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革新しつづける、という伝統。日本の新しい写真館

内田写真株式会社 大阪府大阪市

日本の写真館ではまさに老舗の中の老舗として知られる内田写真は、今年創業140周年を迎えた。その長い歴史の中で、同社が変わることなく受け継いできたのはチャレンジスピリット。どの時代においても、新たな領域に果敢に挑むことで、日本の写真文化を拓き育んできたのである。
「古くて新しい写真館」をコンセプトに、フォトビジネスを革新しつづける同社の取り組みについて話を伺った。

明治、大正、昭和、平成。

明治、大正、昭和、平成。

創業140周年。つねに時代の先端に。

内田写真の歴史は深い。幕末・明治を代表する写真師であり、はじめて明治天皇のお姿を写真に収めたことでも知られる内田九一氏。その従弟である初代・内田酉之助氏が東京浅草の九一氏の写真館で写真術を学び、1871年(明治4年)、大阪天満の地に写真館を開業したのが内田写真の始まりである。
そして2011年、内田写真は創業140周年を迎えた。明治・大正・昭和・平成と長きにわたって発展してきたのは、同社が時代の変化を敏感に感じとりながら、つねに積極的に新たな試みを積み重ねてきたからに他ならない。次の項では、最新の事例として、この3月、帝国ホテル大阪にオープンしたUCHIDA PHOTO SALONについて紹介する。

どこまでも上質な時間を。

どこまでも上質な時間を。

帝国ホテル大阪に、UCHIDA PHOTO SALONをオープン。

帝国ホテル写真室のフォトグラファー鵜飼恵美氏

内田写真では、今年15周年を迎えた帝国ホテル大阪(大阪市北区天満橋)にその開業当初から写真室を出店しているが、この3月、新たに婚礼写真の打ち合わせ専用サロンとしてUCHIDA PHOTO SALONを開設した。その目的は、お客さまにさらなる満足を提供するためである。
「年々、お客さまのご要望は多様化しています。お客さまのこだわりにしっかりお応えするためには、よりきめ細かいお打ち合わせが必要になってきているんです。それに伴い、時間も回数もかかるようになってきています。だから、お打ち合わせ自体を、ゆったりくつろいで楽しんでいただきたい。そうした想いから私共ではお打ち合わせ専用の空間として、UCHIDA PHOTO SALONをご用意させていただきました」内田写真・帝国ホテル写真室の鵜飼恵美氏はそう語る。

美しいプレゼンテーション。

美しいプレゼンテーション。

大型モニターを備えた、5つの個室。

サロンの設計を手掛けたのは、国内屈指の空間デザイナーとして知られる森井良幸氏(株式会社カフェ)だ。照明の効果もあるのだろうか。洗練されていながら温もりを感じさせる空間になっている。サロン内には5つの個室がある。実際に個室に入ってみると、人をやわらかく包み込むような、自然とくつろげるスペースになっているのがわかる。ソファも疲れにくいように固めのクッションを用いているそうだ。
お客さまの目の前には大画面モニターが設置され、“プロフィールビデオ”や“エンドロールビデオ”など披露宴演出用の映像を効果的にプレゼンテーションできるようになっている。“プロフィールビデオ”は質の高さと凝った内容が好評で、お客さまの約8割がオーダーされるそうだ。

九一とライト、息づく伝統。

九一とライト、息づく伝統。

心遣いが行き届いた個性的なラウンジ。

お客さまをお迎えする受付&ラウンジの壁面は、帝国ホテル旧本館を設計した近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトへのオマージュを込めたモダンなデザインになっている。その造形美に調和するように、内田九一氏が撮影した明治の貴重な風景写真が配されており、2つの伝統を現代に融合させた内田写真・帝国ホテル写真室ならではの雰囲気を醸し出している。また、ラウンジでは、披露宴の映像に使用する音楽を自由に聴いてイメージを膨らませることができるようになっている。お客さまにお待ちいただくわずかな時間もくつろいでいただきたいという配慮からだ。実際 このサロンでは、混雑時に「まだですか?」とおっしゃるお客さまが全くなく、打ち合わせが済んだ後も従来にくらべゆったり過ごされる方が多いそうだ。「打ち合わせを楽しくする」というサロンのコンセプトはお客さまに高く評価されているといえるだろう。

