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トップ > imaging S 表現者として、選手が輝く瞬間を追い求める 写真家 髙須力さん
© Tsutomu Takasu
学生時代に憧れていたのは、スポーツのノンフィクションライターだったと振り返る髙須 力さん。
「写真はあくまで趣味でした。ただ、ライターを目指して出版社に就職したものの、日々の業務に忙殺され、気付けば、生でその魅力を感じ表現したかったはずの、2002年冬季の世界的なスポーツ大会が終わっていた。それをきっかけに、自分はスポーツの現場に立ち会う仕事がしたかったのだと思い直し、写真家になる決意をしました」
その後、とにかく現場でスポーツ撮影を覚えようと、フォトエージェンシーで働きながら写真を撮り続け、被写体とする競技も増やしていった。転機は3年ほどたったころ。フィギュアスケート選手を撮影した作品が、著名なスポーツ誌に掲載されたことだった。
「出版社に約1年、写真を送り続けていました。なかなか採用されず心が折れかけましたが、『焦るな、腐るな、諦めるな』という、昔お世話になった方の言葉を思い出し、奮起すると結果が出た。選手が最高に"カッコイイ"と思う瞬間を撮る。この方向性が見えたのも、諦めなかったこの1年の賜(たまもの)です」
そんな"カッコイイ"と思う写真を撮り続けるには、「常に表現者として挑戦することが大切」だと語る髙須さん。
「そのためには初心を忘れず、新鮮な気持ちで競技と選手に向き合い、新たな表現を追求すること。さまざまな競技を撮っているのも、それが理由です」
1枚目の陸上ホッケーの写真は、水しぶきが上がった瞬間を、選手の躍動感と共に捉えた一枚だ。
「ホッケーは選手が下を向きがちなので、地面に腹ばいになって撮影しました。ちょうど横から夕日が差し込み、水しぶきを狙い通りに写せました」
数あるスポーツの中で、撮り続けているのがセパタクロー。2枚目の作品は、タイのプロリーグに所属していた寺島武志選手の練習風景を収めたもの。
「普段は400mmのレンズで遠くから撮影しますが、密着取材だったので40mmの単焦点レンズを使い、思い切ってコートサイドに寄って撮りました。ファインダーいっぱいに至近距離の被写体が入るのは、自分にとって初めての画角で、新鮮な驚きを覚えました」
3枚目の作品は、ボールを中心にシンメトリーな構成で、卓球選手のフォームのカッコよさを追求した。
「シャッタースピードをあえて遅くし、違和感のないブレを入れました。ピントが合っていなくても、ハッキリ見せ過ぎないことで、場の空気感が伝わり、観る人に考える余地も与えられる。この表現は僕にとって挑戦でした。今後もアスリートと同様、写真家として新たな表現に挑み続けていきたいですね」
髙須力(たかす つとむ)
1978年、東京都生まれ。2002年より独学で写真を始め、06年からフリーランスに。サッカーを中心にさまざまな競技を国内外で撮影。FIFAワールドカップは2006ドイツ大会から4大会連続取材中。ライフワークとして、セパタクロー日本代表を追いかけている。日本スポーツ写真協会会員。日本スポーツプレス協会会員。