キヤノンギャラリー高梨 豊 写真展:囲市 かこいまち

高梨豊氏は、都市とそこに生きる人々を被写体に撮影を続ける、日本を代表する写真家の一人です。氏の写真は、時代とともに変容を繰り返す都市の姿を通じて、その背後に存在する日本人の実像を浮き彫りにします。作品を新たに発表するたびに表現方法や作風を変えるという、氏独自の手法によって多面的に眺められた都市は、そこで生活する人間のさまざまな思いを雄弁に物語っています。
このほど展示する約50点の写真は、「囲う」という人の一般的な営みに隠された感情をテーマにしています。都市部のそこここに設置された工事現場を覆うための塀や防塵(ぼうじん)用ネット。ありふれた光景の中に違和感なく溶け込み、都市の一部を構成するこれらの「囲い」は、実は人々が心に抱いている「所有」や「欲望」といった感情を象徴するものであると高梨氏は指摘します。
ものを所有したいという人間の根源的な欲求が、都市の景観にどのような影響を及ぼしているのか。
高梨氏の視線を通して、これまで知らなかった都市へのまなざしを感じることのできる、大変示唆的な写真展です。

開催日程 会場
2007年3月28日(水)~5月14日(月) キヤノンギャラリー S(品川)

作者メッセージ

「囲市 かこいまち」について

裏の空地に囲(カコ)いが出来た塀(ヘイ)小噺

子供の頃、洒落たつもりで口にしたものだ。女を囲う、囲い者などと、大人言葉を覚えるたびに、広っぱには塀が出来、一つ二つと子供らの遊び場が減って行った。やがて囲いは所有や欲望の表徴であることに気がつくのである。「囲」はタイトにルーズに変幻するが、その綻びや隙間から日本社会独特の「世間」を垣間見せることがある。

「表徴とは裂け目である。そのあいだから覗いているものはほかならぬもう一つの表徴の顔である」(R・バルト)

「スケールアウト」について

写真の「大きさ」は曖昧なものである。絵画は最初に大きさが決められ描き始められる。キャンバスの号数はモチーフと画家の世界との抜き差しならぬものとなる。写真は始めに撮影があり、そののち作品の〈住み着き方〉により大きさが決定される。エディトリアルなら机上で見る大きさ、展覧会なら「全紙」と、それらが「写真」の大きさの概念となった。「スケールアウト」とは一般にある「概念」を遥かに超える大きさのことを云い、写真ならばそこに映し出されたモノやコトの意味は変質する筈である。インクジェットプリンター「imagePROGRAF」の大きさとシャープネスは「写真」に新しい表現の可能性をつけ加えることとなるだろう。

講演会

プロフィール

高梨 豊(たかなし ゆたか)

略歴

1935年
東京・牛込に生まれる。
1957年
日本大学芸術学部写真学科卒業。
1961年
桑沢デザイン研究所リビングデザイン科卒業。
1964年
第8回日本写真批評家協会新人賞受賞。
1967年
「第5回パリ青年ビエンナーレ」国際写真部門最高賞受賞。
1968年
中平卓馬・多木浩二らとともに写真同人誌『PROVOKE』刊行。
1985年
第34回日本写真協会年度賞受賞。
1993年
第9回東川町国際写真フェスティバル国内作家賞受賞。
1994年
第43回日本写真協会年度賞受賞。
以降
現在 東京造形大学客員教授。
2007年
写真エッセー集『日本の庭』(再販/世界文化社)

主な著書および写真集

「都市へ」(1974年 イザラ書房)、「町」(1977年 朝日新聞社)、「東京人1978—1983」(1983年 書肆山田)、「都の貌」(1989年 IPC)、「面目躍如 人物写真クロニクル 1964~1989」(1990年 平凡社)、「初國 pre-landscape」(1993年 平凡社)、「地名論」(2000年 毎日コミュニケーションズ)など

エッセー集「われらの獲物は一滴の光」(1988年 蒼洋社)、「ライカな眼」(2002年 毎日コミュニケーションズ)など

写真展

「SOMETHIN’ ELSE」(1960年 銀座画廊)、「標的」(1962年 銀座画廊)、「現代写真の10人」展(1966年 東京国立近代美術館)、「第10回日本現代美術展」(1971年 東京都美術館)、「15人の写真家」展(1974年 東京国立近代美術館)、「Neue Fotografie Aus Japan(日本の現代写真)」展(1976年 オーストリア・グラーツ市立美術館ほか)、「Gazing at the Contemporary World:Japanese Photography from the 1970s to the Present」展(2007年 世界各都市、JAPAN FOUNDATION)

著作権について
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