 勝井三雄氏

著作権について
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