心華やぐ、最高の一瞬を。

心華やぐ、最高の一瞬を。

フォトグラファーをサポートするEOSの操作性。

大川沿いに連なる数千本の桜。帝国ホテル大阪は、日本有数の桜の名所としても有名である。婚礼の前撮りも、桜の季節の人気が高い。たとえ挙式がまったく違う時期であっても、前撮りはこの時期に行いたいと希望されるお客さまが多いそうだ。
「前撮りに限らず、帝国ホテル大阪は挙式が一日に二十組以上という日もあり、婚礼のお客さまが普段からとても多いんですね。そういう意味で私たちフォトグラファーにとっては、やはり手に馴染むカメラ、体が覚えているように自然に扱えるカメラがいちばんです。いまEOS-1Ds Mark ⅢとEOS 5D Mark Ⅱを使っています。操作性がいいからこそ、最高の表情を逃すことなく、いつでも同じように高いクオリティを引き出すことができるのだと思います」と鵜飼氏は語る。

オリジナルを、自在に、スピーディに。

オリジナルを、自在に、スピーディに。

伊丹のラボで、キヤノンの大判プリンターが活躍。

商品群の多様化に効率よく対応していくために、内田写真では2010年、それまで数ヵ所に点在していた自家ラボ機能を阪急伊丹に集約した。プリントから製本までを一括して行う独自のネットワークを構築することで、商品開発の幅を広げながら、スピーディで安定した対応を可能にしている。キヤノンの大判インクジェットプリンターも、この伊丹ラボで稼働。より味わいの求められるページの出力や、ブライダルフェアを告知するパネルやPOPの制作に活用されている。
ちなみに帝国ホテル大阪で最近人気が高いアルバムは「ライト」という新商品だ。薄くてかさばらない仕様でありながら、カット数が多く、しかも高級感があるところが好評を得ている理由のようだ。

その街の、家族のために。

その街の、家族のために。

新たなサービスを模索する「つきじスタジオ」。

つねに新しいことにチャレンジする内田写真。2010年4月に開設した東京の「つきじスタジオ」もその一例といえる。内田写真では、創業80周年の歴史を誇る本格料亭で婚礼の会場としても人気の高い「つきじ治作」(東京都中央区)と従来から提携していたが、つきじ治作が新たに美容、衣裳、ブーケ、会場演出などのウエディング機能を集約したビル(アニバーサリープレイスつきじ)をオープンさせるにあたり、内田写真もここに出店したのである。
高層マンションが立ち並び、その一方で昔懐かしい伝統や情緒が数多く残されているこのエリアで、つきじスタジオは地域密着型のサービスを模索している。婚礼写真が中心の同社においては新しい試みといえる。その取り組みは始まったばかりだが、将来的には大阪の本社スタジオのように地域のお客さまに愛される写真館をめざしているそうだ。

ブライダルフォトの、その先へ。

ブライダルフォトの、その先へ。

革新しつづけることが、内田写真らしさ。

時代の流れとともに、内田写真の出店先も変わってきている。ここ6~7年は、やはりハウスウエディング型の婚礼施設が増えているそうだ。勿論、ハウスウエディングというスタイルも多様化してきている。同社はそれぞれの施設の特徴を最大限に活かすことで、個性的で質の高い婚礼写真を提供。だからこそ、多くの施設から、写真室として選ばれているのだろう。
2011年1月にオープンした南国リゾート感覚のゲストハウス「ザ・ミーツ マリーナテラス」(千葉市中央区)。そして、花と緑の博覧会から20年の時を経て、この3月に生まれ変わった「鶴見ノ森 迎賓館」(大阪市鶴見区)。いずれもコンセプトが際立つ最新の婚礼施設に、内田写真は出店している。革新しつづける内田写真は、これからも「古くて新しい写真館」として、日本のフォトビジネスをリードしていくにちがいない。

内田写真株式会社

内田写真株式会社
1871年創業。大阪市にある本社スタジオを中心に、全国のホテルやゲストハウスなど、現在46ヵ所でスタジオを展開。
年間15,000組の婚礼写真に携わっている。
URL:http://www.uchida-p.co.jp/
(内田写真株式会社のサイトへ)