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| ■敏腕ディレクターたちの合同演出によるドキュメンタリータッチの青春映画で自然な空気感を演出 |
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| 2008年初夏に劇場公開された映画『山のあなた 徳市の恋』(主演:草彅 剛)では、日本映画らしい淡く繊細な世界を描き上げた石井克人監督。そして彼のもう一つの面でもある、現在国内でも最も多忙を極めるCMディレクターとしての活躍も目覚ましい。そんな石井監督が、映画『ナイスの森 The First Contact』(2004)でタッグを組んだ、三木俊一郎・ANIKIという、2人の著名ディレクターたちと再びタッグを組んだ映画作品が『そらそい』だ。 『ナイスの森〜』では3人が別々の短編を演出したが、今回は3人で一つの物語を演出するという共同演出という手法で、石井・三木が演出を、ANIKIが監修を担当し、そしてもう一人、女性監督でありフォトグラファーのオースミユーカが撮影に参加。
伊豆を舞台に、大学のダンス部合宿のひと夏のエピソードをさわやかにコミカルに描くこの青春映画作品は、ちょっと変わった手法で制作された。
石井克人監督が思い描くリアルな青春の日常を描くため、新人役者を発掘すべくワークショップを開催、そこで出演者全員をゼロから演技指導して育てることで、監督達の知識を100%伝授した上で、制作するという方法を採用した。芝居形式もお決まりのセリフなどは用意せず撮影現場で、即興で作り上げるという手法で撮影が開始された。2008年夏、伊豆にて全編撮影されたこの作品収録には、キヤノンのデジタルビデオカメラXL H1SとXH G1が採用された。 |
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| ■気ままに自主映画を撮りたかった |
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― 石井克人監督は、前作『山のあなた 徳市の恋』で、清水宏監督(?)の『按摩と女』(1938年)の完全カヴァーとしてこの作品を作った。このメカヴァーモとは音楽業界の用語としてよく用いられる表現だが、リメイクやコピーではなく、自分なりの解釈で新たな表現をするという意味だ。
生涯にわたって伊豆の風景と自然を愛した清水宏監督の手法を敬愛する石井監督は、今回『そらそい』で清水監督の気ままな作風を再現したかったという。 |
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| 石井克人監督(以下、石井):「当初この作品は、新人の役者のためのワークショップを2ヶ月やっていて、その最後にショートストーリーを撮るという予定だったのですが、そこに集まった11人が『そらそい』のイメージにピュアな感じがとても合うので、ちゃんと1本映画を撮ろうということになりました。僕自身は、最初の映画作品『8月の約束』の時、自主制作映画ならではの、現場の雰囲気が非常に好きで、もう一度あの雰囲気で撮りたいという気持ちがありました。僕にとって『8月の約束』という映画のメ気ままに撮るモといった感じの体験が非常に大きかったので、それを再現したかった。また清水宏監督の『かんざし』という映画があるんですが、この『そらそい』はこれをモチーフにして作った作品です。清水監督は生涯で163本の映画を撮った人なんですが、その、実に気ままに撮っている感じがいいんですよね。そこに共感して、その気ままに撮る感じを再現したかったのが、この『そらそい』なのです。」 |
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| ■自然を映し撮る、素直な画が作風にマッチ |
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| ―『そらそい』は西伊豆の松崎町を中心に、ほぼ全編伊豆で撮影された。セットなどは立てずドキュメンタリー風に現存する風景をバックに撮影されている。収録にはXL H1Sをメインカメラとして、BカメにXH G1を使用。メインカメラは石井監督自らが廻している。 |
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| 泉 高志氏(以下泉):「今回は石井監督が自らカメラを廻していて、僕自身は技術的なサポートがほとんどでした。XL H1SやXH G1の印象としては、まずはすごく明るいと思いました。ナイター撮影でも多少ライティングはしているのですが、ほとんどノーライト、もしくはアイランプ1燈でも撮影出来ました。カメラ側で多少暗部は持ち上げたましたが、ゲインを大きく上げなくても充分撮影できました。作品を通じて監督がドキュメンタリーっぽい画風を望まれていたので、この辺りの機能も、そうした要望に応えられた理由だと思います」。 |
