SECURITY SHOW 2017 パネルディスカッションレポート

SECURITY SHOW 2017 パネルディスカッションレポート

「ioTで拡がる安全/安心な社会と新しい価値の創造」

2017年3月7日~10日、東京ビッグサイトにおいて開催された、第25回セキュリティ・安全管理総合展「SECURITY SHOW 2017」にて、キヤノン、アクシスコミュニケーションズ、マイルストーンシステムズの3社は、「ioTで拡がる安全/安心な社会と新しい価値の創造」と題し、アライアンス企業を交えたパネルディスカッションを開催。
当日の討論の模様を紹介します。

モノをつなぐ「IoT」、映像をつなぐ「ioT」

はじめに、モデレーターを務めた日経BP社・井出一仁氏から、セミナーのタイトルになっている「ioT」と、一般的に使われる「IoT(Internet of Things)」との違いについて質問が提示された。これに対し、キヤノンマーケティングジャパン・内藤照行は次のように説明した。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 内藤 照行

内藤:「IoTはロボットやセンサーなど、さまざまなモノをインターネットに接続し、集められたデータを活用することを意味します。これに対して当社では、数多くの映像(イメージ)をつないで新たな価値を生み出すことをioT(imaging of Things)と名付け、小文字のiを使って表現しています」 続いて内藤は、映像センサーから得た情報をどのように活用するかについて解説。

内藤:「ネットワークカメラを中心にした映像監視システムは幅広く設置されており、報道でもその有用性が実証されています。ioTはこの情報を防犯用途だけに限らず、安全、安心な社会づくりに役立つものとして捉えています。具体例としては製造業におけるロボットや生産機器との連動、医療・介護領域では病院や在宅医療での映像活用、農業では生育状況分析による生産性向上などが挙げられ、これらの多様なデータを連携する基盤が重要となります。キヤノンではそのための映像管理基盤を整備することにより、さまざまな分野のioTとIoTを融合するための新しい映像ソリューションを構築する計画です。」

マイルストーンシステムズ社 ビヨン・スコー・アイラセン氏

次に、キヤノンとパートナーを組んで映像管理ソフトウェア(VMS)開発を手がけるマイルストーンシステムズのビヨン・スコー・アイラセン氏が、ioTにおける同社の役割について述べた。日常で使われるあらゆる製品がインターネットにつながりつつある現在、同社では今後5年以内に、映像管理システムに入力するデバイスの半分以上をカメラ以外、すなわちセンサーから得ることになるだろうと予測している。同社ではこれらのセンサー情報と映像を相互に組み合わせ、世界に「目」をもたらすことを目指している。

アイラセン氏:「人にとって難しいのは、映像を見た後でどんなアクションを取るべきかを決めることです。映像にさまざまなセンサーからの情報を加えることで、現場で実際に起きている状況が具体的に把握できるようになり、結果としてよりすばやく、スマートな対応が可能になります」
また、センサー情報の活用はM2M(Machine to Machine)による生産システムの自動化を推進するほか、スマートグリッド、スマートシティといった未来型の街づくりも加速させるだろうとアイラセン氏は語る。VMS市場で世界最大級のシェアを持つ同社の取り組みは、ioTの今後を考える上で重要な役割を果たすと思われる。

アクシスコミュニケーションズ 佐藤秀一氏

続いて、ネットワークカメラ製造メーカーとしてキヤノンとパートナー関係にあるアクシスコミュニケーションズの佐藤秀一氏から、同社がioTに果たす役割についての発言が行われた。同社は1996年に世界初のネットワークカメラを世に送り出す前、1984年の創業当時から、“あらゆるものをネットワーク化して人々の暮らしをより便利にする”というビジョンを掲げている。

佐藤氏:「そのビジョンを実現するために、当社はネットワークカメラの頭脳となるチップセットを自社開発しています。これにより、一つのネットワーク上に多くのカメラが展開された場合でも映像品質を落とさず、効率的にデータを伝送できる仕組みを構築しました」
さらに、チップセットが人の頭脳を補助する役割を果たすことによって、カメラ自身が状況を判断、分析する能力を持てるようになる。同社は専用のプラットフォームを使ってカメラの新しい映像分析アプリケーションを開発した。たとえば入退システムでは訪問者を撮影すると同時に顔を識別し、必要に応じて通知や警報を行うといったように、制御システムを中心にした幅広い展開が可能になる。同社はこのビジョンを「IoST(Internet of Security Things)」と名付けた。佐藤氏はあらゆるセキュリティ機器の連動で安全、安心を実現するioTの概念に、ネットワークカメラの先進テクノロジーを通じて貢献していきたいとの意欲を示した。

