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世界は、もう気づいている。 「経営戦略」としての3Dプリンター活用。

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世界は、もう気づいている。 「経営戦略」としての3Dプリンター活用。

3Dプリンターをあらゆる工程で活用することは、今や経営戦略のひとつとして、世界の常識になろうとしています。各工程における導入事例と、その効果についてご紹介いたします。



製造や保守まで。米国ではもう、
あらゆる工程に3Dプリンターが入り込んでいる。

3Dプリンターは、ものづくりの幅を広げてくれるだけでなく、経営に多くの選択肢とメリットをもたしてくれるツールです。
国内のものづくり企業においても導入が進み、設計・試作・修正のサイクルをスピーディーに回すことで納期を短縮したり、これまで外注に頼っていた工程を内製化することによって製造コストの削減を叶えたり、製造現場だけでなく企業全体の経営に波及するような価値が生まれています。

しかし、3Dプリンターを単なる試作ツールとして捉えると、その先にある大きなチャンスを逃しかねません。現在、米国では3Dプリンターを積極的に取り入れ、製造工程、さらには保守の分野にまで活用が進んでいます。

日米のものづくりにおける3Dプリンターの活用の違い

3Dプリンターをあらゆる工程で活用することは、今や経営戦略のひとつとして、世界の常識になろうとしています。今回は、各工程における導入事例と、その効果についてご紹介いたします。

試作性能分析や軽量化。
形状の確認にとどまらない、設計支援ツールへ。

これまでデザインや形状確認のための試作に使われるイメージが強かった3Dプリンター。しかし、造形精度の向上、素材のバリエーションの拡充といった進化によって、性能の分析や機能試験にも耐えうる試作品づくりが可能になっています。

液体の脈動までも、細やかに検証

たとえば、液体洗剤のボトルキャップ。一見シンプルな形状でありながら、液の脈動を抑えつつ正確な計量を実現することが求められ、緻密な設計と試作が必要とされています。
3Dプリンターを用いることで、試作の段階から高精細なものをつくり、脈動や軽量といった性能の評価まで、細やかに行うことが可能になりました。

構造の強度を保ちながら、大胆な軽量化を実現

ソフトウェアにより最適な構造を自動計算する技術「トポロジー最適化」と連動することで、パーツごとに、必要な機能を満たしたうえで軽量化をはかることができます。
たとえば、航空・宇宙産業など、グラム単位でのパーツ軽量化を争う分野において、3Dプリンターは強力な設計支援ツールとなっています。アメリカの航空宇宙産業では、ジェットエンジン用パーツなどの設計・製造に金属3Dプリンターの活用が進み、大幅な軽量化を実現しています。

既存工法で実現できない造形 トボロジー最適化

プレゼンテーション効果を高め、商談もスムーズに

土木・建築の分野では、プレゼンテーション用のモックアップに3Dプリンターを活用している事例もあります。高精細の樹脂型プリンターを使うことで、区画を全面リニューアルするような大規模プロジェクトであっても、細部までかなり精細なモックアップをつくりあげることができます。
また、従来の模型ではなく、石膏タイプの3Dプリンターを使って施主への提案を行うケースも見られます。建物を細部までよりリアルに再現することで、意志の疎通を早め、商談のスピードアップにつながる効果も生まれているといいます。

金型強く、精密な型を、3Dプリンターで。
従来工法の枠を超えた、多彩なツーリング。

3Dプリンターで型をつくり、内製化と開発のスピードアップをはかるケースも多く見られるようになりました。国内の製造現場でも、金型や鋳型などの製造に3Dプリンターが用いられています。

ロストワックス、中子など、幅広い型を造形可能

宝飾の分野では、ロストワックス鋳造のマスターモデルの製造に3Dプリンターが活用されています。蝋(ろう)の塊を削る工程など、これまで手作業で行っていた部分を省略することができ、製造のリードタイム短縮につながっています。
ほかにも、石膏素材での鋳型や中子をダイレクトにプリントし、アルミ素材で鋳造することで、中空パーツを、低コストかつスピーディーに造形することが可能です。3Dプリンターにより、社内での金型の設計・修正を可能にすれば、外注コストの削減や、精密な作り込みを実現することができます。

