キヤノン Xシリーズ 導入事例

「ユニコーン ロサンゼルス密着撮影レポート」決め手は「小さくて軽い、4:2:2方式の採用」大沢昌史監督にインタビュー。

フリーランスの映像監督・大沢昌史氏(イメージ)

ライブやドキュメント映像のジャンルで活躍するフリーランスの映像監督、大沢昌史氏。最近手掛けた作品群にはロックバンド「ユニコーン」関連が特に話題だ。16年ぶりの再始動で、いきなり週間売り上げ1位となったアルバム「シャンブル」の初回生産限定盤の映像を監督し、ユニコーンの活動再開からをドキュメント化したDVD BOX「勤労ロードショー ~MADE IN JAPAN~」はほぼすべてを大沢氏が収録している。そして、4月27日に発売したシングル「デジタルスープ/ぶたぶた」の初回生産限定盤のドキュメンタリーも大沢氏が密着撮影を敢行!今、ユニコーンの数々の映像に携わる大沢氏に、新作映像の舞台裏を聞いてみた。(white-screen.jpより転載)

フリーランスの映像監督・大沢昌史氏

コンサートやドキュメント映像で活躍中のディレクター

ユニコーン「デジタルスープ/ぶたぶた」(イメージ)

大沢氏によるロサンゼルスレコーディング風景が収められたユニコーン「デジタルスープ/ぶたぶた」

XF105は、CFカードに記録するので、64ギガバイトあれば50Mbpsで約160分の撮影が可能。バッテリーはメモリーで駆動部がないため、従来のビデオカメラに比べると省電力で長持ちする。そのため、荷物を減らすことができたといえる。

「コンサートの撮影で意識していることは、まず舞台演出を理解することです。アーティスト本人や舞台制作、照明などが一体になって、何を表現しているのかをいち早く理解します。その中でどのカメラで何台で撮るか、など最適な方法を限られた時間と予算の中でリサーチし、コミュニケーションすることを心掛けています。そうした積み重ねの中で、だいぶコンサートスタッフに理解をしていただけるようになりました」

MVは頻繁ではないものの、最近の監督作ロックバンド「GRAPEVINE」のMV「風の歌」や、MV「真昼の子供たち」は撮影から編集まで自ら担当している。これらの大沢氏の映像の特長は、エフェクト等を極力使わず、生の映像で見せていること。シンプルで音楽の邪魔にならないことを意識して演出している。

「MVは演奏しているだけの映像が好きですね。音楽がストレートに感じられる映像にしたいです。だから自然とMVよりもコンサートやドキュメンタリーが増えていったのかなと思います」

大沢氏がこうして映像制作に従事するようになったきっかけは音楽への情熱だ。大手レコード会社でビデオ制作のアシスタントとして働いた若い頃を、こう振り返る。

「学生時代にバンドをやっていて、ミュージシャンになりたかったのですが、周りも進学などでなんとなく消滅してしまいました。そこで音楽業界を見ておこうと思い、大学に入学してすぐにアルバイト雑誌を見て、ビデオ制作のアシスタントに一般応募をしました。その中で一番若かったようで、ユーザーに近い目線で仕事ができることから受かったようです。入ってからはMVからライブ、フィルムコンサートなどの仕事がありまして、ほとんど帰れませんでした」

アシスタント時代にはいろいろな刺激的な出会いもあった。中でもTHE MODSやTHE STREET SLIDERS、TM NETWORK、渡辺美里などの映像を手掛けた坂西伊作氏との出会いは貴重であった。

「映像監督の坂西伊作さん(故人)の最初のアシスタントとして入りましたが、鋭い感覚の持ち主でしたね。今でこそMVは当たり前のものですがその当時は少なく、日本のMVの草分け的な存在で、非常に影響を受けました」

ロサンゼルスでユニコーンを密着撮影

「SUNSET SOUND」(イメージ)

レコーディングスタジオ「SUNSET SOUND」を背景に

今、ユニコーンのファンが楽しみにしているのが、4月27日に発売されたシングルの初回生産限定盤に収録される映像だ。メンバーのレコーディング風景に留まらず、打ち合わせや食事に至るまで相変わらずの密着具合で収録されている。

「ユニコーンとの最初の出会いは、1987年のデビュー時でした。その後、2009年1月1日にユニコーンは16年ぶりの再始動を発表しました。現場ではそれよりも前からレコーディングが水面下で行われていました。“5人が10何年ぶりに揃うので記録しておきたい”と連絡をもらったのがきっかけでした。
それらをアルバム「シャンブル」の初回生産限定盤特典として発売してみると、大変好評でした。やはり楽しそうな5人のメンバーの姿を映像で見ると“あっやっぱりユニコーンは変わっていないんだ”というのが伝わったようです。そして、今回の4月27日発売のシングル「デジタルスープ/ぶたぶた」の初回生産限定盤に付属するDVDにロサンゼルスのレコーディングの様子も収録することになりました。ユニコーンにおいて、撮れるものはすべて撮るようにしています。いつなんどき話が盛り上がるか、そして“あの一言がきっかけでこうなった”ということを映像として表現したいので、一言一言の撮り漏れがないように気を付けています。」

