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平成時代のマーケティングから次世代のヒントを探る

急速に情報化が進み、消費者ニーズが多様化。平成が幕を閉じようとしている今、有識者に話を聞き、ヒット商品とITの目線で平成を振り返り、次世代につなぐヒントを探る。

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  • 2019.03.01

平成時代のマーケティングから次世代のヒントを探る

消費マインドの転換とアナログ志向が続伸

また、平成時代のヒットの傾向として「モノからコト=体験」へ消費マインドの転換も挙げられます。2010年前後から団塊ジュニア世代とそのファミリーが、コト消費の市場をけん引。その一例が『アバター』(09年)など、「3D映画」のヒットです。3D映画ではありませんが、ディズニー映画『アナと雪の女王』(13年)は、映画を見た親子が劇中歌を歌いYouTubeに動画をアップすることが流行し、関連商品の売り上げにも拍車を掛けました。デジタルとリアルが融合し、家族で体験を共有したいという消費者の心を動かしたのです。

コト消費が注目される一方で、日本のお家芸であるものづくりも廃れることはないでしょう。1997年にトヨタは初代「プリウス」を発売。リニューアルのたびにヒットしています。エコ志向に助けられた感もありますが、最先端のテクノロジーを生み出すトヨタのものづくりへの心意気と同時に、日本の消費者らしい"ものづくりを敬う思想"が息づいているのを感じます。

同様に、デジタル化が進む中で、今後は日本の伝統的なものづくりが見直されるなど、アナログ回帰もより顕著になっていくでしょう。もちろん、モノやコト、サービスの全ての売買がスマートフォン一つで行われる今、デジタル社会が逆戻りすることは考えにくいもの。しかし、今後はモノやサービスの消費で満たされない"消費者の心をいかに豊かにするか"が、マーケティングの重要な軸になるはずです。断捨離によって本当に自分に必要なもの、ひいては幸せとは何かを突き詰める消費者によって「メルカリ」が躍進したように、アナログ的な志向をデジタルが支える。そんな場面がより増えるのではないでしょうか。

  • 写真:制作現場からデジタル化を波及させる

    制作現場からデジタル化を波及させる

    1950年代に第一次ブームが訪れた3D映画だが、制作現場のデジタル化が加速し、2010年ころから制作本数も増えた。映画館側も3D映画上映のため、今までのアナログシステムからデジタルへと転換した
  • 写真:消費者のエコ志向をサポートしたハイブリッドカー

    消費者のエコ志向をサポートしたハイブリッドカー

    初代「プリウス」の発売は1997年。2000年に米国への輸出をスタートし、ハリウッドスターが自家用車として乗るなど、注目を集めた。最新型はPHV(ブラグインハイブリッド)も登場。車とオーナーをIoTでつなぎ、新たなドライブ体験を演出してくれる
渡辺 和博(わたなべ かずひろ)
日経BP社 サステナブル経営ラボ 上席研究員
日本経済新聞社に入社後、『日経パソコン』『日経ビジネス』などIT、経営、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職に。
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