PRO's PRO Voiceグラフィック/写真/デザイン Vol.06

12色のインクで“光”を正確かつ美しく表現できる シリウスライティングオフィス 戸恒浩人

闇を美しく表現できる。

写真:戸恒浩人様

照明デザイナーの仕事として重要なのは“光”を正確に表現することです。ただし、“光”にはカタチがなく言葉で置き換えても、「明るい・暗い」など曖昧で、クライアントとのコミュニケーションギャップが生じやすいのです。“光”は植栽や壁などへの照り返し、闇とのコントラストなどがあって初めて可視化されるもの。“光”のリアリティーが最も表現しやすい写真のクオリティーは大切なのです。
ただし、一般的なカラー複合機は力不足。闇は単純な黒ではなく、さまざまな濃淡が存在するのですが、塗りつぶしたような黒ベタになってしまいます。照明光も、色温度はさまざまですが、経験上、カラー複合機では本来の色よりも黄色みがかったり、赤みがかったりしがちです。
ですから、高画質化が進むモニター上で“光”をプレゼンすることが多くなっています。ただし、その正確さや美しさはモニターの性能に依存し、同じデータを違うモニターで見ると、印象がまったく変わることがあります。
一方、紙に印刷した写真は みんなが同じ出力物を見ることになるので、モニターで起こりうる認識のズレが生じにくいという長所があります。写真を正確かつ美しく描けるプリンターさえあればいいのに……そう思っていました。

そこで今回、「imagePROGRAF PRO-1000」(以下、PRO-1000)というプリンターを使ってみたのです。素直にいうと、その表現力の高さに驚かされました。何といっても“光”が正確かつ美しく表現できています。「PRO-1000」は12色ものインクを組み合せて描画するので、竣工写真で撮影した“光”の姿がそのまま出力されます。特に、黒系のインクが4色搭載されており、闇を私の思いどおりに描き切っていますね。代表作である「東京スカイツリー®」(2012年)においても、都会の闇にたたずむ「東京スカイツリー」が美しく表現されています。照明計画としては、和を意識した柔らかな水色と紫色という2つのアクセントカラーの共演を見せ所としていますが、そのコンビネーションも実に美しく感じられます。

写真:夕景に浮かぶ「東京スカイツリー®」をキヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]で印刷したもの夕景に浮かぶ「東京スカイツリー®」をキヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]で印刷してみました。空に浮かぶ雲までを描くことができており、リアリティーの高さが見るものの目を引きつけます。

写真:「東京スカイツリー®」の写真を印刷したもの(左)カラー複合機で印刷(右)「PRO-1000」で印刷「東京スカイツリー」の写真をカラー複合機(左)と「PRO-1000」(右)で印刷してみました。建物はもちろんですが、背景となる闇の表現力に大きな違いがあることが分かります。アクセントカラーである水色の光もきれいです。

ただし、写真は完成後の“光”を伝えるもの。計画段階はほかの手法で“光”を表現する必要があります。配灯図のみではイメージを伝えられないので、私たちは完成後の姿を正確に予見したCGを作成しています。描画の精密さは写真と同レベルですが、カラー複合機による印刷では、ディテールまでが伝わりません。こうしたジレンマも「PRO-1000」を使えば、設計者のイメージを忠実に伝える品質で、欲しいときにすぐ出力できます。これも12色のインクがなせる技ですね。

写真:ランドスケープ照明のCGを「PRO-1000」で印刷したものランドスケープ照明のCGを「PRO-1000」で印刷してみました。植栽に跳ね返る“光”がとてもリアルで、写真と見間違えるほどの美しさが感じられます。手間をかけてCGを作成した価値があるというものです。

A2対応の小型モデル。

A2対応というのもいいですね。ディテールが大きく表示されるので、大きな建物の配灯図チェックがかなりはかどります。A2はモノとしての存在感もあります。何人かで1枚の写真を覗き込んで会話しやすいですし、印刷した写真を事務所の壁面に飾ると、来客へのPR効果絶大でしょう。そんなA2の写真を出力するプリンターが手元にあるからこそ、プレゼン間際まで安心してアイデアを盛り込めるし、外注では不安な機密性の高いものを出力できるという、代えがたい安心感につながるのですね。
最後に、本体そのものの魅力を挙げておきます。「PRO-1000」はA2対応ながらも非常にコンパクト。スペースが限られる私たちのような小さな事務所にも置きやすいのがとてもよいです。黒をまとったボディーもそのコンパクトさを強調しており、とても格好いいですね!

写真:計画中の配灯図をしたもの (左)「PRO-1000」でA2印刷(右)カラー複合機でA3印刷計画中の配灯図を「PRO-1000」ではA2(左)、カラー複合機ではA3(右)で印刷してみました。天井に散りばめたダウンライトの取り付け位置を確認しているのですが、取り付け数が多いので、A2のほうが位置関係を把握しやすいです。

写真:竣工写真をA2で印刷し、スタッフとともに確認中の戸恒浩人様竣工写真をA2で印刷し、スタッフとともに確認しています。写真は世界遺産に登録されている丹生都比売[にうつひめ]神社(和歌山県)の輪橋をフレキシブルなLEDライン照明でライトアップしたカットで、闇にうかぶ輪橋が美しいです。スタッフ全員が「PRO-1000」がもつ闇の表現力に感銘を受けました。

戸恒浩人(とつね・ひろひと)/シリウスライティングオフィス

1975年生まれ。東京都出身。東京大学工学部建築学科卒業。2005年シリウスライティングオフィスを設立。現在は香港にもオフィスを構える。「東京スカイツリー®」(2012年)の照明計画を手がけており、’11年IALD Award of Merit、’13年IES Illumination Award Distinctionを受賞。その他、受賞歴多数写真=平林克己

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