キヤノン Xシリーズ 導入事例

3D撮影に適した機能と性能。コンパクトさを活かして撮影された3Dショートムービー「フレグランス」

カメラマンの尾道幸治氏、ステレオグラファーの田中肇氏(イメージ)

17分強の3Dショートムービー「フレグランス」。同作品はドロイズ/TYOテクニカルランチ CRANKが協業で制作。企画や脚本の段階から3Dを前提として制作が進められ、リグ搭載用カメラにXF105が2台使用された。
撮影を担当したカメラマンの尾道幸治氏とステレオグラファーの田中肇氏に、撮影現場での使い勝手や使い回し、機能面や性能面についてお話を伺った。

カメラマンの尾道幸治氏(右)とステレオグラファーの田中肇氏(左)。ステレオグラファーは画のルックやトーンを含めて3Dのコンバージェンスなどの調整を行い、立体感の演出を担当する

XF105:3Dハーフミラーリグ(イメージ)

3Dハーフミラーリグに搭載されたXF105

XF105:Rチャンネル側(イメージ)

Rチャンネル側のXF105

――映画のプロジェクト内容についてお聞かせください。

尾道: この作品の監督が所属するdrawiz(ドロイズ )社で3D作品を企画されたのがきっかけです。同社はもともとCGによる3D制作を推し進めていた会社なのですが、今回は海外事業部もできたということで、実写の3D制作で先行している海外での宣伝活動にも役立つように実写で3D作品をつくることになりました。

3D撮影は市場的にお金のかかるものと思われがちですが、その点を打開したいという狙いがありました。また、撮影規模をコンパクトにして取り回しをよくしたいと思ったときに、カメラのチョイスとして挙がったのがXF105。とくに私は3Dで手持ち撮影をしてみたいと思っていたので、その点もXF105を使用した動機のひとつですね。

――XF105を最初に手にしたときの印象はいかがでしたか?

田中:私はもともとテレビの分野で仕事していたのですが、そういう分野で考えるととてもよいカメラだと思いました。放送に耐える画質として必要充分ですし、HD-SDIも搭載されていますからね。
今回はXF105の単体使用ではなく、最初から3D制作を前提にRedrover社の3D用平行リグや、ナックイメージテクノロジー社のハーフミラーリグを使用して撮影しました。

収録ベース(イメージ)

3D撮影の収録ベース

――3Dムービーの撮影にあたって、画質面やルックの調整はどのようにされましたか?

田中: 今回の撮影では30pでシネ系のガンマ「Cine2」を使用しています。あとはシャープネスの面でディティールは若干弱く設定し、ガンマを少し浮かしたりなど工夫をしています。
2台のXF105間でガンマ設定などのコピー機能もありますが、自分はわりとアナログ人間なので手動で設定してしまいました。コピー機能を使わなくても、2台を並べて納得のいく範囲のところまで細かく調整できるのは評価できますね。プロ用機としての調整機能は十分すぎるほど盛り込まれていると思います。

尾道:トーンに関しては、カスタムピクチャーの調整もいろいろ細かく設定できますしね。朝のシーンを夕方に撮りましたが、現場で田中さんに整えてもらった設定のままでカラコレもほとんど行わずに本編で使えました。

田中:ホワイトバランスはワンプッシュで設定し、さらに追い込んでマニュアルで整えています。これはどのカメラでも共通していることですが、それぞれ見た目でズレている部分は波形モニターで見て確認するようにしています。
1台で運用する場合には、XF105は色温度が100Kずつできるので、地明かりをもとに数値調整する際に重宝しそうですが、今回の3Dのような場合には感覚的に揃えました。

XF105:ズームやフォーカスを微調整(イメージ)

各シーンで2台のXF105のズームやフォーカスを微調整

――全体的な操作系の使い勝手はいかがでしたか?