ここで井出氏より、ioTによってもたらされる新しい価値について、どんな活用シーンがあるのかという質問が提示された。これに対しキヤノンの内藤は、いくつかの具体的な事例を挙げて解説している。
まず小売・流通業界では、これまで単に監視用に使われていたカメラの映像情報が、システムとの連動によって顧客の購買行動(店内での動線)や属性(性別、年齢層)を「見える化」することで、防犯以外のさまざまなマーケティング用途に活用することができる。また、駐車場のカメラ映像は、空き状況を分析することでドライバーへの的確な情報提供を可能にする。製造業では工場内の映像をロボットの「目」として活用し、製造ラインの稼働状況検知や製品検査に役立てる。さらに観光・レジャーの分野でも施設の混雑状況やライブ映像を配信することにより、急増する外国人旅行者への支援強化が期待されている。

一方、アイラセン氏からは、新しい映像データの活用例として「スマート広告」が紹介された。これは米国ゼネラルモーターズ社が企画した新型車の屋外広告で、カメラ映像を潜在顧客発掘に用いたものである。
街頭に大型スクリーンを設置し、約300メートル手前の路上に配置したネットワークカメラで通過する車両を撮影する。その映像はマイルストーンのVMS(XProtect)に送られ、車両のメーカーと車種からドライバーが新型車のターゲットになるかどうかを判断、対象となる場合は広告を表示する仕組みだ。わずか数秒間で撮影、分析、表示を行うためには高度な技術が必要だが、この事例では一連の動作がスムーズに運用されたことから、ioT実現に向けた大きなステップとして注目を集めている。

アライアンス企業5社との協業ソリューションを紹介

各回異なる、アライアンス企業5社が各回1社ずつ登場し、キヤノンマーケティングジャパンと協業するソリューションを紹介した。

「AIと映像の融合」がもたらすioTの進化  富士通株式会社 有山俊朗氏

富士通では、ioTの実現にはAI(人工知能)活用が重要なポイントになると考え、AIを軸にしたさまざまなソリューションを開発している。具体的な取り組み事例として有山氏は、AIを使ったスマート都市監視ソリューション「GREENAGES Citywide Surveillance」を紹介。都市のカメラは年々増加の一途をたどり、すべての映像をチェックすることが難しくなっている。同社はAIのディープラーニング(深層学習)で映像データを自動分析し、広域にわたる大規模監視や重要インフラのモニタリングを少人数で効率的に行うための取り組みを進めている。また、駐車場の監視・管理を行うソリューション「GREENAGES Parking Analysis」では、広角カメラで駐車場全体をカバーすることでコストを抑え、満車、空車の情報を把握するシステムを紹介した。

AIと映像の融合がもたらすメリットは大きい。同社はセキュリティに限らず、さまざまな分野でのAI活用を検討している。たとえばマーケティング分野では、ショッピングモール内の人の動きを解析することで販売戦略をサポートする。また、洪水や土砂災害観測を目的に設置されたカメラの映像も、AIによってより効果的な防災に役立てることができる。「AI技術は急速に進歩していますが、人がAIに支配されてしまうような未来は望みません。あくまでも人と協調しながら、安全、安心な生活に役立てることが重要です。今後もキヤノン、アクシス、マイルストーンから提供された膨大な映像データをAIで解析し、これによって生み出される新しいサービスを皆様とともに考えていきたいと思います」と今後の展開について有山氏は語った。

世界トップレベルの「顔認証」技術でioTを共創  日本電気株式会社 渡辺一敏氏

日本電気はキヤノングループが進めるioTにおいて、「顔認証」に関する技術を共創している。同社は顔認証のパイオニアとして長年にわたる研究実績を持ち、今年3月に発表された米国国立機関による動画顔認証の性能評価で第1位を獲得※1するなど、その実力は世界トップレベルだ。
ioTの具体的な活用事例として、渡辺氏は同社が海外で構築した「街中監視システム」を紹介。この事例はioTがめざす安全、安心な社会づくりを実証するものだと言える。

一方、セキュリティ以外の分野でも、同社は顔認証を活用したioTの取り組みを進めている。その内容について渡辺氏は「おもてなし」と「介護」という2つのジャンルを挙げた。まず「おもてなし」では、映像管理システム(VMS)と顔認証を組み合わせることで、頻繁に訪れる顧客へのVIP対応やサービス提供が可能になる。従来スタッフの目に頼るしかなかったこれらの対応が実現することは、「おもてなし」拡大につながることが期待される。「介護」の領域では、顔認証によって入居者を見守る仕組みが検討されている。顔認証を用いたVMSを導入することで入退管理を効率化し、安全、安心な施設運営が可能になる。同社では顔認証を社会課題解決に役立つ技術と捉え、今後もさまざまなソリューション開発に注力する方針だ。

