Story

開発者に訊く、imagePROGRAF PRO-1000誕生の背景とコンセプト

03 高画質と高生産性を実現するための、新プリントヘッド プリントヘッド開発 村岡千秋

― インクの性能が上がることで生じる課題について、具体的に教えてください。

一つに“吐出量管理”がありました。インクジェットプリンターのインク吐出量は、温度によって変わる特性があります。吐出量が変われば色の濃度が変わり、画質に影響が出ます。そこでプリントヘッドに温度センサーを配してインクの温度を読み取り、それに合わせてヒーターの駆動を変えてインクの吐出量を一定にコントロールするのです。「imagePROGRAF PRO-1000」では従来各チップに1個だった温度センサーを9個に増やし、より細かくモニターすることにしました。また、12色それぞれ特性が異なるので、インクごとにヒーターの駆動を最適化しました。最適な条件を見つけるのが難しい色もありましたが妥協はしていません。

― 他にも何か課題はありましたか?

プリントヘッドのサイズは、大きな課題でした。机の上に乗る小型のA2プリンターを作ることと、インクを吐出するノズルの長さを従来の約1.5倍にして印刷速度を上げることがすでに決まっていたので、これ以上プリントヘッドを大きくする余地はありませんでした。そこで、ヘッド内部の構造そのものの見直しなど、試行錯誤を繰り返すことで、従来の約1.5倍の1.28インチのノズル長と9個の温度センサーを従来のものとほぼ同サイズに収めることに成功しました。

1.28インチの長尺ノズル ※イメージ図

04 新インク・プリントヘッドの能力を最大限に活かした色再現 左:インク吐出開発 神田英彦 右:画像プロセス開発 仲谷明彦

― インクもプリントヘッドも新しくなると、吐出のシステムも変わりますよね?

高性能な新インクと新プリントヘッド。それぞれの特性を見極めて、インクの吐出回数や順序、色の配置方法などを決めていくのが私の担当です。“この色とこの色のインクを混ぜると別のこの色に見える”というルールがあることは誰もが知っていると思いますが、実はインクの粒の配置やインクを吐出する順番でも、色の見え方は大きく異なります。そうした条件を想定しながらテストを繰り返し、“測る”“目で見る”の両面から判断してデータを積み重ね、新インクのポテンシャルを最大限に引き出す最適値を探っていきました。(神田)

― 他にも見直しが必要だった部分はありますか?

画像データを印刷データに変換する「画像プロセス」でも、試行錯誤を繰り返しました。黒をより黒らしく、赤をより赤らしく見せるためにどうしたらいいのか。それは、インクやプリントヘッドの機能や性能、さらにはプリントする用紙やプリンターを利用する環境の温度や湿度によっても変わります。これまで蓄積してきたデータはありますが、その通り変換するだけではうまくいきません。何度も実際に出力して、目で見て、これまでの経験もフルに活用して追い込んでいくしかない。今回の開発チーム全員の役目に言えることですが、私たちの仕事は技術者でありながらも、昔ながらの職人のような感覚も求められているのです。(仲谷)

imagePROGRAF PRO-1000

05 高画質を長く維持するために