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トップ > 世界遺産を旅する [Vol.11] 流氷がもたらした希少な自然。 冬の知床を巡る
写真:アフロ
知床半島周辺の流氷は、半島でせき止められることで、他地域よりも密度が高いという
北海道北東部、日本最北端の世界自然遺産である「知床」は、オホーツク海に突き出た知床半島を中心としたエリアに広がる。その構成資産には陸域だけではなく海域も含まれ、国内に4件ある自然遺産の中では、最大の面積を誇る。世界自然遺産に登録された理由は、生物の多様性と独特な生態系。それを支えているのが、冬場にロシアのアムール川からの海流と北西の風に運ばれて、知床の海にたどり着く流氷だ。
流氷には豊かな栄養素が含まれており、春になると海中に溶け出した栄養と光で植物プランクトンが増え、動物プランクトンの餌になる。これがサケやマスをはじめとする魚介類の栄養となり、さらにはそれをアザラシなどの海獣やオジロワシといった鳥類、ヒグマのような森の動物たちの命を支え……。海、山、川と広がる、世界でも希少な食物連鎖が、流氷によって生まれているのである。
例年、1月下旬に到来する流氷の見頃は、2月中旬から3月上旬にかけて。海を覆う真っ白な大氷原は、眺めるだけでも旅する価値があるものだが、実はその上を歩くツアーも用意されている。万が一、落ちた場合でもぷかりと海に浮くドライスーツなど、万全の装備をまとっていても、最初の一歩を踏み出すには少々の勇気が必要かもしれない。しかしながら歩き出せばいつしか心ははしゃぎ、飛んだり、寝転んだりと、流氷上での冒険を思い切り楽しんでいるはずだ。
アザラシやトドなどを間近に見るなら、観光船を利用したい。どこか愛嬌を感じさせる表情とのんびりした様子から目が離せなくなる。スノーシューを履いて原生林を歩くのも、冬ならではの楽しみの一つだ。枝に雪をまとった美しい木々の陰、シカや国内では北海道にしか生息していない希少動物のエゾクロテンなどが視界をよぎれば、忘れられない記憶として胸に刻まれることだろう。
海、そして山での冒険を堪能した後、天気に恵まれた日なら流氷が紅に染まるドラマチックな夕景や、満天の星空も見逃せない。一帯には温泉宿も多く、冷え切った体をゆっくり温めるのもまた、至福の時間だ。ひと休みしてからの食事には、魚介類のごちそうが待つ。中でも冬を感じる美味が、サケを生の状態で凍らせ薄切りにして食べる郷土料理、ルイベだ。シャーベット状のサクッとした食感の身が口の中でとろりと溶けた瞬間、ふくらむ甘味に舌鼓を打ちたい。
毎週日曜午後6時よりTBS系列にて放送中の「世界遺産」。最高水準の映像技術によって世界遺産を記録し、未来に引き継いでいくことを目指しています。キヤノンはその理念に共感し、映像制作機器「CINEMA EOS SYSTEM」をはじめとした機材協力も行っています。時には最新の4K/8Kカメラで撮影した映像をお届けする回も。最高の映像でお届けする「世界遺産」をぜひご覧ください。www.tbs.co.jp/heritage/
●4K/8K特別編「知床」2021年1月10日放送予定