田中: すごく扱いやすいカメラですね。コンパクトによくまとめあげられているという印象です。リングの粘りの感じも好印象でした。アイリスは小さなサブダイヤルで調整できるので、ワンマンオペレーション時の操作性は完結されている感があります。
液晶が100%表示になっており、デフォルトでアンダースキャン表示されているのは間違いが起こらなくていいですね。

尾道:画角などのマーカーもけっこう細かく設定できるのもいいですね。センターマーカーとセーフティーゾーンマーカーは90%、95%。80%もできますよね。

田中:スイッチの配列も個人的に好きな並び方していたので、すぐに慣れて扱いやすかったです。コンパクトタイプのカメラは現場でパッと渡されたときに「スイッチがどこにあるんだ?」ということがわりと多いんですよ。XF105では、その心配がなかったですね。
ただ、当然メニューにはいろいろな機能があるので、マニュアルを読まないとわからない部分もありましたが、逆にこんな機能まで搭載されているのかと驚く部分もありました。

SDIディストリビューター、マルチフォーマットルーティングスイッチャー(イメージ)

モニター出力用にSDIディストリビューターやマルチフォーマットルーティングスイッチャーが使用された

シンクジェネレーター(イメージ)

同期用のシンクジェネレーターも使用

ビデオディスクレコーダーで収録(イメージ)

プレーバック用にビデオディスクレコーダーで収録

コンバージェンス調整(イメージ)

チャート内のグリッドを利用してコンバージェンス調整を行う

――3D撮影における、XF105の機能面、性能面についての評価をお聞かせください。

田中:まずは、ゲンロックがかかる点だけでもすごいと思いました。今回は3D撮影用ということでシンクジェネレーターを使用しました。これで常時ゲンロックをかけて、タイムコードは電源のオンオフのタイミングで確認し、スレーブロックで対応しました。
これに加えてスキャンリバース機能までついているのは、まさに3D撮影のために作られているんだなと感じましたね。XF105のこの機能は遅延がない点も特長で、モニター上の見た目でも気になるようなことはありませんでしたし、編集時もズレは無くまったく問題ありませんでしたね。

ドリー撮影(イメージ)

XF105を搭載した3Dリグによるドリー撮影

筐体(イメージ)

3D撮影でもコンパクトな筐体を活かしたスムーズな制作が可能だ

――3Dリグに載せるカメラとしてのユーザビリティーはいかがでしたか?

尾道:XF105を以前にも触る機会があって、解像度やレンズの明るさが上位モデルのXF305を踏襲しつつも、コンパクトで軽くなっているということで注目していました。しかもゲンロックも効くわけですよね。
それに加えて、昨年のInterBEEで展示されていたRedrover社のリグを使用して撮影された画が非常にきれいだったので、今回採用することにしました。
平行リグで使う場合には3Dで使えるカメラは限定されるので、視差も小さく撮れるカメラということで絞っていったら、XF105しか考えられませんでしたね。

田中:あとは使ってみて気付いた点で、最近のカメラはズームポジションの表示が0~99というのはあるんですが、XF105の焦点距離ガイド機能でさらに細かく154ステップまで表示できる。これはすごく重要です。ほかの99ステップのカメラに比べると、かなり細かく厳密に扱えるので、この機能を信じて撮影することができました。これがあるかないかでは3Dカメラのチョイスに挙がるか挙がらないかくらいの違いがあると思います。
総じて見てみると、3Dの選択肢としてはとても優秀なカメラですね。ゲンロックがかかってなおかつゲンロック調整機能が搭載されているというのもしっかりしていると思いました。

尾道:あと軽さですね。リグで使う場合、XF305くらいの大きさでも載るじゃないですか。それでもXF105を選ぶメリットは軽量である点です。重さが約1.3kgなので、リグにショルダーを付ければ軽くて担げるくらいでした。3Dなので手持ちはバランスの問題がありますが……。

