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培った技術を活用し社会課題を解決する。そうした考え方の元、キヤノンは新たな事業の創出に取り組んでいる。その一つに「インフラ構造物点検」の分野がある。全く新しい事業領域へ、キヤノンはどう挑んでいるのだろうか。

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  • 2021.09.01

Episode.33 「インスペクション EYE for インフラ」

点検の現場が抱える大きな課題とは

写真:新田敏之 キヤノンマーケティングジャパン(株)企画本部で「インスペクション EYE for インフラ」の販売推進を担当する新田敏之

新田が点検の実情とその課題を説明する。

「従来の点検は"近接目視"といって、コンクリート部分に可能な限り近づき、人の目で確認していくのが基本です。そもそも技術者が現場に行かなければ点検ができませんし、時間もかかります。今後、建設業に携わる人が減ることも予測されているため、人材不足が理由で点検が進まなくなる可能性もあります」

武田は、近接目視のコストや安全の面での課題を指摘する。

「多くの橋梁やトンネルの天井は高い場所にあるため、足場を組むなどの必要があります。危険な場所にあることも多く、作業者の安全確保にも十分な時間とコストをかける必要があります」

さらに森川は、記録に必要とされる労力についても指摘する。

「点検調書の作成も課題の一つです。多くの場合、ひび割れを一つずつ手描きでスケッチし、位置や幅などの情報と所見を記載するという方法で記録されます。調書の作成だけでなく、過去の記録から情報を見つけるのも大きな負担です」

こうした負担を少しでも減らそうと、近年、活用が始まっているのが、画像を利用した点検方法だ。

「画像点検とは、橋やトンネルのコンクリート部分をカメラで撮影し、その画像を使って点検する方法です。望遠レンズを付けたカメラやドローンを使えば、足場を組んで近づいたりせずに点検できるというメリットもあります」

だが、画像点検にも課題はある。「0.2ミリ幅を基準にひび割れを区分けする」という高いレベルの点検に必須な高精細な画像を撮影し、その画像から正確に判断できる経験豊かな人材が必要になるという点だ。

こうした社会的な課題に「自社製品の活用と、蓄積してきた技術力で貢献できるのではないか」と考えて開発したのが「インスペクション EYE for インフラ」だ。これは単に点検の効率化を目的にしたのではなく、"インフラ構造物の点検業務を一歩先に進める"ことを目指したものだという。

グラフ:産業別就業者数の予測

産業別就業者数の予測
社会インフラの維持管理や更新では、人材不足も大きな課題になっている。今後約20年間で「鉱業・建設業」の就業者数は17年と比較して約6割まで減ることが予測されている。日本では少子高齢化が進んでいるが、他の産業と比較しても減少幅が大きい。

画像:「インスペクション EYE for インフラ」のサービスの流れ

「インスペクション EYE for インフラ」のサービスの流れ
「インスペクション EYE for インフラ」は、3つのサービス「撮影サービス」「画像処理サービス」「変状検知サービス」の流れで行うことが基本だが、すでに画像点検を実施し写真撮影が済んでいる場合は、「画像処理サービス」や「変状検知サービス」を個別に利用することも可能。また、AIによるひび割れ検知結果を東設土木コンサルタントとジーテックが開発した変状展開図作成・管理支援ツール「CrackDraw21」と連携することで、点検調書作成や補修計画の策定などの実務展開が容易になる。

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