作家インタビュー

公文 健太郎

公文 健太郎

Kentaro Kumon

第113回展「耕す人」

耕す人

耕す人

日本各地の農家を巡り、そこで出会った人々と触れ合いながら日本の農村風景を撮り続けてきた公文健太郎。今、過渡期にある日本の農業の実情を知った公文は、目の前に広がっている「日本の景色」といえる農村風景を記録しておかなければならないと感じた。今回は、写真展『耕す人』の中から、その一部を紹介する。

日本人の血に流れる農村風景の記憶

写真家になり、ライフワークとしてネパールを追い続けているとき、不思議とネパールの農村風景に惹かれていました。そこにいるだけで心が落ち着き、どこか懐かしさを感じていたのです。ネパールの撮影を終え、日本を旅するようになると、やはり目に止まるのは、自然が作り上げた景観より、人の営みが感じられる農村風景でした。しかも、ネパールのときよりも日本の風景の方が自分の中にスッと入り込んできたのです。

  • 耕す人
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私は農家の生まれではなく、幼いときから農業に親しんできたわけでもありません。写真の仕事でたくさんの農家の方たちに出会うまでは、さほど興味も持っていませんでした。しかし、日本各地の農家を訪ねる旅の中で、日本の大部分は農村であるということを知り、人が生きるために作り上げたその景観こそが「日本の風景」だと感じるようになったのです。そして、農村風景を見て心が落ち着くのは、きっと日本人の記憶の底に原風景として農業の営みがあるからだと気付きました。

耕す人

日本各地の農業を追い続ける中で常に心掛けていたのは、できるだけ多くの人に見てもらえる写真にすることでした。モノクロではなくカラーにしたのも、そうした理由からです。また、多くの作品は35mmの単焦点レンズを使っていますが、それは肉眼で見た世界と同じような画角で切り撮ることで、見た人にいろいろな想像を膨らませてもらえると考えたからです。今回はレンズの効果を使って誇張したり、劇的な瞬間をとらえたりするのではなく、自分が見た世界をそのまま写し撮りました。そうして、見た人が自由に何かを感じてもらいたかったのです。

私が考えるよい写真とは、時代を超えて残る写真だと思っています。例えば、今の時代を生きる人が感動する写真を撮ったところで、次世代の人たちの感動する尺度が変わっていたら、その写真のよさは失われてしまいます。それよりも、見る人が自由に考え、それぞれの人が何かしらを感じてもらえる写真の方が、時代を超え、永遠に残る写真になると思うのです。

  • 耕す人
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今回掲載した作品は、決定的瞬間ではなく、平凡な情景かもしれません。けれど、農家の方が見て、「この作物はいい色をしているね」とか、「この服がかわいいね」とか、私の意図していないところに目を向けるような、小さな気付きが含まれた作品になっているとうれしいです。その小さな気付きが写真を見る楽しさを拡げてくれると信じているからです。

今の日本の風景を未来に伝えたい

今、日本の農業は大きな転換期を迎えています。政策転換など農業を取り巻く環境の変化や高齢化による後継者不足。おそらく10年もすれば、日本の農村風景はガラリと変わってしまうでしょう。そして、農村風景が変わるということは、日本の風景が変わってしまうことを意味しています。私が農業を追い続けるのは、今の時代にしか目にできないこの風景を記録しておきたいという願いも込められています。先人たちの知恵を受け継ぎ、長い時間をかけて育まれてきた農村風景。たとえそれが変わってしまっても、写真に残しておけば、未来の人に今の日本の風景を伝えることができると思います。

耕す人
耕す人

公文 健太郎「耕す人」

2016.8.25 - 2016.10.11

展示情報

公文 健太郎

公文 健太郎 (くもん けんたろう)

1981年生まれ
2004年1月 写真展「幸せと幸せの間に」世田谷文化情報センター生活工房
2006年11月 写真展「大地の花」みなと町神戸メリケン画廊
2009年7月 写真展「グラフィッチ」EMON PHOTO GALLERY
2010年11月 写真展「BANEPA」72GALLERY
2011年 写真展「ゴマの洋品店」全国キヤノンギャラリー巡回
2011年1月 写真展「BANEPA」EMON PHOTO GALLERY
2011年12月 グループ展「PORTRAIT」EMON PHOTO GALLERY
2012年 日本写真協会新人賞
2012年12月 写真展「March 2011, Rio de Janeiro」ブラジル大使館
2014年1月 写真展「FÓOTKAT」ハッセルブラッドジャパンギャラリー

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2016年9月号に掲載されたものです。

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