2017年夏、鉄道を愛するすべての人へ、
				キヤノンがお贈りしたキヤノンギャラリー鉄道写真展特集「鉄ナツ」。
				「鉄ナツオールスターズ」が2017年8月10日に運行を開始した東武鉄道「SL大樹」に乗り、ワンデイトリップ。
				見事に復活を果たした「C11 207」に揺られながら、それぞれSLへの思いを話しました。 SL大樹とは?

04 五感で愉しむSL写真の魅力

五感で愉しむSL写真の魅力五感で愉しむSL写真の魅力

長根皆さんは、SL撮影の魅力ってどこにあると思いますか?

諸河やっぱりSLの魅力は、五感を酔わしてくれるところかな。

長根「五感を酔わす」って名言ですね。でも、確かに汽笛って、もともとは警告音のはずなのに、なぜか心地いいんですよね。

米屋哀愁というか郷愁があるよね。

猪井遠くから聞こえてくると、心構えが変わる。

長根そう、汽笛ってすごくて、SLが来るまでまだ30分もかかるような遠いところからでも聞こえるんですよね。それで、その音が聞こえたら、SLを待っている人たちがみんなシーンとしちゃって、まだ30分近くあるのに、そわそわしはじめる。

諸河だから、SLは五感を酔わせるんだよ。汽笛の音があるし、嗅覚は煙の匂いがあるでしょ。目で見るだけでなく、近づいてきたら振動を感じることができるし、ボイラー室の近くに行けば熱も感じられる。

長根味覚は? やっぱり煙?

諸河煙が目にしみるというのも、SLのよさだよね。

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猪井撮影するときの、迫って来る瞬間がなんとも言えないよね。「来るぞ! 来るぞ! 来るぞ!」って。

長根生きものが来るのを待っているみたいですよね。

諸河鉄道の中で迫力で言ったらSLが一番かもしれないね。もちろん、ほかの鉄道にもそれぞれ魅力があるけど、SLの迫力はすごいから。だから、その迫力に負けて、早めにシャッターを切ってしまう人が多い。

長根音とかに惑わされてね。

米屋それ、初めてSLを撮る人へのアドバイスにいいかもしれないですね。迫力に負けず、ギリギリまでグッと我慢する。

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長根でも、今の人は恵まれていますよ。オートフォーカスでAIサーボまでついているから。昔は、置きピンして、構図を決めてから待つんだけど、イメージ通りの煙が出ていなくて、変に空があいている写真とかありましたからね。「煙がない」って気づいてから構図を変えても間に合わないし。

猪井フィルムだと、そんなに数も切れないしね。

諸河残り枚数が少ないときはきつかったよね。最後の2枚に賭けるとか。でも、撮り終えた後に後ろを振り返ると、いいシーンがあったりするんだよ。

米屋そういう悔しいシーンって、いっぱいありますよね。

猪井やっぱりSLは煙が大事だから、風が重要。煙がカッコよく写ればいいんだけど、急に横から吹いて煙が車体を覆ってしまうとガックリくる。

長根そこが普通の鉄道とはまったく違うところですよね。煙は実際にSLが来ないとわからない。前に有名撮影地で撮っているとき、たくさんの人がカメラを構えていたのですが、その人たちの多くは同じ場所で諸河さんが撮ったSLの写真を見て、そこに写っている煙をイメージしているんですよ。それでワクワクしながら待っていると、実際に来てみたら煙が少ない。みんなガクッとして、明らかに空気が変わりました。

猪井SLは煙が命っていうけど、やっぱり煙の形で魅力が変わる。

米屋しかも、連写したとしても一枚一枚煙の表情が違うから大変ですよね。その中で本当にカッコいい瞬間が撮れているかどうか。だから、なるべくなら風の弱い方がいいですよね。

諸河あとSLのシーズンは秋口から冬にかけてだからね。気温が低くないと白い煙が残らない。

長根白い煙が出ずに黒い煙ばかりよりも、白い煙が残ってマーブルになるのが一番きれいですよね。

米屋よく霜降りって言いますよね。

長根霜降り? 初めて聞きました。

諸河あとはごま塩とか。

長根霜降りっていいですね。そういう意味では「SL大樹」もこれからが撮影シーズンというわけですね。煙も“霜降り”になるし。

米屋これからだけど、冬が楽しみです。

猪井冬になると雪が降るからね。

米屋はい。雪の中の2灯ライトは、絶対に絵になると思います。

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鉄ナツを振り返って

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長根最後に、それぞれ「鉄ナツ」で開催した写真展について、皆さんの感想を伺いたいのですが。

