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ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する ビジネスのReデザイン

加速度的に進む世の流れの中では、従来の手法でビジネスを続けていても時代に即せず、その成長は止まってしまう。
変わりゆく時代を生き抜くために必要なのは、自らのポテンシャルに磨きをかけること。
そして時代に合った価値や魅力を創造しながら、ビジネスモデルを再構築することである。
過去にとらわれず、柔軟な発想で、今求められているビジネスへとリ・デザイン(再設計)させる達人たちに、その極意を学ぶ。

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  • 2018.12.01

ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する
ビジネスのReデザイン

インタビュー知恵さえあればビジネスは再設計できる!「f-Biz」流の発想メソッド小出宗昭さん
富士市産業支援センター f-Biz センター長

2008年の開設以来、中小企業の経営力の底上げを支援している、静岡県の「富士市産業支援センター f-Biz(エフビズ)」。これまで大きな成果を上げてきたことから、国や自治体からも注目を集め、現在では全国20の自治体でf-Bizに続く、ご当地Bizが誕生している。知恵を使った柔軟な発想によるビジネスモデルの再設計により、数多の企業を救ってきたメソッドを、同センター長の小出宗昭さんに聞いた。

企業を再生させる二つのポイント

写真: 小出宗昭さん 小出 宗昭(こいで むねあき)
富士市産業支援センター f-Biz
センター長
1959年生まれ。法政大学経営学部卒業後、静岡銀行に入行。M&A担当などを経て、2001年から創業支援施設「SOHOしずおか」に出向。08年に静岡銀行を退職後、(株)イドムを創業し、富士市産業支援センター f-Bizの運営を受託。センター長に就任し現在に至る。著書に『御社の「売り」を見つけなさい!』(ダイヤモンド社)など多数。

2008年の開設以来、f-Bizでは、中小企業の経営者や起業を目指す人とのコミュニケーションを通じて、企業の再生をはじめとする多種多様な支援を行っています。その中でポイントにしていることが二つあります。

一つは、お金を掛けずに知恵を使って課題の本質的な解決策を探ること。例えば企業を再生させる場合、財務諸表を基に問題点を明らかにして無駄を省き、効率を上げていく財務リストラという手法が一般的です。しかし、それでは売り上げ自体が落ち、業績を回復させるという本当の意味での再生はできません。そのためには売り上げが拡大し、利益も出し続けられるビジネスモデルの再設計が極めて重要です。日本の企業の99.8%は中小企業で、しかもその大半は零細企業。ヒト、モノ、カネで弱点を抱える状況で結果を出すには、お金を掛けずに知恵を出して解決策を探るほかないのです。

もう一つは、経営者が気付いていない企業の強みを魅力(=セールスポイント)として形にすること。どんな企業にも強みやセールスポイントはあるものです。しかし、経営者がそれに気付いていないことが多々あるのも事実。経営者は見ている距離が近過ぎて、業界の常識に縛られがちな面もあるため、自社の強みに気付くことが難しいのです。f-Bizではヒアリングを重ねて客観的な視点からその企業を評価し、経営者に自社の強みに気付いてもらうことから着手。その上で業績向上につながる商品のアイデアや販売方法、販路を提案しています。

ビジネスセンスを醸成し情報から知恵を生む

こうした手法で企業を支援する際に必須なのが、ビジネスセンスです。これが高い人に共通するのは、情報感度が高く、圧倒的な情報量を持っていること。そしてつかんだ情報をベースに、自分でシミュレーションしたり、考えたりすることで、情報を生きた知識に転換させる力に秀でていることです。この生きた知識こそが、知恵を生み出す源になるのです。

では、情報から知識を蓄え、それを知恵へと昇華させる高いビジネスセンスを身に付けるにはどうすればいいのでしょう。一例として、f-Bizのスタッフが実際に行っているコンビニをテーマにしたビジネスセンスの磨き方を紹介します。

今では、コンビニのヒット商品は国内の市場を制するとまでいわれ、店舗にはいち早く新商品が並び、一週間のうちに何度か入れ替わることもしばしば。そこでf-Bizスタッフはコンビニに行き、店内をひと回りして目に付いた商品をピックアップし、まず誰が買うのかなどをシミュレーションします。次に、その商品のプレスリリースをチェック。そこには、商品開発の経緯やターゲットなど、あらゆる情報が書かれており、自らの想定と比較しながら、新たな商品を発売するまでの考え方をつかむことができます。結果的にその商品がヒットすれば、魅力ある商品を生み出す一つの法則を学べたことになります。世の中にあふれるモノや情報に対して常にアンテナを張り、分析する。ビジネスパーソンにとっては当たり前のことかもしれませんが、これをきちんと実行することが重要なのです。

日本人は失敗を恐れるがゆえに、うまくいかなかった事例の分析をしがちですが、成功事例を研究した方が、実になる情報が得られます。前述したトレーニングでは、職場の上司や同僚も巻き込みながら、「誰が買うのか」「どこが面白いのか」といった議論をし合う関係をつくっておくことも効果的。こうしたやりとりを日常的に行うことで、感性が柔らかくなり、さまざまな目線や意識がつくり出されます。つまり、常識にとらわれないビジネスセンスが磨かれ、客観的に物事を見る感覚が醸成されるのです。そして改めて自分たちの商品やサービスを見直してみると、今まで考えもしなかった新たな魅力に気付けるかもしれません。

  • 画像: 知恵を生み出すフロー
  • 画像: ビジネスセンスを醸成する f-Biz流トレーニング

"もったいない"から生まれるブレークスルー

画像: f-Bizミーティング 課題解決のヒントは、依頼主からの情報の中にあることが多い。そのためf-Bizでは、特に依頼主からのヒアリングを丁寧に行っている。全国20カ所にあるf-Bizを除くご当地Bizの各センター長も、小出さんの下でf-Biz流の方法を学んだ後に、各地での企業支援に当たっている

企業の再生は経営者や従業員がチャレンジャーに生まれ変わることで、初めて成し遂げられるものだと考えています。そこで、知恵と同じくもう一つ重要になるのが、モチベーションです。知恵を使っていくら良いアイデアを生み出したとしても、それを実行に移す高いモチベーションがなければ、再生はできません。

そこでのポイントは、否定しないこと。生まれ変わろうとしている人に対して問題点を指摘する際には、9割程度褒めた上で、「もったいないね。こうすればもっと良くなるのに」と、ひと言添えるのです。そのひと言から可能性を感じ、自ら知恵を絞ろうと前向きになる。"もったいない"から、結果的にブレークスルーが生まれるのです。

私たちの取り組みは、企業支援に限らず、さまざまなビジネスの場でも生かせるものだと思います。f-Biz開設から10年で、全国20カ所に同様の施設が次々と誕生したことが、それを示しているのではないでしょうか。

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