ロサンゼルスの撮影が決まると、大沢氏はまずカメラの吟味から始めた。MVの撮影ですでにEOSの動画撮影機能を使用したことがあり、EOSの画質の良さは体験済み。EOSも当初は候補であったが、今回のドキュメント撮影にさらに適したカメラはないかと探していた。ドキュメント映像の撮影は一人で収録することが多いので、ボディのサイズはできるだけ小型にしたい。そこで最終的に選んだのが画質は重視しつつボディの重量が1070gとコンパクトなキヤノン XF105だ。

「普段から常にカメラを持って撮りたいほうですし、ロス行きが重なったこと、従来使っていたカメラがSDだったことも導入のきっかけになりました。また、ドキュメント映像の収録は基本的に一人で行います。音の調整やテープチェンジなどもすべて一人で行い、三脚やレフ板も常備しながら収録します。そこで選んだのがキヤノンXF105です。決め手は小さくて軽いこと。カラーサンプリングに4:2:2方式を採用していること。4:2:2方式はロス行きの前にテスト撮影をして映像をポスプロで検証してもらったのですが、スタッフの評価が高かったです。そして、デザインがキュートなことです。デザインは常に手元に置いておきたいので、凄く重要視しています。また、記録/再生信号形式が24Pに対応していることも条件でした」

マニュアルリング切り替えスイッチ(イメージ)

マニュアルリング切り替えスイッチは「フォーカス」「ズーム」「アイリス」の切り替え式。今回では「フォーカス」 に設定した

「スタンダードIS」を選択(イメージ)

手ブレの少ない安定した映像を撮影できる「手ブレ補正機能」。3種類の補正モードのうち、カメラが静止時の手振れを補正する「スタンダードIS」を選択した

「Both」を設定(イメージ)

ズームの動作を滑らかにする「ソフトズームコントロール」の画面。3種類の減速が搭載されており、今回はスタートとストップ時に有効になる「Both」を設定した

ロサンゼルスのレコーディングの収録はXF105に決定し、他に外部マイク、CFカードは32GBが6枚、映像データのバックアップ用に1.5TBのハードディスクが2台、Macを1台を持ち込んだ。そして、基本となる設定は、XF105の色味は現地でもテストをした結果、スタジオや野外などいろいろなシチュエーションを撮るので、コントラストはソフトなものにしたかった。そこで「カスタムピクチャー」の「Gamma」は、コントラストがソフトな「Cine 2」を選んだ。解像度とフレームレートは1080/24Pだ。
XF105で現場を撮影してみて最初に気が付いたことはオート機能の利点だ。ホワイトバランスやアイリスをオートとマニュアルの相みつをとって使用している。また、XF105にはフェイスキャッチテクノロジーといった、民生機ではお馴染みのアシスト機能が搭載されている。これらの機能も常に活用して撮影が行われた。

「レコーディングの撮影はメンバー5人を同時に撮ることが多いです。その5人が“いつ”“どこで”“誰が”ひょんな一言がきっかけで盛り上がるかわからないので、カメラの電源は常に入れておかなければいけません。しかも、スタジオ内は暗い、ロビーは蛍光灯、中庭は晴天とシチュエーションによってホワイトバランスがまったく異なるので、設定は固定というわけにはいきません。かといって、マニュアルですべてやるのには時間がかかります。そこでまずオートで対応して、撮影中にマニュアルに切り替えて補正するという使い方をしました。XF105のマニュアルリングは“フォーカス”“ズーム”“絞り”の切替式なのですがフォーカスに設定しました。カスタムダイヤルは“アイリス”に設定しました」

「また、フェイスキャッチと呼ばれる顔認識機能も使用しました。従来の顔認識機能だとフレームから人がいなくなると、フォーカスがどこに合わせていいのかわからずボケてしまうことがありました。XF105はフレーム内に人がいるときは顔に合い、フレームから人がいなくなると自然に背景にフォーカスが合ってくれます。自分は専業のカメラマンではありません。プロとの違いはフォーカシングのスピードと感じています。顔認識はこうしたフォーカスをアシストしてくれるので、非常に助かります。
手ブレ補正も使用しました。やはりハンディにならざるをえないことが多いので“スタンダードIS”と呼ばれる一番自然な設定にしています。個人的にはハンディ感のある映像のほうが好きなのですが、今回は撮影の段階での使用目的が決まってなかったので、見易さを考慮して手ブレ補正機能を使いました」

