"S"の記憶

24

会期 : 2006.4.6 - 2006.5.16

第24回展 稲越 功一 
「遠い雲、中國」

十数年にわたって中国を旅しながら、中国の"今"を記録し続けた稲越功一氏。
本展では、広大な中国大陸でも屈指の景勝地である桂林を中心に撮影された最新作を交えながら、これまで撮りためてきた作品を振り返る。桂林の壮大な自然。薄曇りの空の下、悠久の大地をゆったりと蛇行する大河。そして、平原で和やかに談笑する人々。それら約60点の作品には、稲越氏が見つめ続けた、中国のありのままの姿が写し出されている。

  • 「遠い雲、中國」
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作家メッセージ

旅先で。
2005年12月31日。
中国、広西チワン族自治区、三江からに向かう。

長年の中国の旅も気分は松尾芭蕉の奥の細道の旅の時のようにゆっくり視つめる。
日本の盆栽の小枝を切るようにひとつひっとつ丁寧に風景を撮っていた。
今回の桂林を拠点に二週間の旅は、あいにく天候に恵まれず晴れた日は一日もなかった。
桂林から陽朔までの川下りも一日掛りで雨まじりの中を舟で下った。
時々、舟から降りて村を訪ねた。どの省の田舎にも共通しているのは、いまや田舎は子供と老人の村になりつつあることだ。
若者が都市に憧れるのは解るが、いまのままではいずれこの国の農業も日本の農業がそうであったように遠くに置き去りにされるかもしれない。

 雨走り 桂林の山 墨一色     功風
2006年1月1日。
中国、貴州省の肇興郷の村の宿にて柳 宗悦著『茶と美』を読む。

彼は日本の美の深さを誰よりも信じ強調していた。昭和の初め日本は西欧の方に眼が向きそれらを〈現代の眼〉として日本の美をおろそかにしていた時代があった。

伝統的な日本美に私たちはもっと自信をもって日本人の感情の豊かさを誇りに思うようにと言っている。
〈知る力〉よりも〈観る力〉がいかに重要かも説いている。
常に良いものを観て、触れることが眼の力を深めることでもあろう。
毎年、外国を旅して彼の地の本物を数多く見ると、より一層日本の四季の美しさを再確認することがある。
それぞれの季節の変りめの草花や樹々の葉の色つきに出会い私たちは心と眼を磨いてきた。そのことが私たちを直感力の優れた国民にしたのであろう。
柳は言う。禅的に言えば〈空手にして受取る〉見る眼と見られるものがひとつになる。とも言っている。
私もものを視つめている時、常にものたちにも観られているという意識でものたちをみるとおのずと見方も 違ってきて、ものの裏側まで見えてくる。

私が風景たちを見ている時に常に自分の心を真白にして平常な気持ですべてをみつめれば素直に周りの光景が眼に飛び込み風景の移りゆく間のようなものまで瞬時に撮れると私は思っている。

※功風:稲越功一氏俳号

稲越 功一 (いなこし こういち)

1970年、フリーランスの写真家として活動を開始。
1980年、講談社出版文化賞を受賞。
エディトリアルの撮影をする一方で、国内外を問わず多くの作品集を出版し、展覧会を開催するなど積極的な活動をしている。
主な作品集に、『男の肖像』(集英社)、『女の肖像』(文藝春秋)、『波の絵、波の話』(文:村上春樹 文藝春秋)、『Out of Season』(用美社)、『中村吉右衛門』(用美社)、『Ailleurs』(Contrejour)、『平成の女たち』(世界文化社)、『三大テノール日本公演公式写真集』(選択エージェンシー)、『アジア視線』(朝日出版社)、『野に遊ぶ魯山人』(梶川芳友共著 平凡社)など多数。
2005年、松尾芭蕉生誕360周年記念企画として、作品集『芭蕉の言葉』(佐佐木幸綱共著 淡交社)を出版、展覧会『芭蕉の風景』(和光ホール)を開催。
NHK「課外授業~ようこそ先輩~」(9月14日放映)に出演。NHK特選アーカイブス「新シルクロード~遥かなり長安~」(12月11日放映)にゲスト出演。
2009年2月逝去。

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