カテゴリーを選択
トップ > 特集 平成時代のマーケティングから次世代のヒントを探る > P2
急速に情報化が進み、消費者ニーズが多様化。平成が幕を閉じようとしている今、有識者に話を聞き、ヒット商品とITの目線で平成を振り返り、次世代につなぐヒントを探る。
また、平成時代のヒットの傾向として「モノからコト=体験」へ消費マインドの転換も挙げられます。2010年前後から団塊ジュニア世代とそのファミリーが、コト消費の市場をけん引。その一例が『アバター』(09年)など、「3D映画」のヒットです。3D映画ではありませんが、ディズニー映画『アナと雪の女王』(13年)は、映画を見た親子が劇中歌を歌いYouTubeに動画をアップすることが流行し、関連商品の売り上げにも拍車を掛けました。デジタルとリアルが融合し、家族で体験を共有したいという消費者の心を動かしたのです。
コト消費が注目される一方で、日本のお家芸であるものづくりも廃れることはないでしょう。1997年にトヨタは初代「プリウス」を発売。リニューアルのたびにヒットしています。エコ志向に助けられた感もありますが、最先端のテクノロジーを生み出すトヨタのものづくりへの心意気と同時に、日本の消費者らしい"ものづくりを敬う思想"が息づいているのを感じます。
同様に、デジタル化が進む中で、今後は日本の伝統的なものづくりが見直されるなど、アナログ回帰もより顕著になっていくでしょう。もちろん、モノやコト、サービスの全ての売買がスマートフォン一つで行われる今、デジタル社会が逆戻りすることは考えにくいもの。しかし、今後はモノやサービスの消費で満たされない"消費者の心をいかに豊かにするか"が、マーケティングの重要な軸になるはずです。断捨離によって本当に自分に必要なもの、ひいては幸せとは何かを突き詰める消費者によって「メルカリ」が躍進したように、アナログ的な志向をデジタルが支える。そんな場面がより増えるのではないでしょうか。