作家インタビュー

豊田 直之

豊田 直之

Naoyuki Toyoda

第103回展「水の輪廻 ~広大なる海の行方を追い求めて~」

水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

EOS-1Ds Mark II・EF20mm F2.8 USM ・F4.5・1/1250秒・ISO800

水の輪廻 ~広大なる海の行方を追い求めて~

長きにわたり、海の中の生き物や風景を撮り続けてきた、豊田直之。 海の中で撮影を続けているうち、豊田は「海の水はどこから来るのだろう」という素朴な疑問を感じた。 今回は、その疑問から始まった「水の輪廻」をテーマにした撮影の中で出合った、さまざまな水の表情を紹介する。

広大な海をつくる最初の一滴

写真家として海の中を撮るようになって20年近くが過ぎたころ、私の心の中に、ひとつの素朴な疑問が生まれました。普段と同じように海の中の撮影を終え、陸に上がる準備をしているとき、ふと、「今、自分を取り巻いている大量の海水は、いったいどこから来るのだろう」と考えたのです。地球の表面の約7割を占める海。水の惑星と呼べる地球を覆い尽くしている大量の水の最初の一滴は、どこで生まれ、どのように海へと辿り着いているのか。私はその疑問を解消すべく、最初の一滴が海に辿り着くまで、水の流れを追ってみようと決めたのです。

  • 水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

    写真1
    EOS 7D・EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM ・F6.3・1/2000秒・ISO250

  • 水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

    写真2
    EOS 5D Mark II・EF14mm F2.8L II USM・F8・1/500秒・ISO12800

  • 水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

    写真3
    EOS 5D Mark III・EF14mm F2.8L II USM・F5.6・1/125秒・ISO3200

山に降り注いだ雨は一度地中に潜り、自然の中で浄化され、どこからか湧き出してきます。そして、その水が小さな川をつくり、やがて大河となって海へと注ぎ込まれます。さらに、海の水は太陽に照らされる中で蒸発し、それが雲となり、また雨となって地上に降り注ぎます。こうした水の循環、言わば「水の輪廻」の中で、水は地球上のさまざまな命を育んでいます。海の生物はもちろん、植物や人間も、水の恩恵を受けなければ生きていけないのです。

ただ、水もまた、豊かな自然がなければ、生き物にとって恵みの水にはなりえません。写真1−3の3点は「水の輪廻」を表す象徴的な作品ですが、山に降り注いだ雨をきれいにするには、豊かな森が欠かせません。木々が生い茂る森の中で、地中に染み込んだ水の余分なものが取り除かれ、大事な要素だけが残る上質な水が生まれます。そして、その水が、人々が口にするたくさんの作物を育てるのに使われたり、海の水をきれいにして、多くの魚介類の命を育んでいたりするのです。

  • 水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

    EOS 5D Mark III・EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM・F8・1/8000秒・
    ISO3200

  • 水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

    EOS-1Ds Mark II・EF15mm F2.8フィッシュアイ・F10・1/80秒・ISO200

やがて海となる最初の一滴を探し出し、その源流の姿を撮影したとき、私は、あまりの美しさに驚きました。しかし、人々が暮らす中流、下流へと下るにつれ、清らかな水が徐々ににごり、川の中にゴミが浮かんでいる場所さえありました。太古の地球では、上流のきれいな水のまま海に流れ着いていたはずです。私は、撮影を続ける中で、そうした環境を取り戻したいと強く考えるようになりました。日本は、世界ではまれな水資源の豊かな国です。水道をひねればきれいな水が流れ出てくる。それは、決して当たり前のことではなく、とても特別なことなのです。私は、さまざまな水の表情を写真に残し、それを多くの人に見せることで、水の大切さを多くの人に思い出してほしいと願っています。

地球上で繰り返される「水の輪廻」を追い求めて

水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

EOS-1Ds Mark II・EF180mm F3.5L マクロ USM・F11・1/125秒・ISO400

「水の輪廻」をテーマに、これまでにさまざまな水の表情を写してきました。今はまだ、そのほとんどが、日本国内の水の姿ですが、やがては、この地球を覆う、世界の水にも目を向けたいと考えています。そして、最終的には、地球上の最も高いところにある最初の一滴と、最も深くにある水をこの目で見て、写真に残したいと願っています。高いところから海の底のことを考え、深いところから陸上で暮らしている生き物たちの命を考える。そうすることで、この地球上で繰り返されている「水の輪廻」のすべてが見えてくるのではないかと信じています。

水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

EOS 5D Mark III・EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM・F7.1・1/2000秒・ISO800

水の輪廻~広大なる海の行方を追い求めて~

豊田 直之「水の輪廻 ~広大なる海の行方を追い求めて~」

2015/5.14 - 2015/6.22

展示情報

豊田 直之

豊田 直之 (とよだ なおゆき)

1959年横浜生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。
サラリーマン、漁師、ライター兼編集者を経て、写真家・中村征夫氏に師事。
1991年独立後、海の撮影プロダクション・有限会社ティエムオフィスを設立。同代表。
1996年、キヤノン販売株式会社(現・キヤノンマーケティングジャパン株式会社)のカレンダー撮影を担当。
2012年、NPO法人海の森・山の森事務局を設立。理事長として、環境保全の普及啓蒙にも活躍。
かまくらペンクラブ会員。著書多数。ラジオやテレビなどの出演も多い。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2015年6月号に掲載されたものです。

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