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トップ > 世界遺産を旅する [Vol.12] 奇岩が天を突く聖地 中国・貴州の梵浄山
写真:iStock
見晴らし台からの眺め。奥にそびえるのが、頂上に寺院がある紅雲金頂
2021年1月現在、世界遺産条約には194の国が締約しており、世界遺産の登録総数は1121件に及ぶ。中でも中国とイタリアが各55件と最も多くを数え、自然遺産に関しては、中国が14件とトップを走る。その一つが中国南西部の貴州省に位置し、2018年に登録された複数の峰々が連なる「梵浄山(ぼんじょうさん)」だ。
絶滅危惧種のコビトジャコウジカやキンシコウ(ゴールデンモンキー)といった希少な動物が生息するのに加え、「山一つに四季を持つ」といわれている複雑な気候により、ここには4000種以上の多彩な植物が見られるという。中国五大仏教名山の一つでもあり、梵浄山の名は「梵天浄土」に由来。かつて弥勒菩薩(みろくぼさつ)が修行したという言い伝えが残るほど、中国の人々にとっては聖地としても知られる。
山の麓からはロープウエーで2100mまで移動し、その後に絶景が望める見晴らし台まで約1000段の石段を登る。天気は変わりやすく、霧の中を進むこともあるが、実はその方が晴天時よりも感動が深まる可能性が高い。というのもいつしか雲の上に出て、澄み切った眺めの先に壮麗な景色が広がる瞬間が待っているから。美しい雲海を前にすれば思わず笑顔になり、足取りも軽やかになることだろう。
たどり着いた見晴らし台からの、岩山と緑が織りなす風景もまた、息をのむほどに素晴らしい。かつて一帯は海の底にあり、それが地殻変動により大地が隆起した際に岩が削られたため、石が幾重にも層を成した奇岩が多く見られるとの知識を得ても、不思議な力で守られてきたかのような神秘を感じるはずだ。
体力に自信があれば、そこからさらに梵浄山山頂の一つ「紅雲金頂」へと歩みを進めたい。標高2335メートルまで続く石段を行くのは正直なところなかなかの苦行だが、二つに分かれた山頂には、それぞれ寺院がある。登り終えた後に達成感とともにこみあげるのは、まるで天空の世界にいるような感慨。寺院の間に渡された細い橋を歩くひとときも、夢のように思える。
旅の拠点となる銅仁の町での楽しみは、酸味とたっぷりの唐辛子を使う辛味が特徴的な、「酸辣(サンラー)」と表される貴州料理の数々。中でも挑戦したいのが、独特の風味ながら次第にくせになるドクダミの根だ。特産品であるきりっとした茅台酒(マオタイしゅ)を合わせ、ほろ酔いで梵浄山で体験した幻想的な景色を振り返りたい。
※新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航・外出制限等、事前に最新情報をご確認ください。
毎週日曜午後6時よりTBS系列にて放送中の「世界遺産」。最高水準の映像技術によって世界遺産を記録し、未来に引き継いでいくことを目指しています。キヤノンはその理念に共感し、映像制作機器「CINEMA EOS SYSTEM」をはじめとした機材協力も行っています。時には最新の4K/8Kカメラで撮影した映像をお届けする回も。最高の映像でお届けする「世界遺産」をぜひご覧ください。www.tbs.co.jp/heritage/