――ファイルベースフォーマットのMXFについて、利用された点がありましたらお聞かせください。

田中:今回は3D映画撮影ということで、画質面での設定はなるべく良いものをチョイスしたいので、フォーマットは50Mbpsを選択しました。ただ画質云々よりもファイルベースのメリットは編集に持っていくときにどう扱うかでしょうから、ドキュメンタリーやバラエティなどで迅速に仕上げたい場合に最も有効ではないかと思います。
ただし今回のような撮影でも、MXFでの収録ということでさまざまなソフトで対応できます。現場でデータ収録したあとにHDDに落とした場合など、クライアントに渡したあとのポストプロダクションワークフローで取り回しが良いという点は評価できますね。

――今回の3D撮影における、編集から上映までのワークフローをお聞かせください。

尾道:当社では撮影したデータと収録したバックアップデータをドロイズに持ち込んで、コンバージェンスとバーティカルの調整はFinal Cut Pro上でシーバレー社のプラグイン「Stereo 3D Toolbox 2」を用いて行い、その後、Autodesk Flintでコンポジット&カラコレなどを行っています。仕上がった作品は最終的に映画として公開が控えていて、まずは今年の6月17~24日に開催されるショートショートフィルムフェスティバルで新設された3D部門でプレミア上映されます。また、今後海外でも上映される予定です。

3D(イメージ)

香水瓶を手前に並べて3Dならではの奥行き感を狙った

――撮影された映像の仕上がりはいかがでしたか?

尾道:3Dの場合、立体感が破綻する恐れがあるので手前にあまりモノを置かないほうがいいと聞きますが、今回はストーリーのキーとなる香水瓶をコンバージェンスポイントよりも手前に並べて奥行き感をうまく感じられた部分がありました。
あと、桜の枝一本一本のレイヤー感や花びらが散っている様子がものすごく良く仕上がりました。
ルックやトーンについてもお話しした通り、満足のいく仕上がりでした。当初の目的としてあった、3D制作のバジェットを抑えて、かつ撮影機材の取り回しを良くしたいという面でも良い結果が得られたと思います。

撮影(イメージ) 撮影(イメージ)

――今回使用してみて、今後撮影してみたい作品などはありますか?

田中:とにかく手軽に高品質な撮影をしたいときには、使えるカメラですよね。

尾道:メイキングなどはかなり体力がいるんで、XF105を使えばかなり撮影が楽だと思います。画質は必要充分だし、ずっと持っていても疲れない。過去のハンドヘルドカメラに比べても使い勝手はかなり良いでしょう。生っぽい画で撮るべきメイキングでもマッチするカメラだと思います。

4:2:2+フルHDフォーマットを採用したXF105は、放送用カメラレンズの高画質技術を応用した高品位レンズやHD-SDI端子を搭載し、信頼のおける放送機器としてはかなりリーズナブルな価格を実現している。カメラ単体の機能および性能が高い評価を受けるだけでなく、手ブレ補正機能を応用した光軸調整機能を搭載し、3D撮影時のコンバージェンスポイントの微調整も行えるなど、今後も増えるであろう3D制作での複数台運用も期待される。

尾道幸治(おのみち・こうじ)/TYOテクニカルランチ CRANK:

1971年生まれ。京都造形芸術大学大学院を卒業。在学中の作品が、フィリップモリスアートアワード(1996年)およびロカルノ国際映画祭オフシアター部門(1997年)に入賞。SonyPCLのノンリニアオペレーター、映像制作会社「グアダループ」の企画、演出を経て、現在は企画、監督演出、撮影監督、脚本家としてCM、MusicVideo、映画など幅広く活動している。最新作では、岩井俊二監督作品「VAMPIRE」の撮影監督を担当し、2011年ワールドプレミアを控えている。

田中肇(たなか・はじめ)/TYOテクニカルランチ CRANK:

1968年大阪生まれ、千葉出身。撮影技術、DIT。ポスプロの撮影部に入社後、ドキュメンタリーのロケVEから撮影の仕事に関わるようになる。以降、CM、PV、Live収録、映画と仕事の範囲を広げ、2008年10月から現職。主にCM撮影に携わっている。

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