XF105のレンズは光学10倍ズームで、ワイド30.4mmと広い画角を実現しているのが特長だ。より広角のおかげで、車内やミキシングルームといった狭いところでもワイドコンバーターなしで対応が可能だった。

「ロサンゼルスではメンバー5人が車で移動することもあり、車内ではカメラとメンバーの距離が近くなります。こういう場合、従来のカメラだともう少しワイドが欲しいと感じていたのですが、XF105だとワイド端は35mmフィルム換算で約30.4mmと広角なのでワイドコンバーターがなくてもストレスなく撮れました。
また、ズームスタート時の加速やズームストップ時の減速を緩やかにする“ソフトズームコントロール”も便利でした。ドキュメント映像の長時間撮影ではどうしてもズームのコントロールミスが発生してショックが出ることもあるので、それをカメラ側で設定しておくことで回避できるのはありがたいです」

ドキュメント撮影はライティングを設置できるわけではないので、カメラの感度も重視される。今回の撮影では暗めのスタジオのシーンが多く、ゲインを調整して撮影することが多かった。

「スタジオは常に12dBアップで撮っていてもそんなにも気になりませんでした。野外の昼間は晴天ですが夜になるとハロゲンライトのようなライトだけになります。かなり暗いので24dBまで上げて撮りましたが、雰囲気は良かったです。粒子は出ますけれども、いやな粒子ではありません」

ファイルの取り込み作業中(イメージ)

大沢氏の室内にて。ファイルの取り込み作業中

現地でのレコーディング模様をユニコーンのオフィシャルウェブサイトでチラ見せする「O(オー)点観測」という企画も、1月15日から1月30日まで行われた(現在も視聴可能)。こういったネット配信にはファイルベースのカメラであれば対応が容易になる。

「当初、現地ではドキュメント映像のためだけにしか撮ろうと思っていなかったのですが、ロサンゼルスでメンバーのほうから、“現地の様子を少しずつ配信したら面白いのではないか”という提案で定点観測的な狙い、“O(オー)点観測”が決行されることになりました。手順はFinal Cut Proで配信するカットを切り出し、QuickTimeにしてデータを東京に送りました。毎日CFカード5~6枚に撮った中から、あらかじめ“このあたり”というのを録画時にメモをし、取り込んで切り出しました。毎日ワンアイテムUPするというのがコンセプトだったのでそれなりにプレッシャーがありましたが、XF105がファイルベースであったおかげでスムーズに行えました」

撮影後のワークフローはFinal Cut Proで素材を取り込んでオフライン編集を行い、Avid DSでオンライン編集後、HDCAMで納品した。

ロサンゼルスでユニコーンを密着撮影

大沢氏は今後、XF105をコンサートでも使ってみる予定だ。HD-SDI/SD-SDI端子とタイムコード端子、GENLOCK端子を搭載しながらかなり小型という特長を生かして、従来ではできなかった収録をいろいろ考えている。

「コンサートの撮影といっても規模も予算もさまざまです。規模の小さいコンサートでEOS 5D Mark IIの動画撮影機能と組み合せた場合にどうなのかとか、大きいところだと放送用のカメラに混ぜたらどうなのか? と興味が絶えません。放送用のカメラの中に混ぜたりするのにもGENLOCK端子とHD-SDI/SD-SDI端子があるのでスイッチングにもいれられますし、モニタリングも楽ですね。
また、コンサートの場合、ドラムやキーボードの手元を撮る固定カメラでいつも頭を悩ませます。テクニカルディレクターといろいろ試行錯誤しているのですが、高画質のものはカメラのサイズが大きくなる、小さいものは画質が若干放送用に比べると落ちます。その点XF105は色情報が多く収録できる4:2:2方式に対応しているので、ぜひためしてみたいですね。
あと、あらかじめ設定した記録間隔とフレーム数で間欠的に記録を行うインターバルRecと、あらかじめ設定したフレーム数分の映像を記録するフレームRecなどの特殊記録も気になります。インターバルRecは雲の流れとか車の撮影に使えそうですね。フレームRecはコマ撮りをやってみたいです。両方の機能を搭載しているカメラは意外と少ないですよね」

ドキュメント映像にうってつけな業務用カメラというのは、なかなか存在しなかった。近年、小型のカメラが各社から発売されてきているが、24PやSDI端子を搭載、4:2:2方式に対応して小型となるとXF105に絞られてくる。XF105の登場によってドキュメンタリーやコンサートの収録に変化がでてきそうだ。大沢氏の手掛ける今後の映像が楽しみである。

大沢昌史(おおさわ・まさし):

日本を代表する洋画家・大沢昌助を祖父に持ち、ピアニストである祖母の音がもれ聞こえるアトリエが幼少期の遊び場だった環境から、自然と音楽映像の道へ。独学でライブ、ドキュメント、MVなどの監督をする。細部までこだわった「ざっくり感」は定評あり。現在ユニコーンMVをメンバーと共同で爆笑制作中。

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