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Cのキセキ

2015年の2月、カメラファンはあるカメラの話題で持ちきりとなった。それが、5060万というこれまでにない画素数のCMOSセンサーを搭載して登場した「EOS 5Ds」「EOS 5Ds R」である。
このカメラがもたらした驚きは、5060万という画素数だけでなく、それほど高画素のセンサーを搭載しながら“使いこなせるカメラ”として登場した点にある。
この驚きの背景に、キヤノンが持つ“総合力”が見えてくる。

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  • 2016.03.01

Episode.10 「EOS 5Ds / EOS 5Ds R」

革新的な技術を支える地道な「積み重ね」

写真:モデル顔部分 写真:モデル 約5060万画素という高画素を生かす新しいピクチャースタイルである「ディテール重視」を使って撮影されたサンプル写真。シャープさを保ちながらも、まつげや眉毛、レースの糸など、細い線が細いまま生々しいほど高い解像感で記録されている

約5060万画素CMOSセンサーの特色は、言うまでもなく高い「解像性能」にある。撮影された画像を見れば、誰しもが「デジタル一眼レフカメラもここまで進化したのか」と驚きの声を上げるに違いない。だが、キヤノンのデバイス開発本部でCMOSセンサー開発のリーダーを務めた沖田 彰は、冷静に「階段を一段ずつ登ってきた結果」だと話す。

高画素センサーを実現するには、いくつもの壁を乗り越える必要がある。その一つが「画素ピッチ」の問題だ。新しいセンサーの画素数は「EOS 5D Mark III」の2230万画素から約2.3倍に増えているが、センサー自体の大きさは変わらないため、当然一つのフォトダイオードの面積は小さくなる。

「一つひとつのフォトダイオードが小さくなるということは、画素当たりの光の量が減るということ。そのため、ノイズが生じやすくなったり、ダイナミックレンジが狭くなったりといった課題が生じるのですが、フォトダイオード同士の境の部分を狭くして、少しでもフォトダイオードを大きくしたり、その上のマイクロレンズとの距離を近づけて光のロスを減らすといった工夫をしています」

また、ノイズに関しては、あらかじめノイズの情報を読み出しておくことで、撮影した信号からクリーンな情報のみを取り出す「オンチップノイズ除去」と呼ばれる技術や、ノイズのもととなる電気をリセットすることで、ノイズの発生を抑える「画素内完全電荷転送技術」を進化させ、対策をしているという。

新しい技術を生かす キヤノンの「総合力」

写真:沖田彰 キヤノン(株)のデバイス開発本部で約5060万画素CMOSセンサー開発のリーダーを務めた沖田 彰

これらの技術は一朝一夕に搭載できたものではない。「今回のセンサーの開発がいつから始まったのか」という質問に、沖田はしばし考えて「ベースとなったのは2007年に研究成果を発表した5060万画素のCMOSセンサーですが、正確にお答えするなら『EOS D30』の頃からということになると思います」と答えた。

「EOS D30」とは、2000年発売のキヤノン製325万画素CMOSセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラだ。沖田の答えは、「EOS 5Ds/5Ds R」のCMOSセンサーの“5060万”という数字は、キヤノンの開発スタッフが「EOS D30」の当時から技術的な階段を一段ずつ着実に登ってきた結果として実現できたことを意味している。

そしてその5060万という数字に注目が集まりがちな「EOS 5Ds/5Ds R」だが、CMOSセンサーだけで製品として完成したわけではないと沖田は話す。

「一つの『カメラ』という製品にまとめるには、消費電力や発熱をいかに抑えるかといった課題だけでなく、コストや歩留まりといった生産面の問題をクリアする必要がありました。それができたのは、キヤノンが持つ“総合力”を発揮できたからだと思います」

沖田のいう「総合力」には二つの意味がある。一つはキヤノンが「半導体を作る」のと同時に「半導体を作る装置も作っている」こと。設計、開発から生産にまで至る技術の蓄積とその共有が、新しい技術とそれを生かす製品を生んだ。そしてもう一つは、キヤノンがセンサー、光学、機械、ソフトウエア、そして販売に至る“カメラを作りユーザーへ届けるための全て”を持っていること。

「カメラを作るための全てを持っているということは、製品開発のどこにも技術的な“ブラックボックス”がないということです。問題があればとことんまで追究できますし、部門を超えて協力することもできる。今回の開発でも、部門を超えた“センサーを生かす技術”は不可欠な要素でした」

では、沖田が話す新しいセンサーを生かす技術とはどんなものだろうか。

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