作家インタビュー

柴田 敏雄

柴田 敏雄

Toshio Shibata

第110回展「Bridge」

Bridge:‘ t’ Groentje’ Bicycle Bridge, Nijmegen, The Netherlands 2013

‘ t’ Groentje’ Bicycle Bridge, Nijmegen, The Netherlands 2013
EOS 6D・EF24-105mm F4L IS USM・F7.1・6秒・ISO400

Bridge

ダムやコンクリートで覆われた造成地など、自然の中に人工物が入り込んだ風景を写し続けてきた、柴田敏雄。今回、彼がカメラを向けたのは、ベルギーの建築家・構造エンジニアであるローラン・ネイが設計した「橋」だった。機能的でありながら、独特の美しさを有する橋を、柴田はどのようにとらえたのか。写真展『Bridge』より、その一部を紹介する。

被写体の個性を超えた次元の異なる世界を写したい

写真と出合ったのは、画家になりたいと思って入った芸大でのことです。ただ、そのとき興味を抱いていたのは版画で、写真はその素材として撮影していました。卒業後、映画会社に就職したものの、やはり一人で作品を作りたいと感じた私は、そこを辞め、ベルギーに留学しました。そこで初めて本格的に写真に取り組んだのです。

  • Bridge:Vroenhoven Bridge, Riemst, Belgium 2013

    Vroenhoven Bridge, Riemst, Belgium 2013
    EOS 6D・EF70-300mm F4-5.6L IS USM・F11・2.5秒・ISO400

  • Bridge:Tervuren Footbridge, Brussels, Belgium 2013

    Tervuren Footbridge, Brussels, Belgium 2013
    EOS 6D・EF24-105mm F4L IS USM・F11・3.2秒・ISO400

  • Bridge:‘Pont Napoleon’ Bridge, Vianen, The Netherlands 2015

    ‘Pont Napoleon’ Bridge, Vianen, The Netherlands 2015
    EOS 5Ds・EF70-300mm F4-5.6L IS USM・F16・1/125秒・ISO500

それまで主に室内で作品を制作していた私にとって、外に出られる写真は楽しいものでした。しかし、写真というメディアを通してアーティストと名乗れるかに疑問も抱いていました。それでも、パリのギャラリーを訪れたとき、写真がアート作品として扱われていることを目にし、写真家として生きていくことを決めました。

当時考えていた写真の一番の問題点は、写真で何かを撮ると、その個体そのものが写ることでした。例えば人なら、その人の個性に引っ張られてしまう。私が写真で表現したいのは、その個を超えた次元の異なる世界です。たとえ無機質なものを撮ったとしても、それが何かを語りかけてくる。見る人によってさまざまな見方ができる作品が撮りたい。そうした思いは、今も変わらず持ち続けています。

Bridge:‘De3 L1ichtenlijn’ Footbridge, Knokke-Heist, Belgium 2013

‘De3 L1ichtenlijn’ Footbridge, Knokke-Heist, Belgium 2013
EOS 6D・EF24-105mm F4L IS USM・F8・3.2秒・ISO400

無機質なものの中にある「美」を探し続ける

今回の写真展で展示するのは、3年ほど前、ベルギーの建築家、ローラン・ネイ氏から、彼の設計した「橋」を撮影してほしいと依頼されて撮りはじめた作品です。

  • Bridge:Second Schelde Bridge, Temse, Belgium 2013

    Second Schelde Bridge, Temse, Belgium 2013
    EOS 6D・EF24-105mm F4L IS USM・F11・1/500秒・ISO200

  • Bridge:Esch-sur-Alzette Footbridge, Grand Duchy of Luxembourg 2013

    Esch-sur-Alzette Footbridge, Grand Duchy of Luxembourg 2013
    EOS 6D・EF24-105mm F4L IS USM・F11・6秒・ISO400

彼は、環境やコスト、地域住民の意見をもとに機能的な構造を考え、独自の美学でデザインを進めていきます。私も写真を撮るときは、「場を借りる」という意識を持ち、その場その場に添うように作品を制作してきました。めぐり合った被写体に「撮らせる力」を感じたときにシャッターを切る。もちろん、そこに自分の美学も写し込み、被写体そのものではなく、その場の説明だけで終わらない作品に仕上げる。そうした方法論と彼の設計に対する考え方に通じるものを感じ、この撮影をはじめました。

ただ、今回の撮影では、これまでとは違う方法論で撮影をしました。それは、初めから撮るものが決まっていたためです。これまでは、被写体との出合いを求めてあてもなく車で探しまわり、撮るものが決まったら大型カメラで撮影し、すぐにその場を去るスタイルでした。けれど、今回は同じ橋に何度も通い、あらゆる角度から撮影し、後で作品をセレクトしたのです。そして、そのスタイルに適していたのが、デジタルカメラでの撮影でした。

今回の作品は、デジタルカメラの特性である機動性を生かした撮影により、自由度が増し、今までとは少し異なる作品になっていると思います。しかし、自分の好きな構図など、それまでと変わらぬ部分もあります。被写体の中にある構造的な美しさに着目している点もその一つです。「美しさ」には、さまざまな概念があると思いますが、私は、「美」がなければ芸術とは呼べないと考えています。たとえ無機質なものでも、そこに「美」を見つけ、写真に写し込む。そして、その「美学」が自分のオリジナリティーとなり、被写体の個を超えた、次元の異なる世界を生み出せると信じています。

Bridge

柴田 敏雄「Bridge」

2016.3.31 - 2016.5.17

展示情報

柴田 敏雄

柴田 敏雄(しばた としお)

1949年東京生まれ。東京芸術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り、写真を本格的にはじめる。日本各地のダムやコンクリート擁壁などの構造物のある風景を大型カメラで撮影、精緻なモノクロプリントで発表し、1992年、写真展「日本典型」で第17回木村伊兵衛賞受賞。同年、ニューヨーク近代美術館にて「New Photography 8」に選出され出品、1997年にシカゴ現代美術館で個展「Toshio Shibata」を開催するなど、アメリカをはじめ国際的に活躍。2000年代よりカラーの作品にも取り組みはじめ、その表現の領域を広げる。2008年に東京都写真美術館で「ランドスケープ−柴田敏雄」展を開催し、翌2009年に日本写真協会作家賞、第25回東川賞国内作家賞を受賞。近年の主な展覧会に「与えられた形象−辰野登恵子・柴田敏雄」(2012年・国立新美術館)、「Toshio Shibata: Constructed Landscape」(2013年・ピーボディ・エセックス美術館、アメリカ)などがある。国立東京近代美術館、国立国際美術館、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー美術館など国内外多数の美術館に作品が収蔵されている。
今回はローラン・ネイ氏のプロジェクトのために、デジタルカメラで撮影。デジタルカメラで撮影した作品を発表する初めての大規模な展覧会となる。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2016年4月号に掲載されたものです。

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