
工業大学として創立し、総合大学へと変革しながら創立者の「不言実行、あてになる人間の育成」の理念の元に、チャレンジする勇気と実行力を持つ学生を育成している中部大学。その多様な専攻の中で、機械工学科の精密加工学を専門とする研究室では、非球面光学部品など微細部品の超精密加工と計測に関する研究開発を担っています。2007年ZYGO技術セミナーでご講演も頂きました、工学部機械工学科 教授の鈴木浩文様にお話を伺いました。
-----先生の研究室のミッションや役割をお聞かせください。
私の専門は、光学部品などの超精密加工・計測です。そのため、それらの部品が使われる工業製品の役に立つ、実用的な研究をすることを信条に活動しています。論文のための研究はやらないのが持論です。大学や研究所だと、特に10年20年といった長期的な視野で研究を進める方もいらっしゃいますが、我々は近いところ、数カ月から3年で実用化できるものに注力しています。工業製品に用いるという明確な背景があるテーマですので、短いタームで研究し、成果を出すことは大変重要です。もちろん、そのためには実際に工業製品を製造・販売しているメーカーに近いところでやることが必要で、皆さまとの関係作りができる活動も行っています。今までも工具、工作機械、光学、金型、電気、計測とさまざまな分野の皆さまと共同研究を行ってきました。
-----2009年6月に「超精密加工研究会」を立ち上げられましたよね。
はい。ありがたいことに、今年の3月で8回を数えました。毎回大学や企業の皆さまから加工や計測に関する最新の技術紹介や研究成果の発表をいただいています。研究会の後には毎回簡易的なパーティーを行っており、横のつながりを作ることができる交流会としての役割も担っています。超精密の加工や計測の分野におけるメーカーの皆さまとのつながりを振り返ると、最近は大手よりもむしろユニークなアイデアをもった中小の方が多いですね。大きな研究開発予算をお持ちの方が少ないことも背景に、我々のような大学の研究室が実務の役に立つ研究を行い、その成果をフィードバックすることは、大変大きな社会貢献になると感じています。

-----計測もテーマとされていますが、現在はどのような部分に注目されていますか。
加工と計測は両輪です。よく言われることですが、測れないものは作れません。そこでいつも課題になるのがその精度です。測定精度=加工精度ですから。加工したものを計測し、それをさらに加工にフィードバックさせることで加工精度が高まりますので、加工を追求する上では計測の追求も必要になるのです。
今はグリーンテクノロジー、低消費電力を追求するための加工において、加工機がどんどん高精度になってきています。加工した非球面の計測例を挙げますと、私も25年くらい前から使っているプローブでの計測をはじめとして主に3つの計測方法があるのですが、これが一致せずに困っています。しかも最近は回折格子一体化レンズなどの不連続的な面形状が増えているのです。このあたりは我々も計測について研究しておりますが、ZYGOにも期待している分野です。
-----先生ご自身ではどのような計測機を開発されるのでしょうか。
一言で言ってしまえば、難しいもの、ですね。難しい形状、という着目点以外でも、温度ドリフト、時間ドリフトの発生を抑制するアイデアについてや、軽くして持ち運びできるようにすることなど、テーマは色々とありますよ。ちょっと話がずれますが、加工機の立場ですと微細な形状を加工する上での工具の寿命が問題になっていますね。最近は太陽電池用のフレネルレンズ、照明用LEDウエハーレベルレンズアレイなどに微細な形状を加工する用途が増えているので、非常にホットな話題なのです。
-----ところで、ZYGOはいつごろからご存じでしたでしょうか。
三菱電機時代に使用したMarkⅡ(注:1980年発売のZYGO製レーザー干渉計)が最初です。20年以上前に尼崎の研究所で使用していました。現在は私の研究室でもZYGOを所持しており、レーザー干渉計はGPI-XP/Dを、粗さ計はNewViewを使わせてもらっています。特にナノレベルの粗さについてはNewViewが基準になっているほどですよ。
教育としてもZYGO製測定機はとても良いツールですね。卒業後にも使えるスキルを身につけることにもつながりますので、良い設備があることは学生の就職も有利になる要因につながると感じています。

-----先ほども挙がりましたが、ZYGOへはどのような期待をお持ちでしょうか。
光の波長で可能な計測の限界まで、いきつくところまで。難しい形状こそ対応できるようチャレンジして欲しいですね。現状の触針式では膨大な時間がかかってしまいます。VFA(注:ZYGO製の非球面が計測可能なレーザー干渉計)などの干渉方式は非常に興味深い手法ですので、さらに複雑な形状へも応用していただきたいです。
鈴木先生の研究室がお持ちのさまざまな設備を拝見させていただきました。測定機には、ZYGO社の計測機2大ラインアップである粗さ計のNewView、干渉計のGPI-XP/Dの両方をお使いいただいております。


-----最後に先生の今後の活動や目標をお聞かせください。
最近は、いかに低コストで作るのか、これに尽きます。精密加工にはLED、車載カメラ、ウエハーレベルカメラなどの新しいアプリケーションは多く出てきていますが、経済の低迷によって新たな展開、低コスト化の圧力に対してすごいものがあります。そのための問題点の一つにダイヤモンド工具の寿命というものがあります。ナノダイヤなど、多結晶でも粒子が小さいものの活用といった材料分野からのアプローチが重要になると考えています。理研の山形先生、東大の樋口先生との連携も進めています。難しいものにチャレンジして、日本に加工や計測の技術を残さなければとの思いを持って活動しています。
また、最近は自分で考える力が弱くなっている学生が多いと感じています。後藤新平の有名な言葉に「財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」とあります。人間の育成を理念に掲げる大学として、実行力があり信頼される人間となれるように学生を指導し、社会へ送り出さなければなりませんね。
今後も、「ものつくり」と「ひとつくり」、この2つの側面から地域の産業を支援してまいります。

鈴木 浩文 様(すずき ひろふみ)
- 現職
- 中部大学 工学部機械工学科 教授
- 学歴
- 1985年3月31日 大阪市立大学大学院 工学研究科機械工学専攻 修了
1997年9月30日 東北大学より工学博士の学位授与 - 職歴
- 1985年4月1日 三菱電機株式会社 生産技術研究所 研究員
1994年4月1日 同社 生産技術センター 主事
1996年4月1日 東北大学 工学部機械電子工学科 助手
1998年4月1日 防衛大学校 機械工学教室 講師
2000年4月1日 豊橋技術科学大学 生産システム工学系 助教授
2003年4月1日 神戸大学 工学部機械工学科 助教授
2008年4月1日 中部大学 工学部機械工学科 教授






