"S"の記憶

43

会期 : 2008.5.9 - 2008.6.17

第43回展 熊切 圭介 
「揺れ動いた'60年代の光と影」

飛躍的な経済成長の最中にあった1960年代は、家電製品の急速な普及で生活水準が向上していく一方で、環境破壊や公害、学生運動などの社会問題が顕在化した激動の時代だった。
戦後の混乱期を経て、豊かさを求めてがむしゃらに働く人々の姿や、急激な工業化の中で疲弊していく国土の様子など、日本における「光」と「影」の部分を宿す1960年代の世相を、熊切圭介氏がジャーナリズムの視点からとらえた作品約100点を展示。

  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影
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  • 揺れ動いた'60年代の光と影
  • 揺れ動いた'60年代の光と影

作家メッセージ

現在日本の社会が抱えているさまざまな問題の萌芽は、1960年代に見え隠れし始めた。日米安保条約問題の騒然とした雰囲気の中で迎えた’60年代は、岸内閣の退陣の後に登場した池田内閣の「所得倍増計画」でスタートした。戦後政治の時代から経済の時代に変わった年である。未だ身についていないレジャーとやらにつかの間の幸せを感じ、ひたすら豊かさを求めて一生懸命働いた時代だった。その結果、GNP世界第2位という輝かしい地位を手にした。

石炭から石油へというエネルギー革命と重化学工業化が進み、日本各地で大規模な工業開発が行われた。反面、都市の人口過密や農山村の過疎化が加速していった。1964年に開かれた東京オリンピックで国際的にもアッピールし、黄金の’60年代とか昭和元禄などと、世はまさに天下泰平ムードで日本は順風万帆と思いきや、背後には黒く深い影がひたひたと迫っていた。

大気や河川汚染などによる公害問題、サリドマイドや水俣病など薬害や有機水銀中毒、地価の高騰、開発にともなう環境破壊、交通災害の急増、全国に波及した学園紛争などに加え、凶悪な事件や悲惨な事故が多発した。

また対岸の火事かと思っていたベトナム戦争の暗い影が、日本を覆い始めていた。そうした時代の動きの中で、1970年に開催された日本万国博覧会を機に、日本は一層経済への傾斜を強め、消費文化に軸足を置いた情報社会に身をゆだねていった。

「光」と「影」が複雑に交錯し揺れ動いたこの時代は、写真家としてスタートしたばかりの私にとって、まさに青春時代そのものであった。週刊誌や月刊誌、グラフ誌などジャーナリズムの片隅から見続け記録し続けた’60年代は今に続く記憶として深く残っている。

熊切 圭介 (くまきり けいすけ)

1934年
東京・下谷西町に生まれる。
1958年
日本大学芸術学部写真学科卒業。のちフリーランスの写真家として週刊誌を中心に月刊誌、グラフ誌など主にジャーナリズムの分野で写真活動をする。同時に単行本、美術全集などの撮影を行う。
1965年
第一回日中青年大交流に日本写真家協会(JPS)の代表として、齋藤康一・佐藤省三両氏と参加
1975年
日本写真家協会企画制作の「日本現代写真史展」編纂委員
1984年
国際交流基金制作の写真展「日本1971~1984 -人と社会-」編纂委員
1986年
東京パリ友好都市提携記念「東京パリ写真展」編纂委員
1989年
東京都の「アルバム東京」作成懇談会委員
1991年
東京港開港50周年記念事業実行委員会の依頼で写真集「東京港」の撮影を行う。
1995年
日本写真家協会、朝日新聞社主催「日本現代写真史展 -記録・創造する眼」実行委員長
2000年
日本写真家協会編纂「日本現代写真史1945~95」(平凡社刊)編纂統括
2007年
「横浜国際フォトジャーナリズムフェスティバル2007」実行委員会会長
2008年
JPS展委員長(2000年JPS展より委員長を続ける)

●写真展

1981年
「風光万里-中国の旅」伊那ギャラリー(東京)
1987年
「街・東京 1972~1987」キヤノンサロン(東京・名古屋・大阪)
1991年
「スペイン・鉄の光栄」コニカフォトギャラリー(東京・名古屋・大阪・福岡)
1993年
「ニュー・ポート・タウン・トウキョウ」東京都庁舎ホール(東京)
1994年
「揺れ動いた’60年代」JCIIフォトサロン(東京)
2001年
「風の島カオハガン物語」富士フォトサロン(東京・名古屋・福岡)
2002年
「池波正太郎と下町の風景」台東区生涯学習センター(東京)

●グループ展

1984年
「六の会展」ナガセフォトサロン(東京)
1992年
「六の会展」富士フォトサロン(東京)
1992年
「東京オリンピックの時代」JCIIフォトサロン(東京)
1998年
「六の会展」コニカプラザ(東京)
2001年
「江戸・東京往来」熊切圭介、木村惠一2人展 キヤノワンダーミュージアム(千葉)
2002年
「1965年中国・そして今」熊切圭介、齋藤康一、英伸三3人展 新宿パークタワー1F ギャラリー・1(東京)
2004年
「三人展」熊切圭介、長友健二、木村惠一 富士フォトサロン(東京)
2006年
「二人展」熊切圭介、木村惠一 円月ギャラリー(東京)
2008年
「六の会展」ポートレートギャラリー(東京)

●主な著書および写真集

『手漉和紙精髄』、『世界の博物館』、『美術全集・25人の画家』、『中国の旅』(講談社、いずれも共著)、『毛網毅曠』(丸善出版)、『朝香宮廷のアール・デコ』(東京都文化振興会)、『東京港』(東京港開港50周年記念事業実行委員会)、『ハプスブルグの鉄』、『上海鉄景』、『インド鉄紀行』、『マンハッタンの橋』(川崎製鉄株式会社)、『池波正太郎のリズム』(展望社 2000年)、『南島からの手紙』(新潮社 2001年)

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