※1:米国政府機関主催のコンテストでトップ評価を獲得

ioTを支える「センサー」技術を磨き、ともに未来を共創  オプテックス株式会社 中村明彦氏

オプテックスは各種センサーの企画製造、販売を行う企業だ。オフィスビルの自動ドアや防犯用照明などに使われるセンサーでは世界トップクラスのシェアを持ち、創業以来約40年にわたってセンサー機器やシステムの開発を手がけている。中村氏は「当社のセンサー情報は、IoTが話題になる前からキヤノン、アクシス、マイルストーンに提供され、多くのソリューション開発に活用されてきました。IoTが社会を変えると言われる現在、当社はセンサーの視点からインターネットを捉え、IoS(Internet of Sensing Solution)のコンセプトのもとで、これまで携わってきた領域以外にもチャレンジしています」と意気込みを語った。

同社はIoSを実現するために、新たなセンサーの開発に注力している。今回は「在室検知センサー」を紹介。具体例として企業のエントランスに設置したセンサーにより来客状況を分析するソリューションが紹介されたが、同社のセンサーが人を検知すると、システム側でセンサーが動作している時間を計測し、来客の多い時間帯がフィードバックされる。中村氏は「このように複合的な視点で活用できることがIoTのメリット」と指摘する。その他にも屋外看板の振動を検知して落下を事前に防止するセンサーや、IoT向け通信技術として注目を集めるLPWAにより駐車場の空き情報を送信するセンサー、ドライバーの運転技術を評価するセンサーなど、ユニークな製品群が紹介された。
今後の計画について中村氏は「この時代、一社だけでビジネスを成立させるのは非常に困難です。とくにIoTでは業界を超えた大規模な協業が求められます。これまで培ってきたキヤノン、アクシス、マイルストーンとの関係をさらに強化し、お客様のニーズに応えるソリューションを提供したいです」と抱負を語った。

ioTを支える「センサー」技術を磨き、ともに未来を共創  ホーチキ株式会社 星野広一氏

ホーチキは1918年(大正18年)に創業した老舗の防災メーカーである。同社は「人に安全を」「社会に価値を」「企業をとりまく人々の幸福を」の3つを経営理念として掲げ、人命、財産を保護するための商品、サービスの提供を行ってきた。星野氏は、「当社は火災報知機のメーカーですが、ネットワークカメラや放送システムなど、さまざまな製品を組み合わせたソリューションを提供しています」と語る。

今回の「SECURITY SHOW 2017」では、「安全、安心の見える化」をコンセプトに展示。見える化を実現するためにはネットワークカメラとの連携が重要になることから、ioTを意識した研究開発を推進中だ。たとえば、火災を検知した際には発生場所の映像を映して状況を伝えるとともに、避難経路がきちんと確保されているかを確認。防犯についても同様で、入退システムとネットワークカメラの連携により、不正を検知した際は直ちに映像を記録する仕組みを構築している。
続いて星野氏は、「ioTにホーチキが加わると、どんなことができるか?」を予想したビジョンを示した。現在、火災検知には熱、煙、炎のセンサーが使われているが、誤作動や情報不足などの課題が指摘されている。ioTにより火災を映像で把握することは消火活動の効率を高めると同時に、誤作動防止にも役立つ。「当社のシステムはこれまで、お客様の要望に個別で対応する“点”の形で提供されてきました。ioTによる連携で複数のシステムが一体化することは安全性を高めるだけでなく、効率性や操作性、さらには利便性の向上にもつながります。これからも改善を進めていきたいです」星野氏は展望を述べた。

「見える化」推進とioTで防災の仕組みが変わる  アイホン株式会社 若林一磨氏

アイホンはインターホンとナースコールの専業メーカーである。約70年の歴史を持つ同社の製品は住宅、オフィス、病院、工場ほかさまざまな場所で利用されており、国内シェアは50%超と、トップクラスを誇る。
ICTの進歩により長距離、多数接続のニーズが高まったことから、同社はIPネットワークに対応した「IXシステム」を開発し、インターホンの常識を変える新機能を提供している。「ioTによって映像が伝送可能になったことで、インターホンは新しい価値を獲得しました」(若林氏)。その活用事例として「駅」「消防署」という公共インフラにおける取り組みを挙げた。

鉄道会社の事例では、無人駅での顧客対応を改善したいというニーズに対する回答としてIXシステムを提案。カメラ付きドアホン端末で連絡者の表情を確認しながら通話することで状況確認がスムーズに行えるようになり、対応のスピードが向上した。
消防署の事例では、署員不在時の通報への対応が課題になっていた。消防署のインターホンの通話が消防本部に転送された際、IXシステムにより通報者の顔を見ながら応対できるようになった。音声だけの通話に比べ、映像付きの通報は現場の状況把握を容易にする。また、レコーダーに録画することで、いたずら通報防止に役立っている。 「インターホンにネットワークカメラを組み合わせることで新たな価値が生まれ、ソリューションの幅も広がりました。今後もioTに当社が持つデバイス部分の知見を提供し、貢献したいと思います」と若林氏は抱負を語った。

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