猪井キヤノンギャラリー Sで写真展を開かせてもらえるなんて、すごく栄誉なことで感激でした。最初、1カ月半という期間は長いと思っていたけど、あっという間に終わっちゃったしね。それと、写真展のサブタイトル「撮って、飲んで、追いかけて」は、自分の一生のキャッチフレーズになった。だって、写真家としてカッコいいでしょ。撮って、飲んで、追いかけて、これからも全国の鉄道を撮り続ける気持ちがまた強くなったかな。

米屋僕の写真展は、鉄道がまったく写っていなかったんですよね。だから、それを「鉄ナツ」に入れてもらえたのが、すごくうれしかったです。諸河さんの車両がガチッと写っている写真とは真逆ですから。

諸河でも、すごく面白かったよ。

米屋そう言っていただけるとありがたいです。ただ、鉄道写真には、いろいろな種類があって、僕の写真は、そう言った意味では幅の広げ役を担えたのではないかと思っています。

長根僕は個展ではなく、日本鉄道写真家作家協会(JRPS)の取りまとめ役だっただけですが……。

猪井大変だったよな(笑)

長根それは大変でした(笑)。だけど、一人の作家ではなく、27人もいたからこそできた写真展になったと思っています。しかも、ベテランから若手まで幅広いメンバーに参加していただいたので、モノクロの当時の貴重な作品から、今のSLまでバラエティに富んだ作品を並べることができ、本当によかったと思っています。

米屋何点あったの?

長根全部で114点です。本当に皆さんのおかげで大展示ができて、感謝感激です。

諸河最後は僕か。実は、最初はこの「鉄ナツ」のことを知らなくて、形式写真の個展を銀座でやりたいと思っていたんだ。ただ、被写体自体が熱いから、涼しくなった秋口か冬にと思っていたけど、この企画のことを聞いて、ぜひ一緒にやりましょうって。僕個人としては、今回の写真展を通して、スキャナを使わず、EOS 5Dsによってデジタルリマスターする成果を発表できたのが大収穫だったね。これからも、被写体を変えて、モノクロ写真のデジタルリマスターを続けようと思っているよ。

猪井それぞれの写真展で個性が違って面白かったね。

諸河同じ鉄道写真でも、いろいろなテイストを楽しんでもらえたのなら、うれしいね。

猪井今回の「鉄ナツ」は、鉄道写真界にとっても、大きなイベントになったと思う。JR発足30年という節目の年に鉄道ファンが集まるイベントができただけでなく、それぞれ写真展も開催させていただいた。その上、今年復活した「C11 207」の「SL大樹」にも乗ることもできた。写真家として、一鉄道ファンとして、特別な夏になったんじゃないかな。

  • 鉄ナツを振り返って鉄ナツを振り返って

旅人プロフィール

  • インタビューアー長根 広和(Hirokazu Nagane)

    1974年、神奈川県横浜市生まれ。
    鉄道写真家・真島満秀氏に師事。鉄道会社のビジュアルポスターやカレンダー、時刻表表紙写真などを手がける。
    車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな鉄道風景写真にファンが多い。「列車の音が聞こえてくるような作品」がモットー。

    展示情報

    諸河 久(Hisashi Morokawa)

    1947(昭和22)年東京都生まれ。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルア−ツ)卒業。
    鉄道雑誌「鉄道ファン」のスタッフを経て、フリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。国内外の鉄道写真を雑誌、単行本に発表。

    展示情報

    撮影 村上悠太 (Yuta Murakami)

    1987年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、(有)レイルマンフォトオフィスに入社し、2017年に独立しフリーランスの鉄道写真家として活動。2016年に鉄道写真と鉄道動画の個展「てつ動展」を開催し、EOS MOVIEにも挑戦。高校時代には北海道上川郡東川町で毎夏開催される「写真甲子園」に出場したことも。

  • 猪井 貴志(Takashi Inoi)

    1947年4月神奈川県生まれ。東京写真専門学校。JRポスター制作にも多く携わり、とりわけダイヤ改正前には多忙を極める。鉄道のみならず、人物や町の情景も手掛け旅行誌などでも活躍中。

    展示情報

    米屋 こうじ(Koji Yoneya)

    1968年山形県生まれ。生活感ある鉄道風景のなかに人と鉄道の結びつきを求めて、日本と世界の鉄道を巡り撮影。
    著書に「鉄道一族三代記」(交通新聞社)、フォトエッセー「ひとたび てつたび」、写真集「I LOVE TRAIN—アジア・レイル・ライフ-」(ころから)ほか。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。

    展示情報

乗り鉄、撮り鉄、観る鉄。今年の夏は鉄道写真を楽しもう!キヤノンギャラリー「鉄ナツ」 詳しく見る

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