ロストワックス、中子など、幅広い型を造形可能

治具や検査器具、搬送資材など、自在に広がる活用法

3Dプリンターは、生産効率を上げるための治具の作成にも一役買っています。「生産ラインのここに、こんな形状の治具があれば」というとき、3Dプリンターは自在かつ手軽にそのニーズを満たすことができるのです。たとえば、食品業界では、青果市場向けにリンゴの形状検査器具をつくったり、水産加工物の搬送を円滑にするために資材のかたちを最適化したりと、いろいろと工夫しながら3Dプリンターを活用している例が見られます。

このように、従来の工法や仕事の流れにとらわれず、柔軟な発想を持って製造工程を見つめ直すことで、さまざまな可能性がひらけていきます。

製造品質の安定、コストカット、高付加価値化。
3Dプリンターによる一体化、省パーツ化の効能。

国内の製造業では、高いレベルでの品質の安定が求められており、このことが3Dプリンターの導入を考えたときに、大きな懸念材料となるケースも少なくありません。しかし、アメリカでは、3Dプリンターを製造に活かすことで、結果的に品質をさらに安定させることに成功した企業も現れています。

パーツを一体化し、組み立ての工数とバラツキを無くす

品質のバラツキが出る原因として、製造工程における、手作業でのパーツの溶接や組立が挙げられます。3Dプリンターを製造工程に組み込み、従来は複数のパーツに分かれていたものを、ひとつのパーツとして組み合わせた状態で製造することで、その原因を解消するケースが生まれています。
あるメーカーでは、これまで7つのパーツに分かれていた加工品を、3Dプリンターの活用によりひとつのパーツにまとめることに成功。大幅な工数削減とコストダウンを実現しています。

コンポーネントの結合

パーツ数を減らし、工程を省略化することで品質の安定をはかり、さらには、製造現場での人件費、パーツごとにかかっていた物流費といったコストの削減を実現しているのです。

ジョイント部品を3Dプリントし、多様なニーズに対応

業務用マルチコプターの製造を行っているイデオロボティクスモーター社は、テレビ局や映画製作会社を主な取引先としています。課題となっていたのが、さまざまなハイエンドカメラを搭載し安定稼働させるためのジョイント部の器具。樹脂タイプの3Dプリンターを使って軽くて丈夫な器具を作成し、さまざまな撮影機材に柔軟に対応できるようになりました。

3Dプリンターによる部品や最終製品の製造。これまでの制約に囚われないパーツで、ものづくり企業としての提案力を高め、ビジネスの幅を広げていくことが期待されています。

保守不動在庫を一掃。
保守パーツのデータ管理による無駄のカット。

これまで、多くのメーカーは、品番ごとにメンテナンスパーツの在庫を持ち、修理や補償の対応を行っていました。そのための保管スペースや管理コスト、物流コストなども、積み重なれば決して少ないものではありません。

しかし、3Dプリンターによって、モノではなくデータとして在庫を保管できる時代がやって来ようとしています。

メンテナンスパーツの保管を、モノからデータへ。

ある建機メーカーでは、納品する企業ごとにパーツをカスタマイズしており、細かい仕様変更が発生するたびに、それに伴った数の在庫を保管していました。現在は、在庫をデータで管理し、3Dプリンターでの製造・納品に切り替えることで、保守パーツのためのコストやスペースを大幅にカットすることに成功しています。

また、グローバルに広がる生産拠点間でデータを共有することも可能です。送られたデータをもとに造形を行うことで、輸送コストの削減や納品のスピードアップが可能になります。保守の分野での3Dプリンターの活用にも、多くのメリットが期待できます。

メンテナンスパーツの保管を、モノからデータ

2020年までに予想される、技術革新と普及拡大。
今から、データとノウハウの蓄積を。

ものづくりにおける3Dプリンターの活用は、さらなる広がりを見せていくと考えられます。
2020年には、技術的な進化や対応素材の増加により、求める機能に対して最適な形状・性質を持ったパーツを、より高速にプリントできるようになると予測されています。ものづくりの最先端の技術として進化を続ける3Dプリンターに、今からどうアプローチするか。
設計やプリント技術のノウハウの蓄積、自社に必要な材料の選定。目の前に迫ったものづくりの新時代に向け、新たなステップを踏み出すべき時が来ています。

3Dソリューション販売企画課 貞本(左)・冨澤(右)
ソリューション企画課担当者写真
  • 今回の記事はキヤノンマーケティングジャパン 3Dソリューション企画部2名の取材を盛り込んで構成しております。


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