2006年に公開された「パビリオン山椒魚(主演:オダギリジョー)」で、一躍人気を得て、いま新進気鋭の若手映画監督として注目されている冨永昌敬監督。彼の次回作は安彦麻理絵原作のコミック「コンナオトナノオンナノコ」(2007年秋公開)の実写版だ。この作品は全てキヤノンXL H1で撮影、また監督自らノンリニア編集を手掛けられていることにも注目だ。作品完成間近の編集室に、冨永監督ご自身と、自主制作時代から一緒にタッグを組む月永カメラマンを訪ね、XL H1による映画製作の魅力とデジタルシネマの可能性について伺うことができた。
image
監督:冨永氏
■DV撮影の不満を乗り越えられるビデオカメラ
―今回の作品撮影にXL H1を選んだ理由とは?
冨永: 僕はこれまでの作品も基本的にはデジタルビデオ(DV)で撮影してきました。前作の「パビリオン山椒魚」が唯一というか、35mmで撮った初めての作品だったので、その他はこれまでも大学卒業以来ずっとDVで撮っています。何年も前の話ですが、以前自分は他社のDVカメラで撮っていたときに、ある人がキヤノンのビデオカメラ(XLシリーズ)で撮っているのを見て「キレイに撮れるものだな」と感心した覚えがありました。それまで他社の画しか知らなかったので、そのときの印象は自分にとっては新鮮なイメージでしたね。そして、これまでDVで撮ってきてずっと思ってきたことですが、撮影中にモニターで思ったとおりに撮れているように見えていても、いざ劇場で上映してみると思ったとおりに映っていないということが多かったんです。今回はこうしたDV撮影の様々な不満点を、このキヤノンのHDVで乗り越えられるかなと思ったこともあって、XL H1を選んでみました。
―実際に撮った映像についての感想は?
冨永: 今回XL H1で撮影したものを、僕自身が確認したいというだけの目的で深夜の映画館を借りてラッシュ試写を行いました。DLPプロジェクターでの上映でしたが、「XL H1は映画のために作られたビデオカメラだ」と僕自身、勝手に納得させて頂きました(笑)。  このとき実は、劇場側の設備の問題で、HDV(HD)で撮影したものをDVCAM(SD)にダウンコンバートしたものだったのですが、それでもとても画質はキレイでしたね。XL H1を使ってよかったと改めて思いました。今回初めてのHDV1080/24Fで撮影したのですが、HDVで撮るのも初めてで、画の印象としてもDVの時代とは根本的に違いますから、もちろん画質がキレイなことは確かなのですが、正直に言って「これ、どうしよう!」っていうくらいキレイだったのには驚きました。これは凄くわがままな話ですけれど(笑)。
■使い慣れるほどに実感するXL H1のポテンシャルの高さ
―実際の撮影におけるXL H1の使用感は?
月永: 僕もXL H1を映画撮影に使ったのは今回が初めてでしたが、映画撮影のためのカメラという印象を強く受けました。使用レンズはキヤノン純正の標準20倍HDレンズと6倍ショートズームと半々くらいで使っています。使いはじめは、特に操作性という点で、他のカメラと違う部分として操作の慣れというところが不安でしたが、使い慣れてくるとカメラ自体のポテンシャルというか、(カスタムプリセットなど)色々なことが出来るということが判りました。今回は多少色を抜くぐらいの感じで、なるべくノーマルに近い感じの画で撮影しており、後で多少いじっても破綻しない程度の画作りを目指しました。素材がキレイであれば、その後合成処理などをしても問題も少ないと思うので、元々の素材がキレイなことは重要だと思います。
―カスタムプリセット等の詳細設定について
月永: 今回の撮影では撮影期間も短くてカメラを充分に使いこなすまでの時間も無かったため、細かいところまでを把握してフルにその機能を活かすところまではいきませんでしたが、多少の調整はしています。基本的にはゲインを6dB上げて、多少色味を抜き、ブラックをプレス、ニーをローにするくらいでしたが、DVで撮影している感覚と比べて、いつもよりも画自体も潰れないし、白も飛ばないという印象でした。次回使用する際は、カスタムプリセット等をもっと調整して、XH G1/XH A1も含めて、さらに深く使いこなしてみたいですね。
image
撮影監督・カメラマン:月永氏
―他のビデオカメラと比べてどう感じましたか?
月永: 例えば、これまで良く使っていたDVカメラの苦手な部分というのが、白が飛んだ所の飛び具合というのが、デジタル感が出すぎてしまっているところだと思うのですが、これに比べてXL H1はその辺が押さえられていて、この部分が比較して一番良かったところです。もちろん色調整も幅広く、鮮やかな方にも色を抜く方向にも、細かく調整できるという部分も良いですね。
■フィルム時代ほど制作レベルの差が 出ないことがデジタルシネマの良さ
―デジタルシネマへの可能性について
image
月永: 映画がデジタルビデオ撮影になったことで、誰にでも映画が撮れる可能性は確かに広がったとは思いますが、それがイコール、誰もが簡単に良い作品が撮れるようになったわけではないと思います。やはり様々な撮影条件や環境に合わせて、撮り方を習得するなど、デジタル撮影を勉強する必要はあると思いますが、素材としての間口が広がったということは言えると思います。
冨永: そもそも映画を撮るという条件において予算や制作環境の面で考えると、恵まれた環境/条件を得られる場合と、そうでない場合という風に分けられると思うんです。だから制作環境的にも予算的にも恵まれてない場合は、今はもうデジタルビデオで撮るしか道がないんですね(笑)。でもフィルムの時代と、現在のデジタルビデオ撮影の時代とは明らかに違いがあって、例えば35mmフィルムと8mmフィルムでは、画の質感としても明らかな差がありますが、デジタルビデオの場合、フィルムの時ほどHDCAMとHDVの画質に差はないと思うんです。実際に小さなミニDVカメラ(SD)で撮った劇場映画作品も沢山ありますから。その辺にデジタルの可能性というか、良さがあると思います。あとは僕自身のデジタルビデオへの要望としてですが、HDVテープにしてもせっかく大切に撮影した素材なのに、あの小さなテープサイズというのがどうも有り難味がなくて・・・(笑)。学生時代でも16mmで撮っていたので尚更そう感じるのかもしれませんが、個人的にはもう少し大きなテープパッケージだと嬉しいですね(笑)。
『 コンナオトナノオンナノコ 』
監督 編集:冨永昌敬 撮影:月永雄太
キャスト:エリカ/桃生亜希子/水橋研二/斉藤陽一郎 
配給:アムモ
©2007 コンナオトナノオンナノコ Partners
今秋、池袋シネマ・ロサにて公開
(印刷用PDFはこちら) 1.5MB
ページトップへ
(C)Canon Inc. /Canon Marketing Japan Inc. since 1996
close