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| 石井:「XL H1Sはとても使いやすかったですね。筐体も軽くて扱いやすく、画質もサラサラした普通な感じが素直で良いと思いました。特に6倍ワイドズームレンズは、キレが良く、非常に気に入ったので今回はメインに使っていました。あれだけキレが良いと他のカメラのレンズと合わせるのが大変ですね(笑)。僕は風景を撮るのが好きなのですが、朝方の温い風景の撮影などには、このカメラの画質はとても向いています。僕は以前、XH G1で宮古島の美しい風景を撮影したアート映像作品『U-BEE SCENERY』というのを作ったのですが、これが非常にきれいに撮れたのでこのカメラには良い印象を持っていました。その後、なかなかデジタルビデオで作品を作る機会に恵まれなかったのですが、いつかこのカメラ(XH G1)で長編か、ストーリーものを撮ってみたいと思っていたので、ようやく今回その機会に恵まれたというわけです」。 |
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| オースミユーカ(以下、オースミ):「私は今回XH G1でBカメを担当しています。出演者が多いので2カメが必要なところで少し撮影したくらいですが、機材としてはとても使いやすかったです。Bカメは寄りが多いので、手持ちが多かったのですが、私がこれまでよく使っていたDVカメラと比べても扱いやすかったですね。私自身は、最近では演出が多く、あまり自身でカメラを廻す事も少ないのですが、カメラを廻すことは演出とは違い、自分で画をコントロールする楽しみがエキサイティングで好きですね」。 |
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| 泉:「現場での面白いエピソードとしては、今回手持ち撮影も多かったのですが機動力を重視して1脚を多用していました。手持ちより揺れを安定させられると思っていたのですが、それに頼りすぎてしまっていたのか本番中どうしても笑いを抑えきれず振るえてしまっている石井監督をよく見ました。後で観るとやっぱり画も揺れていましたね(笑)。あとレンズが優秀なので、歪みが気にならなかったですね。旅館の畳の目などが、画全体でもちゃんと直線に出ているのは、レンズが優秀だからでしょうね」。 |
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| ■気ままに撮れる、優秀なビデオカメラが今後の映画界を作る |
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| ―10日間で総撮影時間33時間、一番長いカットで23分/1カットといった撮り方もドキュメンタリータッチだが、こうした撮影にチャレンジ出来るのもこのサイズのカメラだからだという。編集はFinal Cut Proで全て行い、最終的にはHDCAM、もしくはBlu-Layへ書き出して、映画祭出品や単館上映へ対応する。こうしたコンパクトな製作システムは今後の映画をどう変えるのだろうか? |
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| 石井:「今回、10日間の撮影で6日間のお話を撮るということは、結局撮影作業自体がドキュメンタリーなんですよね(笑)。脚本もほとんど無くて、役者におおよその宛書きで設定の説明をして、ほぼ即興で演技してもらうといった手法でした。また今回の作品では90分ですが、ロングバージョンを別に制作してそれを切り分けて配信するWebドラマも考えています。作品をコンテンツとして色々とやりくりできるのも、ビデオカメラで気軽に廻せたので出来ることですね」。 |
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| オースミ:「私も今後、劇場公開予定の短編作品を撮る予定がありますが、これもデジタルビデオカメラで撮影する予定です。私はいままで映画から色々なものを与えてもらったので、とにかく映画の神様に少しでも恩返しできるようなものにするつもりで撮影に臨もうと思っています。また、お話を作るのが好きなので、これからはこうしたカメラで気ままに映像化していきたいなと考えています」。 |
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| 石井:「僕もまた『茶の味』のような単館映画というのを撮りたいんですが、いまの映画界的には、そういう作品を作るのはなかなか難しい状況があります。やはり興行収入や話題性を考えると役者や原作ありきだったりしますから。僕はCMも商業映画も作っていきますが、個人的にはこうした自主映画ノリの作品は、今後も作り続けていきたいですね。(日本映画には)作家が言いたい事をそのまま伝えられる作品も必要だと思うのです。そういう作品を撮るためにも、こうしたコンパクトで高機能な機材は大事だと思っています」。 |
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| ※清水宏(1903-1966):小津安二郎、溝口健二と同時期に活躍した映画監督。松竹蒲田撮影所に入社後、21歳で「峠の彼方」で映画監督デビュー。その後の大女優、田中絹代とも同棲生活を送る。若大将シリーズの原型となる「若旦那シリーズ」などを発表。1936年の「有りがたうさん」は全編ロケで撮影する「実写精神」という方法を用いて、自然の中で演技を発展させる手法が評価された。 |
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