作家インタビュー

Namiko Kitaura

Namiko Kitaura

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第104回展「Recollection」

Recollection

Recollectio

次世代の日本を代表する写真家の一人、Namiko Kitaura。 彼女の目を通して切り撮られた作品は、見る人の心の奥底にある「記憶」を揺さぶる。 今回は、キヤノンギャラリー S 2015 特別展「She’s~3人の写真家。彼女たちの写真展2~」の最初を飾る写真展「Recollection」の中から、その一部を紹介する。

無意識下の記憶を揺さぶる

油絵を学ぶために留学したイギリスで、私は写真の道に進むことを決めました。職業として写真家を意識したのは、大学卒業後にFABRICA*で活動していたとき。世界中から集まるさまざまな分野のアーティストたちと活動をともにし、多くの刺激を受けました。

*ベネトン社が主宰するアートスクール。公募により世界中から若手のアーティストが集まり、作品を創作する。

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写真の興味深いところは、物事の表面を視覚的にとらえながら、その下にある目に見えないものまで写し出せること。今回の写真展のテーマは「記憶」ですが、私の作品を見た方々から「自分の奥底にある記憶や感情が揺さぶられた」とよく言われます。私が表現するのは具象ではなく抽象的な世界。けれど、目に見えず、言語化できない感情をシンボリックに表現するからこそ、私の作品は無意識下の記憶を刺激し、人類なら誰もが持っている普遍的な記憶に働きかけるのではないかと思います。

写真は、その表現を通じて、人々や社会に価値観や視点を提案することができます。何か大切なことに気付く、または、さまざまな方向に思いを巡らせる、今まで抱いたことない感情を見いだすなど、私は、自分の作品を通じて、そうしたきっかけをつくれる作家でありたいと思っています。

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    写真1

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写真2

表現者として生きる意味

今回掲載した作品は、すべて日常の範囲内で写したものです。私が写真を撮る上で大事にしているのは、目の前の被写体から、いかに対極に併存する感情を読み取ることができるか。ありふれた日常にも美は潜み、すべての事物には相反する感情が併存しています。美と醜、静謐と混沌、生命の儚さと強さ。例えば、写真1の作品は、凍った花だからこそ、私は、そこにひときわ光る生命の輝きを感じました。

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被写体を前にしたとき、いかに精神を集中させ、被写体と一体になれるかということも重要です。風景を撮るとき、目の前の風景とシンクロし、自分が自然の一部になれたと感じられなければシャッターは切れません。また、写真は被写体の一部を切り撮ることで、全体を凌駕する力を持っています。写真2は友人の肌を写したものですが、体の一部しか写っていないにもかかわらず、私はこの一枚に人間という存在そのものを感じました。

芸術は、一部の限られた人だけが楽しむものではないと、私は常に考えています。現代社会においては、人々の感性が日常的に鈍くなりがちですが、芸術は、人々にとって根源的なものとして太古から存在していました。作家は、時に孤独に、自分の世界に深く没入していきます。けれど、そこには、自分だけでなく、人が共通して持っている何かがあるのではないかと思うのです。芸術作品に触れ、感動、共感することによって、その人は本来の姿に向き合い、あらためて生きていることを実感できるのではないでしょうか。

子供を産み、母親になったことで、私は世界を見つめる視座が変わりました。親が子に何か教えるとき、世界を美しいものとして語りかける。そのポジティブな視点が、表現者としての私の意識も変えたのです。自分の中から湧き出たものを表現して生きる。そういう星の下に生まれたなら、自分にできることは全うしたい。それが、私が表現者として生きる意味です。

Recollection

Namiko Kitaura「Recollection」

2015.6.25 - 2015.8.3

展示情報

Namiko Kitaura

Namiko Kitaura (きたうら なみこ)

東京生まれのフォトグラファー。
1996年に絵画を学ぶため渡英し、その後渡伊。
University of the Arts London 卒業後、ベネトン社主宰のアーティスト・イン・レジデンスFABRICAで、日本人初の写真家としてスポンサーを受け経験を積み、ヨーロッパ各地で活動。
その後もロレアル、キヤノン、資生堂、など多数の企業からスポンサーを受ける。
国内外の有名ブランドやファッション誌、広告を多く手掛ける傍ら、作家として社会に潜むさまざまな問題と向き合い、その裏にある言葉にならない感覚や感情を独自の撮影手法にて視覚化している。
一児の母。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2015年7月号に掲載されたものです。

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