作家インタビュー

本城 直季

本城 直季

Naoki Honjo

第109回展「東京」

東京

東京

多くの人が生活している都市を、俯瞰でジオラマのように撮影する本城直季。その作品には、現実でありながら、仮想空間のようにも見える都市の不思議さが写し出されている。今回は、約6年ぶりに東京を撮影した新作を含めた写真展『東京』の中から、その一部を紹介する。

俯瞰で眺める東京という「生命体」

私は大学に入ってから写真をはじめたのですが、当初は、それほど写真の面白さに気付けておらず、出された課題を淡々とこなすだけでした。スナップやポートレートなど、さまざまなものを撮影していましたが、自分が本当に何を撮りたいのか分からず、漠然と写真を続けていたのです。大学3年になったとき、初めて中判カメラを使いました。すると、1枚1枚じっくり撮るスタイルが自分に合っていて、ようやく写真の面白さに気づき、自分が撮りたいものも、おぼろげに見えてきました。

東京

写真をはじめる前から私は、自分が暮らしている街、都市というものに不思議さを感じていました。夜に街を歩いていると、遠くの方に高層ビルの明かりが見え、その光景がリアリティーのない仮想空間のように思えたのです。なぜ、自分はこのような人によって作られた空間で暮らしているのだろう。そうした思いを胸に抱きながら、私は中判カメラで都市の姿を撮るようになりました。

街の風景や公園の風景、街を俯瞰できる展望台などでの撮影を続けながら、実験的にさまざまな撮り方を試していると、あるとき偶然街がジオラマのように見える写真が撮れていました。その作品に自分自身驚いたものの、たまたま撮れたものだからこれ以上のものは撮れないだろうと、すぐにその方法論で撮影を続けることはしませんでした。けれど、1年ほどいろいろな撮り方を試しているうちに、次第にジオラマのように見える作品が狙い通りに撮れるようになり、同時に、その作品にこそ自分が都市に抱いていた不思議さが写ると感じ、自分のテーマとして続けようと思ったのです。

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今回、EOS 5Dsで作品を撮るため、約6年ぶりに東京を空から眺めました。東京は世界の中でも異質な都市です。毎回、俯瞰で見るたびにその大きさに圧倒されるのですが、まるで生き物のように増殖を続けています。地上から見れば、建物の一つ一つに違いがあり、そこで人々の生活が営まれているのですが、俯瞰で眺めると、街が一つの集合体となり、それが何かの意思を持った生命体のように感じるのです。幹線道路や鉄道が街の血流となり、年月を経て変化し続ける生命体。その中で多くの人が暮らし続けている。

今回の写真展では、私の作品を通して、現実でありながら、どこかリアリティーが欠如した仮想空間のような東京で、人が暮らしているという不思議さを感じていただければと思っています。

人によってつくられた都市が持つ不思議な魅力を

今回の写真展では、EOS 5Dsで撮影した作品も展示します。それらは、ジオラマのような作品とは手法が違いますが、写したい根本のものは同じです。光や構図、街との距離感に統一性を持たせながら、俯瞰で一つの集合体となった都市の姿を写し撮る。中判カメラでは撮れなかった夕景も含め、変化し続ける東京の姿を感じ取っていただければと思います。

これまでさまざまな都市の姿をとらえてきましたが、その都度、新たな発見がありました。これからも世界中の都市をめぐり、その土地ごとに異なる、人によってつくられた都市が持つ不思議な魅力を追い続けたいと思っています。

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本城 直季 「東京」

2016.2.12 - 2016.3.28

展示情報

本城 直季

本城 直季 (ほんじょう なおき)

1978年、東京都出身。
東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院芸術研究科メディアアート修了。
実在の風景を独特のジオラマ写真のように撮影した写真集『small planet』で2006年度『木村伊兵衛賞』を受賞。
メトロポリタン美術館、ヒューストン美術館、に作品が所蔵されているだけでなく、雑誌や広告など幅広い分野で活躍している。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2016年3月号に掲載されたものです。

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