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4Kディスプレイ導入事例

東通4K HDRドラマVEベース用モニターとして
DP-V2410を導入

新規プロジェクトの中心的な機材として採用

技術プロダクションの株式会社東通様が手がける4K制作は中継の現場が多く、スカパーJSAT株式会社様や株式会社WOWOW様でスポーツ中継やコンサート中継などに積極的に取り組んでいる。特にスポーツ中継ではHDR放送も推進されており、最先端の技術提供を行ってきた。こうした状況の中、2015年には同社として初の4Kドラマ制作のプロジェクトが始動。VEベースの中心的な機器である4Kモニターにキヤノンの業務用4Kディスプレイ「DP-V2410」が採用された。
4K収録システム構築とVEを担当した第一技術本部 制作技術第一事業部 技術部 技術課 担当課長 金子明通様に、DP-V2410 の導入の経緯や使用感などを伺った。

ロケ用モニターとして唯一無二の存在

-4K機材を新規導入することになった背景を教えてください。

スカパーJSAT株式会社様の4Kチャンネルで放送されたドラマがあるのですが、初めはそのドラマを担当した制作会社から「全編4Kで撮影するための機材を揃えてほしい」とリクエストをいただいたのが発端です。東通としては4Kドラマの記念すべき第1作です。最終的にはHDR(High Dynamic Range)で収録することになり、プロジェクトチームも編成されました。成功を収めるために必要な機材には投資をする方針でしたので、自分の希望を最大限通してもらいました。

-カメラと収録ベースのシステムについてお聞かせください。

カメラはすでに設備してあったソニーのPMW-F55を活かし、それ以外の4K機材はほとんど新調しました。単純に2カメの映像をそのまま収録しただけなのですが、実際には光伝送装置でベースに送ってLUT(Look-up table)をあてるために富士フイルムのImage Processing System IS-miniを8台使用しており、VEベースはかなり複雑なシステムになっていました。LUTをあてて収録したのがSDRのマスターで、HDRのほうはカメラ本体のXAVCで撮ったSlog3をもとに、編集で変換して1カットずつLUTをあてて完成させました。
このシステムではカメラ側から4K伝送するためにHDの回線を四本通しています。採用した光伝送装置は5系統だったので、ベースから戻す映像とAES(Audio Engineering Society)/EBU(European Broadcasting Union)の音声の合計3回線を増やすために投資をして、モニター2台分くらいの費用がかかっています。その他にもPMW-F55 のキャプションデータ用にHDMIで出ている信号をHD-SDIに変換したり……システム構築はなかなかハードルが高かったですね。

-ベース用のモニターにDP-V2410を選んだ理由は何でしょうか。

DP-V2410は結果的に唯一無二の機材でした。2015年の初夏ぐらいから機材の検討を始めて、キヤノンさんから24インチが出るという情報を聞いたのはおそらく9月か10月だったと思います。ロケに持ち出すサイズとして32 インチはありえなかったので、もうこれしかないと思いました。24インチならマグライナーでベースを組めるのではないかと。
DP-V2410はドラマの現場では基本的に持ち運びせず、イレクターという素材で作った枠に収めてマグライナーに固定しました。VEベースの横幅はいつもの倍以上ありますが、組み方によってはモニターの幅だけで収めるのも可能だと思います。ベースの大きさに関して批判を受けることは多々ありましたが、オペレーションを重視して半ば強引に進めました。17インチが定番だったので大きさを意識しないわけではないですが、僕らにとっては手足同然で一体になっている感覚です。
システム全体の重さもかなりの重さです。光伝送のCCU(Camera Control Unit)が2つと収録機が2台、波形モニターやセレクター、分配機、IS-mini 8台、DC/AC などなど。4人以下では絶対に持てませんでした。通常6人で持ち上げていたので、おそらく100kgくらいはあったのではないかと思います。現場によっては大きすぎてエレベーターに載らず、階上まで担いで上げることもありました。エレベーターに乗ることを考えてカートを小さくできたとしても、そのカートを6人で持てるかどうかは課題ですね。DP-V2410を現場に持っていくということが自分にとっては挑戦でしたが、ないと始まらないですから。DP-V2410のおかげで良い作品ができたので、持って行ってよかったと思っています。


今まで見たことがない自然でわざとらしくない色表現

-ドラマ用のモニターとして使い勝手が良かった点はありますか?

輝度の性能は大きかったですね。ロケで一番大事なのは、いかにモニターを見る環境を作るかということなんです。いろいろなスタッフが見るのでできれば暗幕をかぶりたくないけど、昼間はかぶらないと見えないという現実があります。もちろん波形モニターを基準にすればいいのですが、整った環境で見た時を想定して本当に色が出ているか、輝度が保たれているか、暗部が出ているか、そういう判断が撮影現場では非常に難しくなります。
ロケの明るい環境で撮影することが結構ありました。そういう時にDP-V2410はパワーがあるのでコントラストを上げられるし、コントラストを上げても色の変化がない。昔のブラウン管ではコントラストをあげすぎると青く映ってしまって、仕上がりが赤くなってしまう心配がありました。DP-V2410は輝度が明るく出て、かつ色の変化もない点がやりやすかったですね。仕上がりについても、ロケで見た映像との差がほぼないという印象を持ちました。

-色の再現性や階調の具合についてはどう感じましたか?

他に比べるものがないですし、UHD(Ultra HD)の放送規格 BT.2020 の色域を初めて使ったので比較はなかなか難しいですが、色表現が豊かだと思います。今まで見たことがない自然でわざとらしくないという印象です。ドラマ撮影で色調自体をモノトーンに近い感じに暗部のコントラストをものすごく強めに付けたのですが、トップから人物にライトをあてると目が見えなくなるような彫りの深い絵でも、陰影に深みを感じとることができました。
ただ収録していて、収録環境と家庭での視聴環境の差がどんどん広がっていくのではないかという若干の難しさを感じたのも事実ですね。

-多くのスタッフがモニターを見る中で視認性はいかがでしたか?

フォーカスを見るときは別ですが、スタッフに囲まれた中ではモニターに対して正面ではなく斜めに見ることが多いです。そういう点で見ると、視認性は有機ELモニターに比べて遥かにいいですね。
それとHDRのテストをしている時に、屋外で収録した4K映像を他のモニターと並べて見たことがあります。背景の雲もしっかり見えますし、これだけ見えていれば充分に使えるなという印象でした。

-今後の4Kドラマ制作の展望をお聞かせください。

弊社の中で4Kドラマ収録はまだ自分しかやっていないので、今後の道筋を示さないとやった意味がないですよね。収録時にLUTをあてない場合にどうするか、どういう状態でロケを見ておくかなどの方針は私が決定しようと思っています。
今後もDP-V2410をメインに考えて、4Kドラマ制作をより拡大していきたいと思っています。仕事を増やすと同時にクオリティも上げていって、さらなる展開に利用したいですね。

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キヤノンマーケティングジャパン株式会社 放送映像営業部